新しく踏み出す転生者 ✡挿絵あり
おかしい、キリが良いのに文字数が5000字を超えた。
これからも超える気がしてならない。
初めて挿絵を挿入してみました。
アウローラの取り巻き事件の後、家に帰ったリベルは事の顛末をアルボアとヴァガーティオに説明した。アルボアは早速リベルに友達が出来たと喜び、ヴァガーティオはお腹を抱えて笑った。
「いやあ、早くも編入して次の日で問題に首を突っ込むとは、しかも相手は6属貴族ですか!本当に期待を裏切りませんねえ!」
どこか嬉しそうにからかってくるような様子にイラついたリベルは闇魔法で強化した拳を椅子に座っているヴァガーティオの顔面に叩きつけた。顔を殴られたヴァガーティオは消えていてリベルは舌を打つ。
「お友達を呼ぶなら先に言っておいてね?」
既に知り合ったクラスメイトを友達認定しているアルボアは早くも家に遊びに来ることを前提に計画を立てていた。顔面に拳を叩き込められた筈のヴァガーティオは痛みを感じない様子で立って笑っていた。
「少女を相手に上手くやりましたねえ。これは式場も早めの予約になりそうですね!」
告白をすっ飛ばして結婚式まで話を飛躍させたヴァガーティオの発言に今度はアルボアが複合属性魔法である樹木属性魔法を発動した。樹木で作られた蛇に巻かれてもヴァガーティオは笑っていた。
「まだリベルには早すぎます!そういう話は絶対あの根暗男にしないでね!」
リベルの頭を豊満な胸に抱き、告白するにもまずは母に相談することを主張するアルボアにリベルは溜息を吐いた。
そんなやり取りが昨日あり、翌日の朝は先日と変わらずアルボアと朝食をとり登校した。
『おはようございます。放送ギルドのお姉さんです!早速ですが、昨日に突如に発生した事件的なことをお知らせいたします。昨日の夕方にヴェネフィクス学園で飛行する物体を複数の生徒や教師、学園関係者が目撃しており中央役所まで複数の連絡がありました』
「がふっ!?」
清々しい朝の陽気に気分上々だったリベルが朝の放送で膝をついた。通行人から心配されたが、立ち上がってよろめきながら登校を続ける。
『隣国からのスパイや未確認魔獣の可能性も込めて、本日から冒険者ギルドや貴族の騎士部隊から警備に人員を回すとのお知らせがありました』
「ははあ、早速噂になってるね。ご本人の感想は如何に?」
放送を聞きながら胃にダメージを受けているところへ、昨日知り合ったコルヴァス・アミーキティアが話しかけてきた。普通に整った顔で背が高い以外にこれといった目立った特徴もない。
「魔法使うのは基本問題でないだろうに…」
「仕方ないさ。飛行魔法なんて風魔法でも上級者しか使えないのが共通認識だ。それも相当な魔素を消費するから燃費悪いからな。おたくは結構長い間で飛んでたろ?話題にもなりますよ、それは」
「飛ぶじゃなくて跳ぶの間違いなんだがなあ…」
リベルは自分が使った魔法が世間で騒がれるとは思っていなく、溜息を吐きながら話しかけてくるコルヴァスと共に教室に到着した。するとそこには昨日までなかった光景が目に入ってきた。
「ねえねえ、ヴィネラさんは本をよく読んでいるけどお勧めってある?」
「えっとね、ジャンルは関係なしに読んでいるよ?でも、魔導祖関係の本はたくさん読んだよ」
「え、魔導祖の本ってほとんどが作者の偏見が主でしょ?どの本の内容が正しいか分からなくなるー」
「それも楽しいよ?たくさんの情報から自分なりの仮設を立てて、それが他の本で新しい仮設になったりするのが面白いの」
「うへぇー、頭こんがらがってこない?」
教室に入って昨日までと違うのは多くのクラスメイトに囲まれているヴィネラだった。クラスメイトとヴィネラの距離感が嘘のように楽しそうに話し合っている。
「なあ、あれどうしたんだ?」
「ん?ああ、さっきアウローラ様の周りにいる生徒でヴィネラさんに突っかかってきた2人組が突然に謝ってきたんだ」
突然のクラスメイトの変わりように驚いたコルヴァスが他の男子生徒に理由を聞いた。すると、昨日の取り巻き2人が教室に乗り込んで皆が見ている前でヴィネラに謝ったのが理由だった。楽しそうに話す3人にクラスメイト達も遠慮しないでいいことを理解して今の状況となった。
