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第十六話『終わり』

 あれから二年が経ち、俺は王となったサスの元で専属の騎士として雇われることになった。

 経緯は色々あるが全ての戦いはサスによって仕組まれたもので、俺は手のひらで踊らされていたっていうことだ。

 抜け殻の様になった想い、シュヴァルツ・エルフへの復讐を果たし何もなくなった気がしていた。

 王となり玉座に座るサスの所へ行く。


 「何か用ですか、偽物の王よ」

 「その呼び方はそろそろやめてくれないか?俺だってこの国を良くしようと必死なんだよ、わかるだろ」

 「そうかもしれませんね、だけど俺はあんたを許すことはないよ」


 ミナンとアルノラを自由に暮らせていけることを引き換えに、俺は専属の騎士となった。

 サスがいまだ何を企んでいるかはわからない、だが良くないことを企んでいることは確かだ。

 何もかもがサスの言う通り、今のアヴルド国に不満はないものの何かが崩れるのはあっと言う間ということをサスには知ってほしい。


 そんな時だった、この国に全身が白い少年が人殺しをしているという良くない話が舞い込んだ。

 対応を急ぎ俺を招集したサスは、横暴にも今すぐ殺して来いと命令した。

 夜の巡回平和な街並みの中、白い剣を構えた少年が立っている。


 「君が噂の少年か?」

 「あぁやっと会えた、あんたがいなきゃ僕がいる理由にならないんだよね」

 「何を言って……」


 話す間もなく、白い剣で切り付けてくる。

 ブラッディベイオネットを取り出し、剣を返す。


 「へぇやっぱりすごいなぁ、僕はホワイティっていうんだ。シュヴァルツ・エルフって知ってるでしょ?」

 「知っているが、それがどうしたんだ」

 「僕はねあれの被害者なんだよ、あんたが復讐のためにブラッディベイオネットを使ってしまった。だから僕はアンチブラッディベイオネットとして作られたクローンだよ」

 「だからってなぜ人を」


 月が輝きを増していく中、雲で隠れたとき少年は口角をあげて笑った。


 「あんたは正義の味方みたいだから、人を殺せば現れるかなって?」

 「でも俺に会ってどうする気だったんだよ」

 「そんなの決まってる、僕は君のために生まれたんだよ?だったらさ殺さなきゃ生きてる価値はないじゃん」

 「殺す理由は分かった、だが俺を倒した後はどうする気なんだ?」


 ホワイティは悩み考え、手を体のさまざま部位に当てて考える。

 考えがまとまると、手のひらに握りしめた手を乗せて、


 「うーん達成できたら僕も死ぬ、そうだそれでいい‼」

 「死ぬのか……だったら尚更お前には勝たなきゃな」


 ブラッディベイオネットから管が伸びると、一直線にホワイティの体に突き刺さる。

 痛そうな顔をするが、すぐに表情が変わり管を一本ずつ抜いていく。

 

 「悪いけど僕には通じないし、僕の血を吸ったら大変なことになるよ?」

 「そりゃ丁寧にありがとな」


 今度は銃口を向けて打ち込む。

 何度も何度も何度も、夜に鳴り響く銃声。


 「痛いなぁ、でも俺は死なないよ?」

 「なあ一つ聞いてもいいか……」

 「何々どうしたの?」

 「お前は俺を恨んでいるのか?」


 質問に言葉が詰まる。

 ホワイティはその場で一時間考えて、


 「恨んではないよ……ただ僕があんたを殺したいって思ったのは、人が食事をして空気を吸って家族と生活して生きてるって感じるのと同じように、僕も生きている意味を感じたかったんだよ‼」


 泣き叫びながら自分の気持ちが溢れ出すホワイティ。

 気持ちを聞いて考えを巡らせ、一つの答えにたどり着く、


 「ならさ俺には考えがあるんだ」


 「考え……?」



 ◇



 王の間にいる俺は、サスと話している。


 「まだ殺せないのか?」

 「はいすいません、ですがいち早く俺が倒します」

 「それならいいのだが……なにっ」


 王の間の窓から誰かが入ってくる。

 仮面をした白に身を包んだ男が剣で、王を殺そうとする。


 「おい何をしてるんだレイ‼」


 ブラッディベイオネットで応戦するもすぐに跳ね返され、物凄い速さでサスに近づいていく。

 

 「ま、待て」


 「それではただの踏ん反り返った使えない王だな。かつての強さも失ったか?」


 俺の問いに苛立ちが隠せないサス。


 「五月蝿い、俺はお前もこの白い奴も片手で倒せる」

 「じゃあ倒してみろよ、これはお前のバルゼロだろ?」

 「あぁわかった」


 剣を交える二人。

 だが圧倒的な差で、ホワイティが捻じ伏せた。


 「く、くそっなぜこんなやつに」

 「悪いなサス……俺はまだ復讐が終わってなかったんだ。お前が最後のシュヴァルツ・エルフだからな」


 ブラッディベイオネットがサスの首を切り裂く。

 血を流し死んでいくサスは、床にへばりつき見っとも無い最期を迎えた。


 「ありがとうホワイティ、あとは最後に俺をっ……ぐっ」


 ホワイティの白い剣が突き刺さる。


 「悪いけどあんたには何も喋らせたくはない……だってさきっと僕はあんたの言葉を聞いたら殺せなくなっちゃうから……済まない」

 「それでいい、お前はそれでいいんだ。あとはこの剣を握って壊し、俺が言った宿舎に行くんだ」


 言われた通りにホワイティはブラッディベイオネットを握り砕いて壊した。


 「これで全部終わったんだ……」


 ホワイティはその場から離れ何処かへと行ってしまった。

 

 「これで良かったんだよなリーナ……」

 

 俺は意識が薄れていく中、いままであった記憶を思い出し深い深い眠りについた。

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