「貴様、覚えてろよ〜〜!!」という捨て台詞に感じる、個人的な違和感
皆様は「お前」という呼び方について、どう思われるだろうか?
自分は親しい間柄だったり、目上・年上の人にそう呼ばれるのは気にしないが、見ず知らずの人にいきなり言われたりするのはちょっと不快だ。ネット上ではたまにある。
人によっては、相手が誰だろうが「お前」と呼ばれるのは嫌な方もいるだろう。
ちなみに、自分を「お前」と呼ぶ人と聞いて真っ先に思い出したのは父親だ。
もっとも、父の場合は「お前」ではなく「オメー」なのだが。
さて、この「お前」という呼び方だが、自分は以前から疑問に思うことがある。
「お前」を漢字で書くと「御前」になる。
これ、相手をめっちゃ敬ってません?
なんたって「殿の御前」と同じ漢字なのだ。
そして、同じように漢字自体はものすごく敬ってるのに、使う時は罵ったり吐き捨てたりする言葉がある。
「貴様」だ。
こちらはもっとすごい、貴殿の「貴」に、~~様の「様」だ。
最上級の敬意ではないだろうか?
そしてそもそも、「貴様」という呼び方は漫画などで時折使われるものの、現実世界では実際、ほとんど使われない。
SSR級、いやそれ以上に貴重?な言葉なのだ。
考えてみてほしい、皆様は誰かに面と向かって「貴様」と呼ばれたことはあるだろうか?
逆に誰かに、「キッサマ〜〜!!」と憤ったことはあるだろうか?
自分は恐らくないし、オメー呼ばわりしてくる父にも「キサマ!」と呼ばれたことはない。
つまり、「お前」よりも遥かにレアな「貴様」呼ばわれりされたらそれは、むしろかなりの神引き、幸運なのだ。
いや、呼ばれたくはないが……。
このように、よくよく字を見てみると気高さすらある「お前」「貴様」、調べてみるとやはり、元々は敬意を持って使われていた言葉らしい。今とは真逆だ。
そりゃそうだ、貴様なんて「あなたさま」と言ってるようなものなのだから。
それが次第に敬意が薄れ、現在のような使い方をされるようになったのは明治以降のことだとか。
詳しくはこちらにて。
https://gogen-yurai.jp/omae/
全く別件なのだが、「テンション」という言葉の使われ方も自分は疑問を感じる。
テンションとは本来は「緊張感」の意味のはずだ。
だが、「テンション上げていこう!」のように、昨今では気持ちを盛り上げる的な意味で使われている。
それらにいちいちツッコミはしないが、このように本来の意味とは違った使われ方になっている言葉は、案外多いのかも。
それでは最後に、「お前」や「貴様」が元々は敬意を持っていた事実を踏まえ、タイトルに書いた「貴様、覚えてろよ〜〜!!」について。
ひと昔前の悪役が吐きそうなセリフだが、これに自分が感じる違和感をご説明したい。
もはや「貴様」が「あなたさま」と言ってるように聞こえる自分にとっては、まず「貴様!」と呼ぶ時点で、相手を敬っているように感じてしまう(あくまで個人的な見解です)のだが、さらに大事なのは次だ。
なんとわざわざ「覚えてろよ!!」と、自身への警戒を怠らないよう相手に念を押しているのだ。
(あくまで個人的な見解です)
自分だったら、相手にはなるべく自分のことを覚えていてほしくない。
あなたには敵いません、もう二度と歯向かいません、みたいなフリをして油断させ、しかしこっそり特訓に燃え、相手を確実に滅殺できる力がついてからリベンジマッチに挑むだろう。
その方が勝てる確率が高いからだ。
それをあえて、相手に自身のことを忘れないよう念を押したら、向こうに警戒や対策をされてしまうではないか。なんと親切な。
というか、正々堂々と戦おうとしているのなら、むしろ立派だ。
しかしながらこの捨て台詞、先に書いたように昨今ではほとんど聞かれないのは、相手に覚えていられると勝率が下がることに、悪役達も気づいたのかもしれない。
......。
いや、あくまで個人的な見解なので、あしからず。
「お前」、「貴様」。
昔は偉い人に対して「貴様」と呼んでいたのかと思うと、ちょっとクスッときたり。
今の時代では呼ばれていい気分はしないことも多いが、元々の使われ方などを知ると、何か別の味わいを感じられる……かもしれない。