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第四話『アヴルド国南・トゥリン区』

 トゥリン区は、アヴルド国南に位置する場所にある。

 俺がいた場所は、シュタル区の中でも南側で、歩けばすぐにトゥリン区に行ける。


 「へぇここが、トゥリン区か。意外と自然豊かだな」


 家が並ぶ中に、多くの花や木が目立った。花や木があることで、自然の中に、綺麗な生き物も多い。

 タイル状の道になっていて、お店や家が並び真っ直ぐに道が切り開かれている。

 中央には、噴水がありその周りには、子供たちが追いかけっこをしながら遊んでいる、中々魅力的な場所だ。

 とりあえず、二週間泊まれる宿舎を探すか。

 通りすがりの人に、良い宿舎がないか聞く。


 「あのすいません、何処かにいい宿舎はありませんか?」

 「うーん、宿舎か。それなら、噴水の広場近くにある大きな宿舎がいいだろう」

 「ありがとうございます」


 大きな男は、優しく答えてくれた。

 噴水の近くに向かい、その宿舎を探す。

 しばらく歩いて、大きな宿に着く。


 「ここが、言ってた場所か」


 青い屋根をした、木造建ての宿舎で、新しい場所のようだ。

 うちの宿舎よりも大きいな。

 とびらを開き、中に入る。


 「失礼しまーす」


 

 扉を開くとピンク色の髪をした二人の少女が近づいてきた、その少女はいきなり二人で俺の手を引き、話しかけてきた。


 「お客様、何日間の宿泊ですか?」

 「えっと、二週間でお願いしたいんだけど、ここは君たち二人で営んでいるのかな?」


 すると、焦ったように後ろからお姉さんが出てきて、


 「すいません、この子達お客様が来るとすぐに案内しようとするんです。こらっ駄目でしょ、ネリネ、トレニア」

 「はーい」

 「はーい」


 髪の長い方がトレニアで、髪が短い方がネリネというのか。

 二人は、返事をすると奥に行ってしまった。

 俺は、出てきた母親に改めて宿泊する期間を言う


 「二週間宿泊したいんですが、大丈夫ですか?」

 「はい、大丈夫ですよ。それじゃ、案内させていただきますね」


 広い宿舎の、奥に連れていかれる。

 どうやら混んでいるようだ。

 案内された場所に着き、荷物を置くと、


 「私はエナといいます。二週間の間、よろしくお願いします」

 「俺はレイです。こちらこそよろしくお願いします」


 姉妹の母親ということもあってか、エナもピンク色の髪をしている。

 二人よりは、少し暗いピンク色で、母親というよりも姉という感じもする。

 部屋の椅子に座り、辺りを見回す。


 「一人なのに広いな、四人くらいでもこれなら十分なのに」


 広い部屋に案内され、気分がよくなりながら今後について考える。

 サスからもらった情報を、紙にまとめてきたので、その紙を広げ、まず何から始めるか決めることにした。


 「サスからの情報だと、№10スエレ・ツェーンはここの区長の側近らしいが。そんなやつに。俺が近づけるのか。まずは近づくために、トゥリン区の区長、アズル・ライナとコンタクトを取らないとな」


 まずは区長、アズル・ライナとのコンタクトを目指すことにした。

 といっても、知りもしないお偉いさんと会えるわけもない。

 どうにかして会うために、エナに区長について聞くことにした。

 宿舎の受付にいる、エナのところに行き質問する。


 「エナさん、聞きたいことがあるんですけどいいですかね?」

 「丁度暇してたところなので、大丈夫ですよ」

 「それじゃ、ここの区長アズル・ライナさんについて教えていただけないですか?」

 「ライナ様ですか、とても綺麗な方でトゥリン区に自然を与えてくれたのは、ライナ様です」


 とても綺麗な方か、それは是非会ってみたい。

 嫌聞きたいのはそういうことじゃなく、居場所とか特徴のことだ。


 「そうなんですね、それ以外に特徴や普段いる場所なんてわかりますか?」

 「特徴は金髪の巻き髪で、服は美しい黄色いドレスを着ています。居場所は、トゥリン区の奥にある城にいると思いますが、関係者以外会うのは難しいでしょう。どうしても会いたいというのなら、ライナ様が月に一度行うお花を渡すのに参加したら、どうでしょうか?」

