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君の声に惹かれて  作者: 水月
5/6

3-夏ー

2-夏ーの続き

時は流れて放課後…


「っーあぁーーー…疲れたぁ…」

「お疲れぃ」

一日目のテスト内容は、英語と数学どちらも嫌いではないが得意というわけでもない。それなりに勉強してきたつもりでもスラスラと解けるものでもなく、一気にため込んでいた謎の疲れる空気を新鮮な空気と入れ替えるがごとく、大きく呼吸を漏らしながら私は幸弥くんと他のメンバーが集まるのを待っていた。

「そういや龍崎なに忘れたの?」

「忘れたっていうか、呼出しだな。ほら、あいつ休み多かったし」

「あー・・・なるほど」

この学校特有の大きな広場にある木のテーブルと椅子の一角は私たちがよく占領する場所…天気がいいお昼にはほどよく大きな窓からお日様が入りポカポカと心地が良くなる。ウトウトとしながら聞く私の対角線上にいる幸弥くんは珍しいことでもないというように携帯に視線を落としながらこともなさげに答えた

「今日はなんのゲームしてるの?」

寝てしまってはまずいと思い、私はその視線の先を除くように幸弥君に問いかけてみた。

「alto」

睡魔と闘う私の心境とは裏腹に淡々と答えられた。

「面白い?」

「ふつうてか、飽きたw」

飽きたという割にゲームから視線を外さないのもいつものことだ。そう思いはしても口にはださず、この際だからと睡魔に身を委ねることにした、どうせ来ればすぐわかる。そう思ってた矢先のことだった。

「ゆきやぁーーーたかさきぃーーー」

あぁ…穏やかな空間に不釣り合いな騒音が…帰り支度に急ぐ者、友人とお昼を共にする者などの喧騒に紛れて、歩くスピーカーが声をかけてきたなんて思いたくなく、私は寝てるふりでその場を打開しようとしたが時はすでに遅かった。

「なぁなぁ!二人の英語担当って誰?森沢先生なら提出するプリント貸して!!お願い!!」

どうやら、提出物がまだ終わっていなかったようで…

「森沢先生だけど、もう出しちゃったよ。」

「そんなもの、俺はやってない!」

返答を聞きあからさまに落ち込むこーちゃん。というか、幸弥さん、あなたそれドヤ顔で言うことじゃないと思うのですが…そう思いつつあえてスルーし、こーちゃんに向き直った。

「といか、テスト範囲をやらないでテスト受けるなよw内容はテストとほぼ一緒だったと思うし、今からでも自分で解けばいいじゃん?」

そう、ちゃんとプリントを問いていれば七、八割は取れるレベルのテストなのだ。ということは逆はさらに簡単ということで…

「いや、このあとすぐ部活だから」

予想に反して救いようのない回答を持ち出した彼に一瞬の殺意すら覚える。あくまでできないではなくやらないのだ。ならば差し出す手もないだろう。

「じゃあ知らん。お前の成績が下がるだけだ」

「そんなぁ~~高崎やってくんない?」

「馬鹿じゃないの?やるわけないやん。部活の先生にいって自分で解けアホ」

私は完全に見離しているぞとアピールするように思いつく限り罵声を浴びせている私とそれでも尚救いを求めるこーちゃんの攻防を横目に無言で携帯をいじり続ける幸弥君。

これほどまでにシュールなことはないだろう。誰かこのバカ何とかしてくれと思っていた矢先。私にとっても、こーちゃんにとっても救いが来た。

「なにやっとん?」

「おー藤野ー」

「このバカ何とかして、藤野君」

「ふじのぉ~たすけておくれぇ~」

やっと携帯から目を離す幸弥君。足を組んでこーちゃんの方を向いている私に対して言う藤野君。

究極土下座をその場で決行しようとしていたこーちゃんは用事を終えて降りてきた藤野君を見つけるやいなやしがみつこうとしたが、藤野君はなんなくそれを避けた。というかなんだそのポーズはw

「え、なに、お前まだ提出物終わってないの?馬鹿じゃね?」

事情を聴くや否や、後ろに笑いという文字が大量発生しそうな顔で淡々といっていく藤野君に、そうだよ!ばかだよ!と声を上げているこーちゃんのやり取りはかなり滑稽だった。

そんな二人のやり取りを目の前に藤野君の後ろに立っていたハインと管ちゃんが淡々と私と幸弥君が座っている隣に腰を掛けてきた。

「管ちゃんテストどうだった?」

「んー?普通!」

「またaltoかよww」

「いや、動画だw」

各自龍崎が遅れている事情は知っているので待っている間の談話を始める。

こーちゃんの提出物は結局藤野くんが貸してあげるようだ。

「藤野ありがとぉーーー!!」

「ちゃんと俺のも出しといてね?」

そうしてやっといなくなったこーちゃんと入れ替わるように龍崎が職員室から戻ってきた。

「おかえりー先生なんだって?」

「メッチャ課題だされた…最終日までに提出しろだって」

「まぁ、自業自得だな!」

何気に問いかけた私の質問に答える龍崎とそれを聞くやそうなって当然だなと笑うハイン。かなり量有るね、がんば!と私の横で管ちゃんがつぶやく。そうしてメンバーがそろったところで誰が言うでもなく、自然と下駄箱へ、最寄駅へと向かって行った。


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