「まあ、ヴィネラ嬢は嫌われていない、寧ろ隠れファンがたくさんいるタイプだしな。こうなるのも時間の問題だったのかもな」
「中には貴族の関係者とコネが出来るとか打算的な考えもありそうだけどな」
理由はどうあれ笑ってクラスメイトと過ごしているヴィネラには昨日までの憂鬱さはなかった。
「あ、おはようリベル君!」
「おはようさん」
いつまでも教室の扉の前で立ち往生している訳にはいかず、クラスメイトの波を強引に押しのけて自分の席に向かうリベルに気づいたヴィネラが挨拶をしてくる。リベルも軽く手を上げて挨拶を返し席に着く。
「昨日はありがとうね」
「いや、今の状況を作れたのはヴィネラさんの勇気だろ」
「…ありがとう。あ、でね、アウラが昨日の事でお話したいから放課後に呼びに来るって言ってたよ」
「あー、了解」
ヴィネラからのお礼もリベルは軽く返す。アウローラからの呼び出しには予想していたようでこれを了承する。
「(まあ、昨日のお礼もだが俺が使った魔法陣についてが本命かなあ。…転生後に初めて自分から他人へ干渉する機会だな。カオスの時に比べて少し臆病になっていたこともあるし、繋がった縁を大事にしてみようか)」
カオスの時の黒歴史が裏目に出て、転生後に他者への接触が億劫になっていたことを反省してヴィネラを見習いリベルは現代を楽しむことを目指すように目的を変更した。勿論、目立ちすぎないように立ち回り平穏に今世を過ごすことは忘れていない。
「俺も気になっているから放課後お邪魔するぜい」
目ざとくヴィネラとの会話を聞いていたコルヴァスは放課後の集合に介入する旨を伝え自分の席へ向かった。
放課後までは何事もなく授業を受け、休み時間にアウローラがヴィネラを訪ねてきたぐらいしかイベントは起きなかった。ヴィネラを訪ねた際にアウローラは目で「逃げないように」と圧を掛けていた。
放課後になっても離れないクラスメイト達に困っていたヴィネラを助けたのは、なんと昨日の取り巻き2人組だった。
「アウローラ様がヴィネラ様をお呼びになっています」
「申し訳ないけど、今日はここまでにしてくれ」
貴族からの呼び出しとなると強引にヴィネラを誘う訳にはいかず、クラスメイト達は別れを済ませて帰っていった。それを横目で見ながら、ヴィネラが教室を出るのを確認してリベルとコルヴァスの2人も教室を後にした。
教室から出たヴィネラの後を追うようにして向かったのは昨日の人目がない場所とは違って花が咲き乱れている花壇のある場所だった。そこには椅子とテーブルが既にセッティングされており、アウローラは椅子に座り紅茶を優雅に飲んでいた。
「あら、ようやく来られましたか。ようこそ、席にお座りになってくださいな」
リベル達の到着に気づいたアウローラは3人に席に座る様に促す。アウローラの隣にヴィネラとコルヴァスが座り、対面する形でリベルが席に着く。
「まずはお礼を、昨日は私の大事な友であるヴィネラを助けて頂いてありがとうございます」
「いえ、こっちもこっちで自分の信条というか、心境の変化というか、俺自身のためでもあったから」
「俺っちもです。目的の為にヴィネラ嬢をダシにした形になっただけすよ」
正直に自分の目的と話す男子2人に好感を持ったのかアウローラは頷いた。
「ええ、ここで変に取り繕うようならばこの会合もここで終わっていました。貴方達はヴィネラの友にふさわしいことを特別に許します」
「「(ヴィネラのメイドか母親か?)」」
ヴィネラに関することで上から目線で話すアウローラに苦笑しながら話を聞いていた。
「アウラ、お礼は私も言ったからね、次に進もう?」
「そうでしたわね。ここに集まって貰ったのはお礼もありますが、この子がどうしても聞きたいことがあるそうなのでお呼びいたしました。まあ、私も興味ある話なので共にいるのですが」
「あ、俺っちも聞きたいことあるけど、これはお2人さんの後で」
待てずにどこかソワソワしているヴィネラの要求から話が変わり、この展開を覚悟していたリベルは正直に話せる範囲まで話すことにした。
「俺の魔法陣についてか?」
リベルの質問にラケルタティス家の2人は頷き、コルヴァスはそれもあると言いながら頷いた。
