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19 森の中の野営小屋

「チサ様は魔術師様でしたか」


ようやく固まっていた商人夫婦が復活したので一緒に野営をする事になった。

ピツハを飛ばせば次の街まではすぐだったけど、情報収集もかねて色々と教えてもらうチャンスだと思ったんだよね。


なんせ転生してから国外に出たこと無かったから、ここで他国の常識を学んでおいて損はないと思う。ちなみに彼らによるとこの国はラマダと言ってこれから向かう国境の先がサンズブルグという国になる。


「えっと、魔法は少し使えますけど本職は冒険者ですよ?」


「す、少し?」


「ラマダではそれが常識なのでしょうか・・・?」


「いや、普通じゃねえから!」


夫婦の戸惑いにビックスさんが突っ込みを入れる。


「本当に凄いわよね、私は癒しの魔法が少し使えるくらいだもの、しかも完治出来るのは擦り傷程度よ」


「いやいや、サラさん!擦り傷でも使えるだけ凄いですよ!私はその手の魔法は得意じゃないから結局回復薬に頼りっきりですもん」


「あれだけ凄い魔法が使えるのに苦手なんて不思議ね」


治癒魔法が苦手なのは嘘じゃない。

ギルドの訓練が思いのほか直ぐに終わってしまった私は、剣術指南のおじいちゃんやピツハに疲労軽減と称して回復魔法をかけまくっていたら、治癒魔法のレベルがカンストしてしまったらしく効果の薄い初級魔法でも体をリセットしてしまうくらいの威力になってしまったのである。


なんならちょっとした老化や病気にも効果があるので寝たきりレベルのご老人がバンジージャンプし始める・・・といえば分かりやすいだろうか。実際、杖をついていたおじいちゃんも途端に元気になり、体が軽いとバク転して遊んでいたかと思ったら、最終的にはムキムキになっていた。つまり治りすぎてしまうのである。


ちなみに上級治癒魔法の効果は試した事が無いのでわからないが、クレスさんの予想では瀕死で虫の息でも完治するのでは?との事だった。まさかねと笑い飛ばせないのがつらい。


「じゃあ森の入口付近で野営の準備をしようか」


「そうだな、獲物もとりやすいし比較的安全だしな」


クラウスさんとビックスさんはそう言って馬車を誘導した後、一行は森の少し開けた所で留めた。


「しかし、困りましたね」


焚き火を始めてしばらくすると、アルマノールさんがおもむろに眉を寄せる。


「どうしたんですか?」


「いえ、今までは馬車の中で眠っていたもので・・・天幕が足りないなと思いまして」


「そうだった、盗賊を外に転がしとく訳にもいかないしどうしたもんか・・・」


「そうですね・・・」


そうなのだ。先ほどの盗賊20名プラス10名で計30名が荷馬車にぎゅうぎゅう詰になっている為、商人家族が眠る場所が無い。護衛のクラウスさん達は別に天幕を持っているから良いのだが、馬車の中は商品をあらかた売った帰りだったので盗賊を詰め込む事は出来たが今度は商人家族の寝床がなくなってしまったというわけだ。


う~ん、ここで秘密基地を取り出しても良いんだけど、無制限とも言える収納を見せるのは少し危険な気がする。ただ、アルマノールさん達って商人の割には良い人そうに見えるし信用出来る気がした。


田舎者で色々知りたいと言ったら命の恩人とは言え、見ず知らずの私が生活に慣れるまで色々と面倒を見てくれるとまで言ってくれた。ギルドには時空間魔法を使える人は多少居るし・・・何とか出来なくはないけど・・・。


そうだ!大きな容量の収納を見せずに安全な野営が出来れば良いんだ。

そう思い立った私は皆が座っている場所から3メートルくらい先にスタスタと歩くと魔法陣を展開した。


空間魔法で目の前の土をごっぞり少し離れた山奥に転移させると、かなり大きな穴が出来た。

そこに土魔法を使って植物で地下に柱や壁を作り補強してゆく。

にょきにょきと生えた蔦は自らをねじりながら頑丈な梁を形成して最後には見事な丸い地下室が出来上がった。そのまま蔦でイスやテーブルも造り、ベッドを3つ作る。


次に蔦を伸ばして地上までの階段を造る。そのまま地下室に封をするように蔦を細かい網目状にして床を作り、森の比較的大きな木を時空魔法で切り取ると、それを穴の周りに深く差し込んでゆく。ぱっと見は木が円状に並んでいるように見える。


木には枝や葉がついたままなので一見、天井があるように見えるけれど雨などが降ったらさすがに中が濡れてしまうので、木の幹との間にも蔦を這わせて隙間なく編んでゆく。

完全に密封すると光が入らないので木の幹の所々を空間魔法で切り抜き小窓を作った。

入口も蔦で扉を造り、きちんと開閉するようにした。


始めてやったけど結構いいのが出来たな。

というか、土魔法が万能すぎてもっと早く知りたかった。


秘密基地を苦労して作っていた頃とは段違いの速さで出来上がった野営小屋は外から見ると大木で出来た家そのもので、毛深い大きな知的生命体が住んでいると言われてもおかしくない造りだった。

最後に地上部分の部屋にベッドを4つ作ると、地下と同じようにテーブルとイスを作り出す。


これで大容量の収納を見せずに済むと満足げに息を吐き、後ろを振り向くと顎が外れんばかりに口を開けたクラウスさん達が居た。


あ、あれ?収納見せてないよね?普通に使ったのは土魔法と多少の空間魔法だけだよね?

何かまずかったかな?


そう、世間知らずな私は分かっていなかった。

普通の土魔法は精々攻撃や拘束で使えるくらいで、それも術者の魔力量によって出来る事が決まる。

間違っても大木を何本も土にぶっ刺したり、大量の植物を同時に使役して小屋を作る事など普通の魔力量では出来ないという事を。


それ以前に大量の土を時空間魔法で転移させている時点でその容量の大きさがバレバレなのにも気がつかなかったのである。





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