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3 テリアかはたまた魔獣か

あ・・・・甘い。


無意識に口に寄せられた乳を吸い上げる。

ママン!まだ母乳出たのね?危うく天国に飛んでいってしまうところだったから助かった。

持つべきものはお母さんだね!あはは、それにしても暖かいなぁ・・・。

しかも心なしか抱き上げてくれている腕がモフモフしてる気がする。


そんなに毛深かったかしらお母さん・・・。

む、しかもちょっと獣臭い気がしてきた。

おや?もしかしなくても私に乳を与えているのは母ではない?

母乳をたっぷり飲んだ私は満足気に「げふぃ」と一息つくと命の恩人であろう目の前の人を見上げた。


そしてそこには母ではなく犬のようなモノがいた。


「・・・・」


「わふっ」


「・・・・・・」


見ようによってはテリア系の犬に見えない事もない。

何なら歩く宝石と言われる長い艶やかな毛が特徴のあの有名な小型犬に見えなくもない。

ただ、決定的に違うものが一つだけある。


大きいにも程がある。


と心の中で盛大に突っ込みを入れたところで冷静に犬(?)を観察する。

大きい。鼻なんて私の拳くらいある。


おっと、もしやこれはもしかしなくてもぺろっと食べられてしまう感じだろうか?

そして赤子特有の体に見合わない重い頭を渾身の力でぐっと動かし部屋の隅を見る。

おお!マイペアレンツが真っ青な顔で抱き合い震えているではないか!


うーむ。

これはやっぱり目の前の犬もどきは魔獣の線が濃くなってきた。


ダメ元で話しかけてみる。


「あぶぶあぶうああ?(あなたはだあれ?)」


気分はもふもふの知的生命体を前にしたツインテールで好奇心旺盛なパンツ丸見えの少女である。


『私はピツハよ』


おっと返事が返ってきた、しかも脳内に直接話しかけれているような不思議な感覚がする。


「あっぼんぶぶあぶあぶ?(何で思っている事が分かるの?)」


『それはあなたが言葉に魔力を乗せているからよ、知らずにやっていたの?』


「ああ、ああぶううううあぶううあうぶ?(うん、魔力って魔法のこと?この世界には魔法があるの?)」


『そうよ、あなたが乳をくれって懇願してきたから急いで来たのよ、でも驚いたわ・・・こんな幼い赤子が魔力を飛ばせるなんて・・・しかも魔獣の言語を翻訳する魔法陣まで構築するなんて・・・』


そんなモフモフの彼女の話を要約するとこうだ。


狩りの途中で大型の魔獣に出くわし、満身創痍になりながらも何とか巣に逃げ帰ってきたら血の匂いを辿って来た他の魔獣に襲われたのだが、その魔獣以外にも番がそばにいたらしく気がついたら巣に残してきた子供達はその番に美味しくいただかれてしまっていたそうだ。


命からがら神が住まうとされるミランの森に逃げ込み、癒しの効果がある湖で傷を癒していたら私の飢える声が強く頭に響いてきたらしい。


『本当に驚いたのよ?子供達が食べられてしまって落ち込んでいたところに「ママ!お腹すいた!」だもの』


そう言うと、ボリュームたっぷりの肉球で私の頭を撫でるピツハ。


(うむ、なかなか素晴らしいぷにぷですな・・・)


そんなわけで子供を亡くし悲しみに暮れていた時に私の声が聞こえ、どんな事をしても助けなければと思い飛んできたのだと彼女は言った。


(お腹すいて必死だったからね、助けてくれてありがとう)


本当に通じるか今度は声を出さずに心の中で話しかけてみる。


『いいのよ・・・どうせ乳をあげなくてはならない子達はもう居ないもの・・・・』


ピツハはうなだれるように顔を床につけた。


(あの・・・差し支えなかったら母乳が出なくなるまで飲ませに来てくれないかな・・・)


図々しい申し出だとは思ったが、命には変えられない。

それに彼女の寂しさや傷が少しは癒えるかもしれないとも思ったのだ。


『何を言っているの?テルア族は自分より力の強い者に付き従うのがしきたりだもの、魔力量が桁違いの貴方に逆らえるはず無いじゃない』


(ん?そんなに魔力あるの私)


『そうね、まだ貴方は赤ちゃんだからそこまでではないけれど、この付近では敵なしってところかしら』


(そうなの?でも全く何もできないよ、指から火とかも出せないし・・・)


『それは訓練次第じゃないかしら?私の方法でよければ教えるけど、雷と風属性しか無いから参考になるかしら・・・』


(何もしないよりはマシだと思うの・・・)


それに今は栄養を取って自活出来るまで無事に生き残る事が先決である。

こうして私はピツハと名乗る大きな犬に助けてもらいながら何とか餓死は免れたのであった。

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