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表裏一体〜神装使いと〜  作者: 雪野 那珂
3/3

第三話 神装〜完全武装〜

ジリリリリリリリリリッッッッッ!!!!!


目覚まし時計の音が部屋の中を暴れ回る。


「ん〜〜〜。ハッ!いま、何時だ!」


飛び起きて大きく背伸びをしたあと、目覚まし時計を真っ先に見る。


.....まぁ、予想通りだけどね........寝坊していた。


時計の針は八時三十分を指している。


「だぁぁぁぁぁ!!!盛大な遅刻じゃねぇかぁぁぁぁぁ!!!!」


時計の音と亮介の声が部屋の中でぶつかり合う。


タダでさえ授業やテストで単位が取れていないので、遅刻をしたら進級できるかどうかも怪しくなってくる。なお、現在遅刻は八回目、今回を含めると九回目である。


目覚まし時計を止めて学校のカバンを持ち部屋の扉を蹴って開けると階段を転がり落ちるように降る。


リビングを横目で見てみたがにはもう既に智香の姿は見当たらない。


(アイツ!起きたなら起こしてくれよ!)


靴を履きながらそんなことを思い、扉を急いで開ける。


そして、全速力で駅へと向かった。


─────そんなこんなで一時限目の途中で授業に参加した。

同じクラスの智香は平然と、自分の席へと座っていた。


─────やがて、放課後になり皆は下校やら部活やらと、忙しくしていた。


「あっと、新井亮介!今日放課後残りな.....っと言いたいとこなんだけど.....なんか今日忙しいらしいな、仁木から聞いたぞ、今日の分は無しにしとくよ。そんじゃ、気をつけて帰れよ」


と言ってヒミコちゃん先生は出ていった。


(何を言ったらあんな態度になるんだか.....また男か?)


とっくのとうに智香は家へと向かっているようだ。何も言わずに帰るなんて珍しい。

いつもは「一緒に帰ろう」などと誘ってきたのだが.....

亮介も家へ帰ることにした。




家に帰ると智香の姿がリビングにあった。


「りょーくん、出撃、千葉県松戸市、着いてきて」


帰るなりそう言われると、ソファーに座っていた智香はいきなり立ち上がり、亮介の手を力強く引っ張って家を飛び出る。


「いってぇ!おいおい!足首怪我してんだからもっと丁重に扱えよ!」


そんな亮介の言葉に一切反応せず智香は住宅街を右へ左へ、建物の隙間へ走り続ける。


千葉県松戸市に着くと、そこには大量のウォープトゥが溢れかえっていた。熊のような巨体や、鼠のような小さな体、大きな虫のような姿など、多彩な種類のウォープトゥが街を埋め尽くしていた。


人々には見えていないのか、何事も反応を示さず、普段通り過ごしている。


すると、熊型のウォープトゥが一人の男性に食いかかった。男性はもちろん、気が付かず動こうともせずスマホに目をやっている。


次の瞬間、熊型のウォープトゥは男性を飲み込んだ!!

その場には男性がいなかったかのようにスマホだけが残されていた。

周りの人々は男性が消えたことに誰一人気がついていない。まるで、男性が存在しなかったかのように平然と歩き続ける。


「りょーくん、今の見た?アレが災い。ウォープトゥは人の存在自体を消していまうの。私たち神装使いには分かっても普通の人々は彼のことをもうとっくに忘れているわ。貴方は両親の記憶が無いんだったわよね?」


「お、おい、それってまさか!?」


亮介は生まれた時から小学校入学までの記憶が一切残っていない。時代と共に忘れたのだろうと思っていたが、亮介には両親の記憶も残っていないのだ。


亮介の脳裏にとんでもない可能性が過ぎる。


「多分貴方の両親も奴らに襲われたんでしょうね。雑談はここまで、被害をこれ以上出さない為にもここで抑える!──神装!完全武装フルアームド!」


智香がそう叫ぶと両手に拳銃が現れ、体も朽葉色のコートに包まれていた。


「りょーくんは建物の陰に隠れてて!」


そう言い残すと目にも止まらぬ速さ、人のものとは思えない動きでウォープトゥの群れに突っ込んでいった。


どうやら『神装』を装備すると、能力者以外からは見えなくなるらしい、亮介には見えていたが周りの人々はウォープトゥと同様、何事も無かったかのようにしている。


亮介は言われるまま物陰に隠れて様子を見る。


(三十匹ってところね、熊型が十五体、鼠型五体、巨虫型きょちゅうがたが十体.....一人じゃ無理かしら.....)


