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始まる苦悩

黒歴史(くろれきし)――


 それは生きている者ならば、誰しもが通る道であり人生の一部。一時の感情に身を任せ、何も知らないまま行動することで発生する消せない足跡(きずあと)。これは例え世界が変わったとしても人が生きているなら必ず発生する。しかし、異世界ではこの言葉の意味は少し変わっていた。


「500年前、人と魔族は争いを繰り返していた」


 教卓の前で教師と思しき見た目麗しい女性がしゃべり始める。


「終わりが見えない戦いに人々は絶望し、悲観して各地で負の連鎖が止まらなかった」


 それを聞くのは教室にいる20名ほどの少年少女たち。平均年齢は15歳くらいだろう。


「魔法を駆使する魔族に人も魔法と数で対抗する。長年拮抗する2つの勢力によって名が残る大戦もすでに2桁を超えていた」


 多くの若者たちは今更なにをといった感想を胸に秘め授業に集中する。


「しかし、そんな時代に奇跡がおきました」


 話の変わり目に1人の少女が胸を高まらせ、1人の少年が顔を伏せる。


「どこからともなく現れた青年によってこの戦いの歴史に終止符が打たれたのです」


 顔を伏せていた少年が体を震わせる。


「人でありながら魔族を圧倒する魔法を駆使し、人でありながら他種族とも歩み長い争いの歴史に共存を見出した。その偉大な業績に多くの存在は彼を畏怖の念を込め、(まほう)を導いた祖として『魔導祖』という名目を付けた」


「あぁぁぁぁ~~~……」


 少年が両手を頭にのせて誰にも聞こえないような呻き声を出した。


「混沌を意味する『カオス』を名乗る青年はきっと混沌とする時代を自分で終わらせる意味でこの名前を使ったといわれています。素晴らしいことです」


「いえ、ただテンションが上がりまくっていて、カッコいいと思った名前を付けただけですぅ…」


「大戦が終わっても彼は様々な功績を残しました。その功績の中には今の技術では解明できない魔道具も数多くあります」


「いえ、思いついたから作れるかなとしただけで功績とか考えていませんでしたぁ…。あとその黒歴史(なまえ)は皮肉に言ったのを聞かれたんですぅ…」


「私たちがこうして平和に生きていること。人と魔族や他種族の共存を象徴するこの『カオスートピア』という都市があるのも彼が存在した何よりの証拠になるのです」


「本当に凄い…」


 机に屈している少年と対照的に教師の話を真面目に聞き、髪で隠れているが輝いている瞳をしているだろう少女は声を漏らす。


「もう上級学年になっているのに何をいまさらこんな話…」

「親からも何回も聞かされたよね~」

「こんな変な時期に編入してきた奴がいるから…」


 新学期の始まりを2ヶ月前にすませ、上級学年になったばかりの彼らにとって退屈な話に不満の声が上がる。そんな彼らの声を耳にしながら教師の話は続いている。


「いっそ、殺してくれぇぇ…。いや、転生したばかりだからまだ生きたいぃ……」


 これは異世界転移後に黒歴史と言われる偉業を果たし、そのまま転生した少年の物語である。


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