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第26話 第二回緊急会議 会議って後半はぐだぐたになるよね


 妖魔帝国緊急会議は怒濤の後半戦へと続いていた。


「やっぱ、サッカー場とか作るのってお金かかるッスか?」


「いえ。外部から調達が一切出来ないので、お金は減りませんが、備蓄している資源や資材が減りますね」


 そろばん男が電卓付きそろばんを弾きながら答える。

 珠を弾けばそろばん上部の電卓に数値が反映されると言うイロモノ中のイロモノである。

 お値段据え置きの79,800円である。


「そうよね。お金はあっても使えないんじゃね~」


「現時点ではわれわれの保有しているお金は、この世界では意味を成しませんね」


 実は妖魔帝国は資金面ではそれなりに潤っていた。

 豊富な鉱物資源に、有り余る電力、それが主な財源だった。


「やっぱ全部、(きん)に換えとくべきだったか?」


「市場操作になるからって反対したのは妖魔大王ニャ」


「そうだったっけ……。じゃ、この世界での新たな取引先を探さないとな」


「鉱物は売れるにしろ、電気は無理でしょうね」


 デスクイーンがノートパソコンで議事録を作成しながら話す。


「そもそも電気って概念が無さそうですしね」


 デスクイーンの後にほねぞうが続く。

 サラが煌々と光る電球を、初めて見た時の驚き様からすれば、おそらく外の世界には電気は無いのだろう。


「技術を売るってのはどうニャー?」


「いや。技術は売らない方向で行こう」


 妖魔大王が首を横にふる。


「何故ですか?」


 そろばん男は合点がいかない感じで、妖魔大王に訊ねる。


「我々が持つ技術は、おそらくこの世界にはまだ不釣り合いな技術だろう。歪な発展を遂げた文明は、大抵滅びの一途を辿るからな」


 妖魔大王は過去にいくつも存在していた古代の文明を思い出していた。

 どの文明もオーバーテクノロジーを手に入れたはいいが、文化レベルが追い付かず、戦争や環境破壊によって滅びていったのだ。


「なるほど、我々の技術を彼らに持たせるにはまだ早いと。もし我々が元の世界に帰還出来た場合、残されたこの世界がどうなるか想像もつきませんしな」


「じゃ鉱物メインでいくッスか?」


「食料は取引するほどは作ってないからなー」


「他に何かあるかしら?」


「剣や鎧でも作りますか」


「あ、良いッスね。この前見た盗賊達も剣や皮鎧とか装備してたから需要はありそうッス」


「おおー!……いや、でも……うーん。」


 頭を抱えてしばし悩みこむ妖魔大王。


「それって……つまり武器商人だよな」


 妖魔帝国の技術をもってすれば、剣や鎧の大量生産等は容易い。

 しかし安く大量の武器や防具を世界に広めると言う事は、戦争の準備を助長する事になるのでは、と妖魔大王は悩んでいるのだ。


「じゃ、防具だけ作って売れば?」


「その分浮いたお金を武器に回すだろう。一旦保留にしよう」


「大王様。俺達がこの世界に存在する以上、影響を全く与えないなんて不可能ッスよ。直接武器や防具を売らなくったって、俺達の経済活動のせいで、経済的弱者が生まれれば、それは結局争いに繋がるッス」


