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18 商人一家

クラウスさんが護衛をしていた人達はこの先の街にある大きな商会の当主とその家族らしい。

私達が彼らに近づくと、商人の奥さんは真っ青な顔で馬車でもたれかかっていてその子供は漏らしてしまったのか濡れたズボンを掴み泣いている。


「アルマノールさん、もう大丈夫です。こちらのチサさんが盗賊を捕らえてくれました」


クラウスさんがそう言うと、アルマノールさんと呼ばれたオジさんは、突然バッと立ち上がり私の両手を掴んで頭を押し付けてきた。


「貴方は命の恩人です!何と何とお礼を言えば良いか・・・貴方が通りかからなければ妻も子供も無事では済まなかったでしょう!本当に本当にありがとうございます!」


「いえ、護衛の方があなた方を守ってくださっていたから楽に拘束できたんです。お礼ならクラウスさん達に言ってください」


「何と謙虚な!そうですな!クラウス君達にも感謝を!!」


「いやあ・・・俺たちは歯が立た・・・ぐあっ」


「(余計な事言わないの!)いえ、殆どはチサさんのお手柄ですわ」


なにやらビックスさんがサラさんに小突かれているが、感激したアルマノールさんの意識がクラウスさんに向いたところで、私はそっと彼の奥さんと息子さんの様子を見に荷馬車に向かう事にした。


「ぐすっ、うっ・・・」


「ボク?大丈夫?」


「う~!大丈夫じゃない!!!」


小さな少年はガラス玉のような綺麗な目にいっぱいの涙を貯めて噛み付いてきた。


「アンディ・・・お姉さんに失礼でしょう?」


そう言って彼を諌めるお母さん。


「あの・・・奥様?これをどうぞ」


私はバッグから心を穏やかにする効果のある回復薬を取り出すと、彼のお母さんに差し出した。

秘密基地で薬草師の真似事をしていたからこの程度の薬はいつも何瓶か持ち歩くようにしていたんだよね。役に立って良かった。


「これは?」


「回復薬です、心を落ち着ける効果もあるので良かったら使ってください。それとちょっと失礼します」


私は奥様の腕を取るとその裾をまくる。

予想していた通り、腕には先ほど盗賊に掴まれたであろう場所にクッキリと青あざが出来ている。


「このくらいのアザでしたら大丈夫です。これを飲めば痕も残らないでしょう」


「貴方医術の心得があるの?」


「いいえ奥様、少し薬草に詳しいだけです。一応毒見しますね」


そう言って私は彼女に渡した回復薬を手に取り、一口だけ飲んで見せる。


「命の恩人に毒見なんかさせてしまってごめんなさい」


「いえ、お気になさらず。さあ奥様、遠慮せずにどうぞ」


私がそう促すと、奥様は一気に薬を飲み干した。するとすぐに青白かった顔色に赤味がさしてくる。


「さて、次は坊ちゃんですね」


「ぼ、ぼくは坊ちゃんじゃない!アンディだ!」


「ふふ、それは失礼しました小さな紳士様」


小さな美少年が目に涙を溜めながらめいっぱい虚勢を張っているのが可愛くて思わずにやけてしまう。


「わ、笑うな!」


「ふふふ、ごめんなさい。じゃあちょっとこちらに来てくれますか?」


私は奥様の目の届くギリギリの場所まで彼を連れて移動すると、紐を通して縫ってある大きめの布を取り出す。見た目だけだとウエストがゴムのロングスカートなんだけど、これは前世の記憶から再現したもので、学校の水泳の授業の時に周りから見られないように着替える為のあのタオルだ。


私はそれをすっぽり少年に被せると、中で服を脱ぐように言う。

漏らした服が気持ち悪かったのか、彼は素直に服を脱いで渡してきた。

野宿になりそうだから一応持ってきてたんだけど、役に立って良かったな~。


私は渡された服を持って馬車から少し離れた場所に水魔法を展開する。

空中に大きな水の玉がふよふよと漂ったのを見て、私は服をポイッとその中に投げ入れた。

そして洗濯機の要領で服を洗ってゆく。水魔法には少しだけど浄化の効果もあるから簡単な汚れなら一発で落ちる。


今度はある程度洗い終わったそれを火魔法と風魔法を同時展開して融合し、温風を作り出す。

すると少年の服は5分も立たないうちに乾いてしまった。

うんうん、やっぱり基礎を習ってると違うなー。初めて融合展開してみたけど、思ったより簡単に出来た。ほかほかに乾いた洋服に満足しながら私が後ろを振り返ると、なぜか皆が口をあんぐりと開けて固まっている。


「す、すごい!」


「なんなの、あの魔法・・・見たことないんだけど!」


「ああ・・・魔法が同時展開してたように見えたんだが、き、気のせいだよな?」


かろうじて動き出したクラウス達だったが、その後ろでは未だに固まっている商人夫妻。

あれ?まずかったかな?ははは・・・・これギルマスに怒られるヤツ・・・かもしれない。






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