16 盗賊さんいらっしゃい
「げへへ、荷物を渡して貰おうか?抵抗しなけりゃ優しくしてやるからよ~」
「でもお頭、女が嫌がって泣くのがいいんじゃないですか!」
「がはは!お前はそうやってすぐ壊しちまうだろうが!」
「まあそんなわけで別の意味でヒーヒー言わせてやるからよ?大人しく武器下ろせや」
そう言って下品に笑う髭面の男達。お察しのとおり彼らは盗賊である。
そして少女一人と魔獣一匹といういかにも襲ってくださいといった風体の私達を20人ほどの盗賊がとりかこんでいるのです。
母さん、事件です・・・・・。
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「一回やってみたかったんだよね~」
そう言いながらそこら中で伸びている盗賊の装備を黙々と剥ぎ取っている私はそう、転生者のチサさんです。
「やってみたかったって、『峰打ちってじゃ』って笑いながらやってたあれ?」
「そうそう、剣士を目指す人が一度は言ってみたいセリフなのよ」
「ふうん?人っておかしな事が好きなのね」
そう言ってピツハはさも退屈そうにクワッっとあくびをした。
「でも良いの?身ぐるみ剥いじゃって」
「だって盗賊だよ?衛兵に突き出したら装備なんて全部没収されちゃうし・・・」
「いやそこじゃなくて・・・まあいいわ、とっとと収納して縛っちゃいなさい」
「はいはい」
めんどくさそうにため息をつくピツハに急かされた私は、クレスさんに教えてもらった土魔法で特大の網を作り出すと、半裸になった彼らをポイポイと入れていった。それをピツハにくくりつけると引きずって歩き出す。
え?盗賊はどうやって倒したのかって?普通に全員峰打ちしたよ?
ピツハが「それはタコ殴りって言うんじゃないの?」って言っていたけど気にしない。
だって西洋剣って両刃だから鞘で殴るしかないじゃんね?
でもピツハを見ても襲ってくるって事は、順調に国境付近まできてるって事だよね。
だって王都に近ければ近いほど神獣と呼ばれるピツハの存在は目立ってしまうのである。
それを知らないという事は隣国が近い証拠だ。
「ん?チサ、少し先で馬車が襲われてるわよ、まだ血の匂いが薄いから死んでは居ないようだけど」
「え?盗賊かな?」
「多分こいつらの仲間ね、物凄く臭いもの」
そう言ってピツハが鼻の上にシワを寄せる。
「そ、その顔可愛い!ワシャワシャ」
「ふふふ、それ好きよ~」
あまりの可愛さにピツハをモフる私。
「は!犬トリップしてる場合じゃない!ピツハいくよ!」
「はいはい」
私はピツハに飛び乗ると、全速力で前方に見える馬車に向かった。
どうやら襲われているのは荷馬車らしい。3台の荷馬車の中央には身なり良い男とその妻らしき女性に男の子が抱き合って震えている。その周りを護衛の男が3名ほどで盗賊に対峙していた。
「盗賊どもめ!」
「おら、兄ちゃん観念しろよ」
「くっ、盗賊などに遅れを取るとは・・・しかしこの人数ならば・・・」
「残念だったな~?仲間は俺らだけじゃないんだぜ?」
「そうそう、お頭達が後ろに控えてんだ、ここを切り抜けたところでお前等は殺される運命だったってこったな」
「なんだとっ!?これ以上増えたらさすがに・・・」
「おら!女!こっち来いや!!!ちょっと歳はとっちゃいるが、なかなか上玉じゃねえか」
「いやーーーー!!!あなた!!!」
盗賊の一人が商人の奥さんの腕を掴みにかかる。
悲鳴をあげる妻を助けようと男が盗賊に体当たりするがビクともしない。
「へへへ、お頭達早く来ねえかな~?早く女の味見がしてえよ」
「さっき良いカモが後ろから来るって言ってたからすぐ戻るだろうぜ」
「あの~!それってこの人達の事ですか~?」
「へ?」
私は盗賊達の後ろから峰打ちした男達の入った網を指差しながら大声で盗賊達に呼びかけた。
振り返った彼らは網の中で失神している頭目を見て、途端に氷つく。
「それとですね、今すぐ武器と装備を捨てて降参するなら衛兵にに突き出すだけにしてあげますけど、どうしますか?」
「が、ガキ一人で何言ってやがる!」
硬直が解けた一人がそう言うと、盗賊達は真っ赤な顔でこちらに向かってきた。
「君!すぐに逃げるんだ!ここは俺たちで時間稼ぎをする!その間に魔獣に乗って衛兵を呼んで来てくれないか!」
護衛のリーダーと思われるお兄さんが襲われそうになっている私を逃がそうと、盗賊達に向かってゆく。
「あの~!多分すぐ終わるので大丈夫ですよ?お兄さん達は護衛対象さんを守って上げてください~!」
そう言うと、私は土魔法で蔦を生やし盗賊達をぐるぐる巻きにしたのだった。