 暗黒騎士は、いつものおどけた雰囲気ではなく真面目な顔をしている。


「お前はたまに正論を言うよなー」


「あら、あたしは争い嫌いじゃないわよ」


 デスクイーンが話に割って入ってきた。


「出たー。空気読めないやつー」


 暗黒騎士が両手でデスクイーンに向かって指を指しながら言い返す。


「あんたがおかしいのよ。暗黒騎士が平和主義ってどうなの?」


「はいはい。そこまで~。何かしらのハラスメントに抵触しそうだから、そこまで~」


 妖魔大王が更に間に割って入る。


「じゃあ様々な薬を調合して売るのは如何ですか?どの国にも平等に安価で売りましょう」


 ほねぞうが発言する。


「それいいわね。製薬部門って誰が責任者だっけ?」


「確か『こけし侯爵』でしたか」


 そろばん男爵が自信無さそうに答える。


「あー。だるま男爵の従兄弟の? あいつ工芸生産部門に移らなかったっけ」


「一昨年に異動したニャ」


「この前牛丼屋で会ったんスけど、今はイキイキと働いているみたいッスよ」


「そりゃー良かった。前見たときは眼が死んでたもんな~。じゃ今は誰だ?」


「今はホムンの弟の『クルス』ニャ。錬金術と科学を融合させた新薬の研究に励んでいるニャー」


「おー。クルスなら問題ないな、じゃ話だけ通しといてくれるか?」


「はいニャー」


 カタカタと議事録を作りながらデスクイーンが呟く。


「本当、セリフが多いわぁ……」


「じゃ、とりあえず帝国の産業としては薬をメインにするとして、次は食料だな。ほねぞうどう思う?」


「はい。食糧の備蓄は数年分ありますが、それでも生鮮食品はなんとかしなければならないかと……」


「帝国内には養鶏場と養牛場はあったよな」


「ええ、その通りです。しかし問題はエサですね。牛の方は帝国内の牧草で育てていたのですが、鶏のエサは業者から仕入れておりましたので……」


「どれくらい持つッスか?」


「もって半年程度しかありません」


「エサか~。エサって何で出来てるんだっけ?」


「小麦や大豆、貝殻等ですね」


 そろばん男が無闇にそろばんを弾きながら発言する。

 非常にやかましい為、ミケに手を引っ掛かれた。


「それならありそうじゃないッスか? 最悪似た様な穀物はあるッショ」


「小麦や大豆は我々も必要だしな。稲とか塩とか砂糖とかも見つけなきゃ」


「醤油や味噌は大豆から作りますか」


「いいね~。帝国印の生醤油! うまくいけば売れるんじゃ?」


「まあ、まずは自分達の分ッスね。貝殻は?」


「海岸に行けばあるでしょー。あ、そうだっ、ほねぞう。こないだ買った水着着た? あたしまだ着てないのよね~」


「あ、あたしも着てない~」


 ほねぞうの発言に、心がざわつく妖魔大王。

 ……お前が海に浮かんでたら、ちょっとした事件になるぞ……。


「貝が貨幣代わりじゃ無ければいいニャ~」


「それヤバいッスね……」


「貨幣じゃなくても、逆に利用価値が無いと判断されていても厄介よね」


「取り扱う業者がいなければ自分達で拾ってこなければならんからな~。てか、そもそも海があるのか?」


「貝殻ってカルシウム補充の為にゃ? カルシウムなら生成出来るからそれを混ぜればいいニャ」


「おおー、さすがミケ」


 一同から感嘆の声があがる。

 妖魔帝国がこれ程の発展を遂げたのは、ミケの功績による部分も多い。


「よ~し、よしよし」


 妖魔大王がミケのアゴをなでる。

 ゴロゴロと喉を鳴らすミケ。


「まあ、何にせよだ。取り合えずこの世界の事を詳しく知る必要があるな」


「デスクイーン、ホムンを連れて町の東側をちょっと探ってきてくれ。」


「はーい。でもなんでホムンを?」


「ホムンなら病気や薬にも詳しいだろ。どんな薬が出回っていて、どんな病気とかが流行っているのかとか、ついでに探ってくれ」


「なるほど。わかったわ」


「暗黒騎士は俺と一緒に西側だ」


「げげっ。何で俺なんスか!?」


「お前一番暇だろーが。仮にも警備部門長なんだから、俺の周りを警備しろ」


「外は危なそうっすよ! やだなー」


「だ! か! ら! その危険を払うのがお前の役目だろーが」


「とほほ。探索任務なんて下っ端の役割ッス」


 暗黒騎士は諦めたのか俯いている。

 そもそも警備部門は暗黒騎士一人の為、暗黒騎士が一番下っ端とも言えるのだ。


「はいはい。じゃー今日の会議はここまでっ! お疲れさまでした~」


 これ以上文句を言われる前に、会議を強引に終わらせる妖魔大王。

 一同もそれに続いて元気良く声を出した。


「「お疲れさまでしたーっ!!」」














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