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第18話 緊急会議1 帝国の被害について

――妖魔帝国「役員会議室」――


 妖魔帝国にて重要な事案が発生した時に、幹部が召集され会議を行う部屋である。


 普段、滅多に使われる事の無い部屋だ。

 中央には部屋の名前に似つかわしくない、頑丈さだけを売りにした様な簡素な木の造りのテーブルが置かれている。

 

 そこには妖魔大王を始め、三幹部及び、今回の会議に必要な各部門の責任者が顔を合わせていた。

 妖魔大王だけは人化をしているが、他の者は妖魔本来の姿をしている。


 【テーブル右側】

 大王秘書 デスクイーン

 警備部門長 暗黒騎士

 開発研究部門 ミケ

 採掘部門 モグライオン


 【テーブル左側】

 諜報部 だるま男爵

 食糧部門 ほねぞう

 財務部門 そろばん男(欠席)

 総括部門 シュテン


 【お誕生日席】

 妖魔大王


 そうそうたる顔ぶれである。

 そして妖魔大王の膝の上にはサラがちょこんと座っている。

 

 昼間の説明会の間、医務室でホムンが相手をしていたのだが、 


「ダイちゃんどこーっ」


 と、泣き止まなかったのだそうだ。

 

 サラは現在7歳。

 自身が気づいた時にはもう目が見えていなかったと言う。

 それがDrの治療を受け、突然見える様になったのだ。

 目に映るもの全てが新鮮で、今はテーブルの上に置かれたクレヨンとお絵かき帳に夢中だ。


「みんな集まったー? あれ、そろばん男は?」


「子供が熱を出したって。お休みです」


 事前に連絡を受けていたデスクイーンが答える。


「じゃ仕方ないな。では時間になったし、会議を始めようか。とりあえずみんな、昼間はお疲れさまでしたー」


 妖魔大王はそろばん男を除く、召集を掛けた全員が集まっている事を確認すると、みんなに話しかける。

 ここに集まっている者は昼間の説明会にも参加をしていた。


「んじゃ。とりあえず転移後の帝国の状況について、各自報告をお願い」


「ではまず居住区域及び非戦闘員の被害状況について報告を致しまする」


 最初に発言したのは総括部門長のシュテンだ。

 種族はオニであり頭部からは二本の角が生えている。

 

 スーツを着用しているが、少々サイズが小さいらしく、今にもはちきれんばかりに膨らんでいる。

 その昔は散々都を荒らしまわっていたそうだが、今ではすっかり改心し妖魔大王に仕えている。


 総括部門では主に、妖魔帝国臣民の生活向上や居住区域の保守などを手掛けている。


「よろしく。人間側だけじゃなく妖魔側の現状も把握しないと何も出来ないからな」


「左様。では報告致しまする。被害は皆無。以上」


 報告を3秒で終わらせるシュテン。


「マジッスか? 人的被害だけじゃなく物理的被害や、電気や水道もOK?」


「うむ。特に使用できなくなったという報告は無い。天井や壁の損傷も同様だ」


「おおー」


 一同から安堵の声が漏れる。


「昼の説明会に参加しなかった者達にも、既に今回の事象の経緯について説明済である。大きな混乱も無い」


「さすがー。仕事が早いわね」


 そう言うデスクイーンの手元は、忙しくノートPCのキーを叩いている。

 今回の会議の議事録を作成しているのだ。


「電気と水が問題ないって事は、施設も大丈夫って事?」


 妖魔大王はテーブルの上に用意された飲み物、アイスコーヒーをストローでかき混ぜながら尋ねる。

 カランカランとコップの中の氷が音を立てる。


「にゃ。発電施設や浄水場も問題なく稼働してるにゃよ」


 そう発言するのは開発研究部門長の「ミケ」だ。

 

 見た目はごくごく普通の三毛猫である。

 ミケは妖魔フタマタであるが尻尾が一本しかない。

 ただ尻尾の先っちょが申し訳なさ程度に、ちょっぴり二つに分かれているだけだ。


 しかしその分かれた尻尾の形が、ハート型に見えると大人気である。

 昼間の説明会の後でも、町民達に囲まれ撮影会が行われていた。


「にゃ。こっちの世界の方が元の世界より地熱も地下水も豊富だにゃ。ちょっと調整が必要にゃけど問題ないにゃ」


「ふむふむ。うちのライフラインは大丈夫っと。じゃ食料はどうだ?ほねぞう」


「はい。食料備蓄庫にも異常はありません」


 カタカタと全身の骨を鳴らしながら説明をするほねぞう。 

 ほねぞうはいわゆるスケルトンだ。


 いやスケルトンになったというべきか。

 最初はゾンビとして蘇ったのだが、いつしか全ての肉が腐り落ち、結果今は骨だけとなったのである。


 ほねぞうと言う名前は、もちろん妖魔大王が付けた。


「稲荷町の方々にお配りしても、数年は備蓄だけで暮らす事が出来るでしょう」


 妖魔帝国は大災害や食料危機等、不測の事態に備えて常に食料の備蓄がある。

 帝国には非戦闘員を合わせ、約一万五千人程が暮らしているが、三年は外部に頼らずとも暮らしていけるだけの食糧が保存してある。

 稲荷町の住民約三百人が増えてもなんら支障はないだろう。


 ほねぞうが、かたかたとあごの骨を鳴らしながら説明を続ける。


「既に稲荷町の方々への配給の準備も出来ておりますが、現在A-4出入り口以外、全て封鎖されておりますので、稲荷町の配送には少し危険が伴うかと」 


「うーむ。サードウルフを護衛につけるか」


 地上にいたサードウルフの群れ、約250頭は現在妖魔帝国にいる。

 説明会の後も妖魔大王にくっついてきて離れようとしない為、観念して飼う事にしたのだ。

 どうやら草原中のサードウルフが集まったらしい。


 今は狼男の「ポチの助」が面倒を見ている。


「まあ、とりあえずうちの被害はほとんど無いようだな。じゃ次の議題に移るとするか」


 妖魔大王はそう言って、サラの頭を撫でるのであった。


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