すると、熊型の二匹が智香を挟み撃ちにしようとした.....が二匹とも二丁拳銃で綺麗に脳天を貫かれ跡形もなく消え去っていった。


(あと二十八匹!)


今度は巨虫型が両手の大きな鎌を振り下ろす!それをひらりと受け流し胴体に五、六発撃つと巨型は消えていった。


「あと二十七匹!ああ、もう!埒が明かない!!って!ヤバッ!」


思ったことが口に出てしまう。その隙をついて熊型が智香を丸呑みにしようとした!


「ぐッ.....」


間一髪で丸呑みは回避するも右腕を完全に噛みちぎられてしまった。

腕からは血.....ではなく淡い光のようなものが溢れ出ている。


「智香ッ!大丈夫か!」


今まで建物の隅で見ていた亮介心配してが飛び出してきた!


「バカ!出るなッ!」


智香が叫んだがもう遅い。数匹が亮介に気が付き襲いかかる。


(.....俺.....死ぬんだ.....)


亮介にはその一瞬がとても遅く見えた。


(これが走馬灯って奴か.....)


呑気にそんなことを考えてる時だった。目の前に智香が現れたのは!


「あああああああッッッッ!!!!!!!」


智香の叫び声が聞こえ、一気に目の前の光景が元の速さに戻る。


「うぅぅぅ.....」


前を見ると、両腕を失い断面から光を出してもがき苦しむ幼馴染みの姿があった。


「ッッッ!!!!」


亮介は自分を許せなかった。自分の身勝手な行動で、智香を傷つけてしまったことにッ!苦しめてしまったことにッ!何も出来なかった自分にッ!


そんな亮介達に目の前の熊型のウォープトゥはトドメの一撃であろう拳を振り下ろす!!


─────守りたいッ!こんな所でコイツを死なせたくないッ!せめて!せめて!今だけでも!コイツを守ってやれる力をッッッ!!!


すると、とてつもなく眩しい光が亮介を包み込む。熊型のウォープトゥは光の膨大な力により吹き飛ばされる。


「──神装!『完全武装フルアームド』」


亮介の腰には刀が添えられており、鈍色で襟が立っているロングコートを身にまとっていた。


「コイツは俺の物だ!お前らなんかにはくれてやんねぇよ!!」


亮介は熊型の前に立ちはだかる。

守りたいッ!コイツはッ!ぜってぇ渡さねぇッ!

昔の記憶が無い俺の一番古い記憶。それがコイツと会った時の記憶。何もわからず、一人になってる俺に無邪気に声をかけてくれた。内容は覚えていなくともとても嬉しかった事だけは憶えている。


「だだそれだけでもッ!何だかわかんねぇけどッ!コイツは大切な人だって分かっだよッ!だから渡さねぇッ!」


そう魂から叫ぶとさまざまな種類のウォープトゥを一体、また一体と、切り刻んでいく。


我ながらとんでもない動きを出来たものだなと思う。


熊型が拳を繰り出す。が、虚しくも空振り。そして、飛び出た腕に向かって刀が振り下ろされる。腕を切り落とされ、躍起になった熊型は噛み付こうとするもガチンッ!と音を立て空を噛み付く。上へと飛んで回避した亮介はその首へと一撃!!スパッっと首を綺麗に落とした。


ウォープトゥは恐れおののかず本能のまま亮介へと襲いかかる。


「さあ、クソッタレの害虫、害悪共ォ!かかってきやがれぇぇぇ!!!」


魂からの、喉が潰れるほどの、怒りの叫び声が暁の空へと響いた。


─────十分後.....ウォープトゥ共は跡形もなく消えていた。建物の隅で横になっている智香の神装は解除されている。気を失っているようだ。腕は完全に再生されている。


どうやら神装の体と生身の体は別のようだ。傷一つ智香の体にはついていない。


亮介も神装を解除すると突然、智香の電話の音が鳴った。相手は千葉県支部と表示されている。亮介はその電話に出た。


「もしもし、智香のスマホです」


「ん.....お疲れ.....智香は.....どうしたの.....?」


か細い虫のような可愛らしい声、相手はbossのようだ。


「智香は、気を失ってます。先ほどウォープトゥと交戦して────」


亮介はさっき起こったことを洗いざらい全てbossに話す。


「そう.....智香を.....連れてきて.....カードは.....智香の.....使って.....いい.....あと.....聞きたいこと.....たくさん.....ある.....ここに.....泊まってって.....」


「わかりました、では至急そちらへ向かいます」


そう言って亮介は電話を切った。

そして、横たわっている智香をゆっくりと抱き上げると夕日に染まってゆく松戸の街を歩いていった。

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