「私の魔法に下級魔法で対抗して見せたことに納得いかないのです」
「国からの恩恵に対して俺は世界の恩恵を受けていく形だからな。属性の相性を上手く利用したんだよ」
世界の恩恵という言葉にリベル以外の3人は首を傾げた。ちなみにアウローラはリベルの魔法を詠唱円が1つなので下級魔法と勘違いをしていた。
「一言でいえば俺の魔法陣は世界を表している」
「っ!?魔法陣1つで世界の全てを表現できることなど出来ますの?」
「すまん、言い換える。魔法に必要な属性の関係性を俺なりに世界に当てはめて魔法陣としている、だな」
リベルが何を言っているかますます理解できない3人にリベルは丁寧に出来るだけ分かりやすいように説明を始めた。
「カオスの魔法理論3つの項目の1つ目のイメージの合致と2つ目の自分自身の世界観の話は繋がっているのは分かるか?」
「うん。国の先祖達は国という強大な存在を魔法と組み合わせたんだよね?」
「それも言えば、1つの到着した魔法理論で絶対ではない。個人でも似たような魔法を作れる」
国の存在がブーストとして加算されている現在魔法を個人で再現できることにリベル以外の3人は驚いた。世界観という言葉をこの国の先祖が国の存続の為に魔法に組み込んだのがリベルにとって不正解あるが、見方を変えると正解と言えることを誰も理解していなかった故の認識のズレである。
「俺の魔法陣は属性関係を世界の理の1つとする世界観を持っている。だから、今の現代風に言えば世界からの恩恵を得られている状態になっている」
リベルは魔法陣をかつて自分が編み出した六芒星の魔法陣を展開した。
「昨日見た魔法陣ですわね」
「へえ、オレっちは初めて見た。てか、この星みたいなデザインも見たことねえな」
「異国の言葉も混じっているね。でも詠唱文字は読めるよ。『世界の理の1つであり魔法の源である魔素よ、我が属性の認識を受け世界を示せ』って書いてあるね」
六芒星という形もこの世界では使用されていない為に見たものはカオス時代の人のみである。地球の現代っ子であったカオスはオタク知識によってオリジナルの魔法陣を作製した。
「上から時計回りに闇、風、土、光、水、火の属性を表している」
「カオス様が定義した魔法属性ですわね」
「(様づけきちぃ…)その関係性と相性を線でつないで表しているんだよ」
「光は火と風、闇は水に土と繋がっているのか?理由が分からねえ」
コルヴァスの言葉も予想していたのか、リベルは紙と鉛筆を鞄から取り出した。
「カオス魔法理論の最後の光と闇の関係については分かるか?」
「光が正義で闇が悪って言われているあれか?」
「でも、それは今ではちょっと変わってきているよね?」
「ええ、100年前の魔獣防衛戦での闇魔法の活躍で国を守ったことで価値観が変わりましたわ」
「貴族ではそうでも、国民的には闇は悪のイメージが未だに消えねえんだよな」
光と闇の関係は昔より緩和されているのが3人の話で判断できるが、100年という時間は魔法が使われた年月に比べてあまりにも短い。まだ、人の認識からは闇=悪が離れていないのも事実であり、そのことにリベルは頭を抱えた。
「簡単に光と闇の関係を説明するぞ。その真っ白の紙が光と思ってくれ。光だけの紙になんか見えるか?」
「いえ、白だけで何も書かれていませんわ」
「そこで、丸い影を描くとあら不思議~」
「あ、ボールの影に見える」
黒い影を描くことで輪郭がない筈なのにボールという存在を頭で想像できる。
「逆に闇は洞窟をイメージしてくれ。真っ暗の洞窟の中で何か見えるか?」
「見えないね」
「じゃあ、松明でもいいから灯りがあれば?」
「ああ、暗いけど近くに何かあるかは分かるな」
闇という中で灯りがともされれば対象を認識できる。
「それが光と闇の関係性だ。2つ揃って初めて存在を認識され、これを魔法で言えば…」
「魔素が紙の白で光、魔法陣が影という闇になるんだね。魔法が存在する為の光と闇」
「あ、はい」
頭が良いヴィネラはリベルの説明でカオスが何を言いたかったのかを何となく理解した。
「これは分かりやすいな!魔導祖の理論は子供の時から聞かされたけど分かりにくいのなんの!」
「うぐっ…」
1ヒット!