 「それはいつなんですか?」

 「明日です。噴水広場の近くで行うと思いますよ」


 明日か、タイミングが良かったな。

 関係者以外会えないけど、月に一度は姿を見せるということが、そこまで会うのは難しくないということか。

 

 「分かりました。貴重な、話しありがとうございます」

 「いえいえ、またいつでも気になったことは聞いてください」


 部屋に戻り、ベッドに横になる。

 持ってきた鞄の中から、ブラッディベイオネットを出す。


 「戦うとなったら、またお前を使わないといけないのか……俺は一体どうなっちまうんだろうな」


 №10スエレ・ツェーン、奴がどれほど強いか分からない。

 今度はブラッディベイオネットにどのくらい血を、与えることになるかもわからない。もしかしたら自我を保てなくなる可能性もある。

 そしたら、傷つけてはいけない人まで傷をつけてしまうかもしれない。自分の血なら、いくらでも持ってかれていいが、無関係な人の血まで奪うことはしたくない。俺が暴走して、無関係な人を巻き込んだらシュヴァルツ・エルフとしてることが、変わらないじゃないか。

 

 ――だが、後戻りはできないぞ?


 「ブラッディベイオネット、何か言ったか……?」


 ――――戦うと一度決めたんだろ。お前は復讐を果たし、戦い続けるしかない。それが、俺にとっても存在する意義になるからな。


 「お前は何故俺に戦ってほしいんだ。聞かせてくれよブラッディベイオネット」

 「…………」

 「また何も言わなくなっちまったか。しょうがない、今日は疲れたしもう寝るか」


 そのまま、俺は倒れるように眠った。




◇◆◇◆




 トゥリン区の奥に位置する、トゥリン城にてライナと一人の男が話している。

 黄色を基調とした玉座に、足を組みながらライナは座っている。

 その前に、姿勢を低くした男が立っている。男はライナを見て、

 

 「ライナ様、今日来た者について話があります」

 「珍しいな、お前が自ら私に申し出るなど。それで何の話だ?」

 「今日来た者は、明日の花を渡すイベントで接触してくることでしょう。その時は、ぜひとも気を付けてください」

 「いきなりなにかと思えば、気を付けるのは、いつものことだろう。何を心配している」


 男は神妙な面持ちのまま、ライナの顔を見る。

 見つめられたライナは、男の顔を見て、


 「わかった気を付ける、それでいいのだろ。だが気を付けるも何も、このトゥリン区には様々な人間が出入りする、どうやってその者に気を付けるのだ?」

 「それは、私に任せてください。では失礼します」


 男はライナに深くお辞儀をして、高級な扉から出ていく。

 ライナは不思議に思うも、注意することにした。

 扉が閉まり、男は赤の絨毯の上を歩きながら、通信機器の様なもので話しだす。


 「これでいいんだろ?」

 「そうだな、これで№11アーリー・サーシャを殺した奴に接触できるだろう」

 「楽しみだよ、サーシャを殺した奴を殺せると思うとな」

 「気を付けることだ、奴は妙な剣を使うからな」


 そう言って通信相手の通信が途絶える。

 楽しみだと笑っていた、男が通信が途絶えた途端に表情が変わり、


 「妙な剣……か。それでサーシャを殺したのか、くそっ勝手なことばかりして死にやがって」


 金髪の髪を前から掻き上げて、男は怒りの表情を浮かべる。

 そして、憎しみを込めた声で、


 「この№10スエレ・ツェーンが、サーシャの復讐のために殺してやるよ!」


 と言って、黄色い目を光らせ、笑みを浮かべた。

 その笑みは、仲間であるサーシャを、殺した奴への復讐をできる喜びからだった。

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