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28 魔法陣へ

 《シュン視点》


  結界は解除できたが、巨大な魔法陣は発動したままだった。活動中の魔法陣の中に入るのは難しい。ローファートに言わせれば不可能らしい。場が閉じられているのだと言う。

 テレキネシスで爆発物を送ろうとしても、場を構成している赤い炎の壁に遮られ、中へ進ませることができない。

 しかし、これほどの巨大な場。結界を破るために全力を出し切ってしまったロワクレスや高位魔術師たちには、もはやこれを破壊するための魔力は残っていないだろう。


 俺は決意した。方法はこれしかない。


 ロワクレスがはっとした顔で俺を見た。俺を止めようと手を伸ばす。

 俺の頼んだ通りに、ローファートが強引にロワクレスを引っ張って駆けて行く。俺は彼の顔を心に刻み、そして、テレポーテーションを発動した。




 安全のため上空を狙ってジャンプした。

 それでも、魔法陣の場の強力なエネルギーに捉えられる。


 眼下には、巨大な赤い炎が大きな円を描いて立ち並ぶ。さらに、大小の青い炎が二重の円と複雑な配置を形作るように何十何百と揺らめいていた。だが、熱を感じない。冷たい炎だった。たぶん、炎ではないのだ。放出される力が目に見える形を纏って揺らめいている。


 幾百もの冷たい炎が取り巻く中央に底なしの穴が開き、黒く渦巻くものがある。地の底の底までも、どこまでも落ちていきそうな闇だった。

 その闇の中から、一つ、また一つと闇の色を纏った異形のものが這い出して来る。


 強力な吸引を感じる。

 闇の穴へ引き摺りこもうと、見えない触手が無数に伸びて俺を捉えてくる。テレキネシスで身体を持ち上げているのだが、じりじりと引き下ろされていくのを止められない。

 まるでブラックホールだ。



 ダイナマイト二十本を特に大きく立ち上がっているいくつもの青い炎に向けてばらまいた。

 金属箱を裂いて開く。圧縮されていた五十キロの小麦粉が激しい勢いで吹き出し、たちまち視界が真っ白になった。

 時を置かず、作成した高性能爆弾を投下した。テレキネシスで起爆させる。

 同時に、テレポーテーションを発動。



 時間が止まったかのようだった。

 百分の一秒が永遠のように引き伸ばされる。


 テレポーテーションがうまく働かない。場のエネルギーに捉えられ、くうへ逃げることを阻止されている。


 足の下方で起爆された高性能爆弾が発動する。

 予備マガジンに内包された莫大なエネルギーが高分子の有機アジ化物を活性化させて爆発。炸裂したエネルギーが全方位に向かって加速する。

 膨れ上がる圧力。

 上昇する温度。

 放たれた小麦粉が粉塵爆発を起こす。

 さらに地面の方では二十本のダイナマイトが次々と爆発した。


 このスローモーションされた中でさえ、凄まじい熱がとてつもない勢いで吹き上がり広がって行くのがわかる。次に来るのは爆風だ。


 俺はこの爆発に巻き込まれて粉々に吹き飛ぶのだろう。



『死ぬな!』

『死んではいけない! シュン』

『死なないで!』


 声が聞こえた気がした。仲間の声だ。かつてのM・Sミュータントセクションの仲間たち。死んでいった者たちの声。


『俺たちの分も生きろ!』

『生きて!』

『私たちの分も幸せになって!』

『あの人が待ってる』


 ロワクレス!

 男らしい笑顔と輝く髪、誠実な紺碧の瞳が浮かんだ。

 俺のロワ!

 生きたいと思った。

 彼と生きていきたい。


『私の夢なの。代わりに叶えて!』

『諦めるな!』


 諦めかけていた全身に力が集まる。

 絡めとる力に、テレキネシスを発動する。

 同時にテレポーテーションを。


 爆風と熱が襲う。

 白熱する太陽のようにすべてが真っ白に燃えた。

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