「今のリベルさんのような例でもいいので残されていたら現代魔法も変わっていたのかもしれませんね。何で遠回しのように表現されたのかしら?これでは万人に理解される筈もありませんわ」
「ぐはぁっ!」
2ヒット!
「でも、理解されないで他の解釈だったから今の魔法ができて、他の国からの侵略も防げたんだよ?間違った言葉でもないし、こうなったのは仕方ないと思うよ?」
「セーフ!」
ノーヒット!
「いやいや、授業で習っている魔法の内容は分かりやすいようになってるだろ?」
「そうですわね。そうしないと後世に残せませんわ。それを踏まえるとカオス様の理論は…」
「「ただのカッコつけにしか見えなくなったな/なりましたわ」」
「あべばあっ!!」
クリーンヒット!!リベルは地面に崩れ落ちた!
「もう!何てこと言うの2人とも!」
「女神がおる…」
「今の魔法技術を支えているのも、そんなカオス様が考えた魔法が基盤になっているおかげだよ!確かに分かりにくい表現にしたのも事実だけど、それだって後世に続く魔法使いに宛てた課題だったと思うの。きっと魔導祖様は未来の私たちを信じて、より良い未来に導く為の礎を残そうとした説を私は推すよ!」
「がはあぁっ!?」
ファイナルヒット!神などいなかった!澄んだ瞳を持つ魔導祖大好き少女ヴィネラの攻撃が一番リベルにダメージを与えた。かつてのリベルにそんな大層な理由など存在しないことを彼女は知らない。
「ど、どうしたの、リベル君!?」
「いや、何でもない、ほんとに何でもないんだ…(あれ?言われて冷静に考えてみれば現在魔法がこうなったのって俺が原因かっ!?)」
異世界に転生してここまでリベルに精神ダメージを与えたのは彼女たちが初めてだろう。地面に伏したリベルに駆け寄るヴィネラの優しさが身に染みていた。だが、新たに発覚した黒歴史にリベルは胃がキリキリと痛み出す。
「でだ、光と闇は混ざらないのが絵で分かるだろ?火と水、風と土も混ざらないという解釈で分けてんだよ」
「ん?何で水と土は闇になるんだよ?火よ風はなんとなく光っぽいイメージだけどさ」
「影が出来るのが地面や水面といった形あるのもだから。光は天上からのイメージで太陽の火と空とか空気の風で分けている」
「火から土へ線が引かれていませんか?」
「混ざらないだけで関係性がない訳じゃない。土を焼けばレンガになるし、水も火で熱してお湯になってるだろ?でも火と水は正反対だから線で繋がないで隣同士で関係を持っていることを表現してんだよ」
「なるほど、火と交わらない土と水で私の魔法を防いだのですね。納得しましたわ」
リベルの魔法陣に質問がとべば丁寧に返す言葉に何度も頷いている3人。楽しく魔法雑談をしているように見えるが事情を知っている者から見れば魔導祖から直々の魔法講座にもなるのである意味とても贅沢な光景である。
「あ、それで俺の質問だけどさ。廊下から空へ飛んだ魔法は?風属性の魔法に見えなかったけど?」
「陰を使った闇魔法の1種だな。飛行魔法より効率いいんだよ」
「影?光に分類される風に影は出来ないよな?」
「影じゃなくて陰な。空中にも影は出来るぞ、虹とか霧とか条件あるけど」
リベルは陰について説明する為に先ほどのボールの影を描いた紙を再度手にした。
「影は光で動くやつで、陰は光がどこから差しても動かないやつな」
「光を太陽としたらボール自体に出来る黒い箇所ですわね」
「そう、それを人で言えば足の裏に出来るのが陰であり、陰があれば人は地面に立っていることの証明になるよな?それを応用して、足の裏の陰を闇魔法で固定して踏み出せば空中でも跳躍できる。俺が使った魔法はそれだな」
