表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/18

第八話『№9ジグール・ノイン』

 ドクンッドクンッ


 心臓の動きが早くなっている。

 血が持っていかれるのは辛い、何もやる気にならなくなるな。

 だが、此処で倒れて俯せになり、自分の血生臭に包まれるのを最後に死ぬのは、正直納得がいかない。

 寂れた工場に、目の前の狂った男の前で死ぬのも、嫌だ。

 何より俺は、ミナンを救わなければいけない。そのために、血をブラッディベイオネットに与えてる。

 与えただけで、死ぬなんて格好悪すぎる。


 ……さて、もう考えるのはやめにしよう。


 血を遠慮なく持っていくブラッディベイオネット。

 体に吸いつく管を全部引き剥がす。するとブラッディベイオネットは、形を変え分厚くなり剣先に銃口が装着された。

 赤い風が纏い、周りの毒ガスを吹き飛ばす。

 異変を感じ、ノインは焦った口調で落ち着きなく、


 「なんなんですか、その赤い風は!」


 その声を聞き、周りを見て初めて気づく。

 

 「……本当だ、これが防いでくれてんのか」

 「じ、自分でも気づいていなかったとは、飛んだ間抜けな方ですね」

 「じゃ、今のうちだな。標準を合わせてっと……」

 「私の言っていることを無視しないでください!」


 銃口をノインの頭に合わせ、引き金を引く。

 銃から銃弾が赤いオーラに包まれ発射される。

 威力は絶大で、脳天を貫き寂れた工場の天井まで破壊してしまう。

 煙が引いていくと、ノインがいた場所に残されたのは名前の書かれたアクセサリーと、少量の血だった。

 千鳥足になりながら、工場を出ていく。自分から出た血の量が、限界を超えていたため目にも生気があまりなくなっている。

 だが休んでいる暇はない、ミナンを助ける為に足を動かさなければいけない。気力だけを頼りに、可笑しな歩き方で二人の場所に向かう。


 銃弾の衝撃は街の中心まで届いていたようで、騒ぎになっていた。

 工場のほうから離れるように、おどおどして逃げ惑う人々。

 人を掻き分けて、二人が隠れている人気ひとけのない場所まで行く。

 どうにか着き、二人を見ると、


 「レイさん……ミナンが!」

 

 ミナンは意識が朦朧として、死の淵を彷徨っている状態だった。

 口元に薬の入った瓶をあてて、流し入れていく。噎せ返る動作を取るが、躊躇をせず流しいれると、顔色が良くなっていくのが分かった。

 回復をしていく様子に、アルノラは嬉し涙を流す。泣くアルノラの頭に手を乗せて、頭を雑に撫でる。


 「レイさん、ありがとう……」

 「俺はお礼を言われることはしてないよ、アルノ」


 複雑な表情でアルノラの顔を見ながら、頭から手を退けて立ち上がる。

 アルノラは、ミナンを抱きかかえながら俺を見上げて、


 「これからどうするんですか?」

 「ミナンを担いで、宿舎に戻れるか?」

 「戻れますけど、またどこかに……」

 「あぁ行ってくる。これ以上おまえらに迷惑はかけられない。しばら宿舎を頼んだぞ」


 二人を置いて歩くと、アルノラは普段は出さない大声を上げる。


 「いつも、いつもレイさんは何処かへ一人で行くんですね……僕達だって、何か出来るかもしれないのに」

 

 顔をしかめて言うと。

 俺は困った顔をして、誤魔化した笑顔で、


 「悪いな……」


 それだけを言い残し、去っていく。

 去って行った跡を見て、アルノらは愕然する。

 歩いた場所に尋常なほどの血を垂らしているからだ。


 「そんなに、自分を痛めつけて……あなたは何故そこまでできるんですか」


 遠く離れた俺の耳には、アルノラの思いが届くことはなかった。


 歩いてドゥイ区から出ようとして、出口まで行くと、誰かが腰を掛けてこちらに視線を向けている。

 誰もいない中、男は黙ってこちらを見続ける。

 近くで見てやっと、その男の正体に気づく。


 「サスなのか……?」


 白いフードをめくり、口元はいつも通り隠れている。

 サスは、呆れた顔になり、


 「やっと気づいたか、遅いんじゃないか気付くのが」

 「悪かったな、それでなぜお前がここにいる?」

 「まあそう警戒するな、俺はただお前がどのくらいシュヴァルツ・エルフ二ついて進んでいるか、確認しに来ただけだ。凄いじゃないか、また新しい力を得たんだな」

 「見ていたのか、それなら手伝ってくれればよかっただろ」


 文句を言うとい、馬鹿にしたように笑いだす。

 口元が隠れていてもわかるくらいの笑い方に、腹が立ち話の途中で歩こうとする。


 「済まないな、少し待つんだ」

 「なんだよ!馬鹿にしに来ただけなら、もう行くぞ」

 「まあ待て。おまえにはもう一つ用があるんだ」

 「何だよ用って……ぐっ」


 用を聞くために振り返ると、そのままお腹を抉る様に殴られた。

 サスは意識を失った俺を担いで、歩く。


 「手荒な真似は避けたかったが、少々イライラしてるみたいだったからな。少しの間眠ってもらうぞ」


 俺が持っている、変化したブラッディベイオネットを見ながらサスは、ニヤッとして言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