第十話『弱さを克服するために』
「さあ楽しもうじゃないか」
重い一撃が、伸し掛かる。
サスの剣は自分よりも大きく、剣の形状は長方形のような形をしていて剣先が尖っていないのが特徴だ。
だが力で捻じ伏せるタイプなのか、剣を振ってそのまま地面を壊している。ヒビが入る地面を見る限り、真面に受けたら骨が砕ける可能性がある。
剣で流しながら、防いでいると、
「何だレイ、お前の力はその程度なのか?」
「五月蝿いな、今考えてるんだよ」
「ふっ考えたまま死ぬなよっ!」
戦いを楽しんでいるサスの口元は、笑っている。
こんなに強い相手だとは正直思ってもいなった。体全体を使って大きく振りかぶる戦い方は、隙があるため狙おうと思えば反撃はできそうだ。
だがブラッディベイオネットで斬ろうとする度、重い剣で素早く斬り返してくる。もしかしたら、相手にした中で一番強い相手かもしれない、嫌な憶測が頭の中で過る。
剣を振りかぶる手は、止まることはない。
疲労を感じ、動きが鈍るのを待つが変わることはない。
「疲れるのを待っているのか?そんなの俺には効かねーぞ‼」
「そう……みたいだな」
剣で流さずに受け止める。
力の強さが桁違いだ、顔が近づく物凄い覇気に気付く。
精神面でも力量でも差があることを思い知らされる。
顔を近づけたまま耐えるが、剣に力を込めた瞬間にサスが俺の赤い剣を手から引き剥がし飛ばす。
剣を飛ばされ自分自身も飛ばされた俺は、仰向けになり滝の水に浸かる。
一歩ずつ近づいてくる。ゆっくりとした足音は、俺が弱いから逃げられないのを知っているかのようだ。
仰向けになる俺を見て、
「お前は弱いな……何故弱いかわかるか?」
と言いながら、俺の首元に手を近づけて地面に放り出すようにして、また投げ飛ばす。
血を吐くいているが、冷たい目つきでサスは俺の答えを待つ。
「弱い理由?……そんなの知らない」
「それが答えか、笑わせてくれるな。それじゃあ考えてみろ、お前は何故ここまで戦ってこれた?」
「それは……」
思い出すと、何もかもブラッディベイオネットに頼っていたことに気づく。
「そうだ、やっとわかったか。お前が強いんじゃない、強かったら今頃誰だって救えていただろう。頼り過ぎなんだよお前は、ブラッディベイオネットの力に‼」
「だとしたら俺は、どうすれば……いいんだよっ」
子供の様に涙を流す。
張り詰めた思いが、サスの一言でバラバラになった。
溢れる涙は、擦っても擦っても出てくる。その様子を見ながら、
「子供のように泣きたいなら、そのままでもいい。だけどお前にはやるべきことがあるんじゃないのか?」
「あぁあるさ、だけど俺は……」
「消えない限り人はなんだってできるぞ、諦めなければ出来るのにお前はこんなところで自分の思いを終わらせるのか」
自分が弱いことは知っていた。
シュヴァルツ・エルフとの戦いも、俺の力ではなくブラッディベイオネットの力だということも、心の片隅で知っていたのかもしれない。
何故俺だけが、こんなことをしなければいけない。理不尽じゃないか。
心の中の思いがサスに伝わる。
「そうか、お前はそれまでの奴だったていうことだな」
と言われ、俺の中でリーナの言葉を思い出す。
『私にとってレイは英雄だから』死ぬ間際に言った言葉、嬉しかった。
リーナは復讐なんか本当は望んでいないかもしれないが、俺は復讐を選んだ。リーナの言葉を忘れずに、戦い続けるしかない。
その思いが、体を動かしていた。
「サス、悪いけど俺は諦めないよ」
「そうか、じゃあお前は戦い続けるんだな」
「勿論だ、だが強くなるにはどうしたらいいか分からない。だけどサスは強くなる方法を知っているから、此処に連れてきたんだろ?」
「察しがいいな、その通りだ」
返事をしながら、ブラッディベイオネットを拾い上げて俺に投げ渡す。
そしてサスが話し出した。
「お前にこれからして欲しいことはただ一つ、滝の向こうにいる神の使いと言われている獣を倒して欲しい」
「神の使いか、そんな奴倒せるのか?」
「さあな、お前の実力次第だ。まあここで負けるくらいなら、これから先死ぬだろうから問題ない」
「いや、問題あるだろっ!」
それにしても神の使いなんて聞いたこともない。サスは何故俺に、そんな生き物と戦わせたいんだ。
疑問が頭に浮かんでいる仕草をすると、
「白い血が出るからだ」
「なんだよ白い血って」
「まあそれも戦えばわかる。さあどうするレイ、これからのために戦うか戦わないか」
「選択肢は一つみたいなもんだな、戦うに決まってる」
「そうか、それじゃ行ってこい滝の裏に」
滝の方に向かう俺を見ながらサスは、口元を手で押さえニヤけているのを隠すようにする。
滝の裏に入ったのを確認して、
「白い血とブラッディベイオネットか。面白くなってきたな、神の使いに勝った後お前がどのようになっているか楽しみだよ」
青い空を見て、サスは自分の思い通りに進んでいく現状を楽しんでいた。
滝の裏に行くと自分の三倍以上はある黒い扉があった。
思い切って扉を力強く、押し開く。
すると中には、四足歩行の白銀の毛に包まれた神々しい姿の獣がいた。
大きさは人間とあまり変わらないが、イメージしていたよりもスリムな感じで動きが早そうだ。
「こいつが神の使いか、何も恨みは無いが倒させてもらうぞ」
神の使いと呼ばれる獣を前にそう言うと、神の使いは白銀の毛を震わせて叫んだ。




