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11 子爵の横暴

息を切らせて実家に戻ると、家の前には豪華で派手な馬車が止まっている。

そこで待機していた御者は私とピツハを見て一瞬目を見開くと、すぐに中庭に行くように告げて来た。


「もう来てしまったようですね」


何故か顔色の悪いクレスさんはヨロヨロとピツハから降りると私と一緒に中庭に急いだ。

ギルマスは何か家のそばの植え込みで盛大に吐いてるけど大丈夫かなあ・・・家の前はちょっと営業妨害になるからだからやめてほしいんだけど・・・。


「この卑しい平民どもが!!こちらのお方を何方だと思っている!さっさと娘と使役獣を連れてこい!!」


両親の元に向かうと、男の怒鳴り声が聞こえて来た。その下では両親が震えながら地面に座り、しきりに頭を下げていた。


「申し訳ございません!娘は今出ておりまして・・・すぐに戻ると思うのですが」


「ふん、私がわざわざ足を運んでやったというのに隠しだてするとは、やはり平民はその血に等しく頭の作りも悪いらしい」


そう言うのはカエルの様な顔つきをした身なりの良い男、その横には護衛なのか帯剣をした厳つい男が立っている。どうやらあれが私を妾にと言ってきた貴族達らしい。


「お母さん!お父さん!」


私は思わす両親の元に駆け出した。そして両親を庇うように立つ。


「両親は関係ありません!子爵様は私に御用があるんですよね?」


「おお!娘よ!待ちかねたぞ!さあ、一緒に来い!その使役獣も一緒に面倒を見てやろう!可愛がってやるから感謝するが良い」


そう言うと子爵は私に手を伸ばしてきた。

私はさっそく先ほど発行してもらった候補生の証明書を取り出すと彼らに突き出した。


「それはできません。私は候補生になるので子爵様でもそれを邪魔する事は法的にも難しいはずです」


「なっ!なんだと!」


護衛はとっさに私の証明書を掴み取ると内容に目を通し始めた。


「ぐっ、グスタフ様・・・残念ながら娘の言う事は事実のようです」


「ん?なんだねそれは?」


「これはギルドから発行されるS級候補生の正式な書類です、これを持つ者はグスタフ様ほどの方でも手を出す事が出来ません・・・」


「なんだとっ!!!」


護衛はそれを生業にするだけあってギルドの事にも詳しいのだろう、苦虫を噛み潰したような顔をしながらも子爵に説明をしてくれた。


「庶民ごときがくだらん悪知恵を働かせおって!!!もうよい!そんなものは破いて捨ててしまえば済むことだ、親であるこやつらを殺して口封じをしてしまえば誰にもわからん!ゴダル、とっととこ奴らを殺せ!!!」


「で、ですが・・・これが知られれば罰せられる可能性が・・・」


「ふん、知られなければ良いのだろう?さっさとせんか!!」


雇い主である子爵にそう言われたゴダルという護衛は明らかな犯罪行為に顔をしかめながらもしぶしぶそれを破り捨て剣を抜いて両親に向かっていった。


「ほれ、これで証明も無くなった。ギルドには手違いで申請した事にし、後で取り消させれば済む。これで心置きなくワシに仕えられるぞ」


そう言ってグスタフはニタリと笑うと両手をワキワキさせながら私に近づいて来る。

この二人を害する事は簡単だ。でも貴族である二人に危害を加えれば国に追われる事になる。

出来れば善良な両親を犯罪者の親にはしたくない。

これはもう家を捨て、二人を連れて逃げるしかないのではと俯いた私なのだった。



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