Die HACHIOUJI Stadtmusikanten
「今度は一体誰だってんでえ!」
ひょこっりと顔を出したのは萱色のハムスターだった。
「わしは羊羹という爺ハムスターじゃ、しかし厄介な事になったのう、蛇の奴はみんな執念深くて一度見つけた奴には何度もかかってくるという性質が悪い相手じゃ。この巣穴ももう諦めた方が良いかもしれん」
「勝手な事を言わないでおくれでないかい、せっかくあっしが初めて作った巣穴だってのに」
「しかしもう奴の鼻にはお前さんとわしの匂いが刻み込まれた事じゃろう。のう若いの、気持ちはわかるが時には大胆に捨てるという覚悟も必要なのじゃよ」
「羊羹爺さんはあの蛇とかいう奴に詳しいってのかい?」
「まあ詳しいと言うほどでもないが、両手では数えきれんほどに食われそうになったのう。奴は小さな獲物は丸のみに、大きな獲物は身体を巻き付けて絞め殺すって寸法じゃよ。くわばらくわばら、目を付けられたら逃げの一手しかないのじゃ」
「よそ事だと思って・・・しかし羊羹爺さんの言う事はもっともさねえ、こいつはお天道様が沈んだら早速にでも新しい土地を目指さないとあっしも奴に絞め殺されちまうか・・・」
弥太郎は沈痛な面持ちで覚悟を決めたのだった。
「ああ、蛇の奴に肝を冷やしてあっしは名乗りもしなかった、堪忍しておくんなせえ。あっしは弥太郎ってケチなウサギ野郎でさ。元は人と暮らしておりやしたが、愛想をつかされて捨てられるってえ話しになったんで飛び出してきてやったんでさあ」
「弥太郎かい、わしはさっき言ったが羊羹というハムスターの爺じゃ、こうして同じ蛇に狙われたのも何かの縁、一緒に逃げるのはどうじゃ?わしは少しならこの辺りの事も知っておるし、悪い話ではなかろう」
「まああっしが何も知らねえってのはその通り、どうか良しなにしておくんなせえ」