闇魔法だから出来る逆説魔法での跳躍魔法をリベルは実際に発動して見せた。空中へ片足で跳び、片足を空中で陰を利用して止め、別の足で跳ぶ行為を繰り返した。それを実際に見た3人は目から鱗という表情で見ていた。
「すごい、足の陰に意味を持たせて魔法にするなんて…」
「…なるほど闇の貴族が扱う魔法の正体が何となく分かりなしたわ」
「風を纏い続ける飛行魔法より、確かに魔素の消費燃費は軽そうだな」
「とまあ、魔法に意味を持たせること。これがイメージとの合致と俺は思っている」
リベルの一通りの魔法に対する授業を聞いた3人はこれまでの自分の世界観が壊れたような気がしていた。これらを聞いた3人がどんな反応をするかリベルは静かに待っていた。
「本当に凄いね。まるで魔導祖様の再臨を見ている気分だよ」
「おうふ…ありがとうな(本人ですから)」
「さぞ賢明な師がいたのですね」
「そうだな(過去の自分です)」
「すげえな、これって発表すれば将来約束されたものじゃないか?」
「安定している現在のこの国に新たな火種というか、確立されている魔法理論を覆す気はないな。魔法が中心の国じゃ下手すれば分裂さえ起きうる」
リベルの国の分裂の話には貴族に属しているヴィネラとアウローラは思う事があるのか納得のようで神妙な顔で頷いていた。リベルが転生して他者との接触を恐れていた理由の1つがこれである。
嘗て魔法の威力で優劣が決まっていた大戦時代に突如あらわれたカオスの意味を持った魔法によって、拮抗していた2つの勢力に亀裂が入ったりした。悪く言えばカオスの登場で戦況が複雑になって戦争を悪化させたとも言える。この経験から自分の魔法は他人になるべく見られないよう、そして分からなくしようと決めていた。
「国のことを案じて師弟そろって今まで表立っていなかったと推測しますが、なぜ今になって学園に通ったりしたのです?さらに、私たちに秘蔵の魔法理論を話すなど…」
「まあ、昨日まではあんた達みたいな生徒に話すなんて思ってもいなかったさ。でもさ、昨日のヴィネラさんの小さな勇気てか、トラウマを乗り越えた姿にちょっと感銘受けてさ。このままでいいのかって自問自答の末の答えだ。今更で笑えて来るけどな。学園は偶然の重なりかな?」
リベルは大戦の時に世界に影響を与えることで多くの犠牲や救える命が生まれる事を自覚し覚悟していたはずが、平和な今の世界を見て地球に居たころの心境に戻っていた。しかし、生きている限りどうしても人は周りに大小に関わらず影響を及ぼすことをヴィネラから思い出された。この先の未来にどう影響を与えるか知らないが塞ぎきってしまう人生ではなく、楽しく未来を夢見ることを決めたのが今の状況である。
「あ、ありがとう…」
自分のお陰と言われたヴィネラは嬉しさ半分と恥ずかしさ半分といった声で体をモジモジとしていた。
「折角の縁がつないだ出会いだから大事にしたいってのもあるぞ。そういうジンクスも魔法に影響を及ぼす可能性があるからな」
リベルの話の締めに3人は自分以外を見渡し、照れくさいような苦笑を浮かべた。
「ならね、私のことはヴィネラって呼んでいいよ?折角知り合ったのなら友達になって?」
「私も様などという他人行儀はいりませんわ。アウローラと気軽にお呼びくださいな。ただし、アウラと呼ぶのは許しませんからね」
「俺も俺も!何かラッキーでの出会いかもしれねえが、この際に友達って縁を結んでくれ」
リベルだけでなくお互いに友達として扱って気軽に呼んで欲しいと言い合う光景にリベルはかつての仲間の面影を見た気がした。
「じゃあ、これからはこの4人で集まって学園生活を楽しもうか?」
リベルの提案に反対する者は誰もいなかった。