閑話・前魔王にお供しようとしたのに置いていかれたミーアさん。
王族にお仕えする女官には貴族の子女も多いのよ。
行儀見習いということもあるし上級貴族との接触の多い職場なので出会いの
場と言うこともあるの。
勿論、正妻狙いじゃあなく側室とか後妻なんてことが多いわね。
大抵は下級貴族の子女なコトが多いのでソレでも玉の輿とみられてるのよ。
私も男爵家の出身なんだけど母は三番目の妻でしかも私の出産で亡くなったから
後ろ盾なんて皆無だわ。
母は見初められたって口だけど父は母が亡くなったらすぐ次の方を娶ったそうで
愛情がどこまでだったかなんて聞くまでも無いわね。
私の上には五人も居るけどみんな女性なのでこれ以上は嫁ぎ先を探すのも
大変だという父達の話を漏れ聞いて女官の募集に応じることにしたのよ。
前魔王さまのお子様のお世話係だった。
前魔王様は立派な方で現魔王の弟君が足下にも及ばないとおっしゃるくらいの
実力をお持ちだって聞いたの。
でも、結婚・・されてなかったハズよね。
お子様っていつの間に・・
と思ったら妙な人間が前魔王様のお城に出入りしてたの。
「勇者」って・・アレが?・・
婚約者だって・・アレが?・・
なんだかチビでガキな雰囲気だと思ってたら背丈がグングン伸びて・・
現魔王さまは彼が来る度においでになって対戦してたわ。
互角と言ってイイくらいでしょうね。
ユウリさまはお可愛らしくてそれでいてなんというか規格外なのよ。
すぐに「カクレンボ」されてしまうのが困りものなんだけど・・
あと、お気に召した者を父君の勇者と同じ黒髪黒目に変えてしまわれて・・
・・魔王さままで変えちゃったときには焦っちゃったわよ。
まあ、苦笑いされてたけど。
あの日も居なくなって探してたらまた被害者が出てたの。
「ぱぱ」って呼んでたのには驚いたけど一緒に居た魔術師はマーカーの魔法を
教えてくれたのよ。
次の日にまた居なくなって連れてこられたのにはもう呆れてしまって・・
よほどお気に召したようで彼らが魔王さまのイタズラで死にかけたときは
パニックを起こされるしクーデター騒ぎで国に戻る時もついて行って
しまわれるしあげくは彼らの手伝いまで魔法でされるし・・・
前魔王さまにも現魔王さまにもお叱りは必至だと覚悟したの。
でもなんだか魔王さまは面白がられてるみたいだった。
帰国に宰相様がお迎えに来られたので安心してたら東の果ての島国まで
飛ばされてしまったけど彼ら、特に賢者の彼はいつでも冷静で
頼りがいがあったわね。
何が起こっても安心してられるってイイわよね。
それでも彼が飛竜に切り裂かれたときはもうダメだ!って思ったのよ。
でもユウリさまが・・・
魔王さまたちがアノ島国まで迎えに来られて魔王国に戻れてホッとしたの。
前魔王さまと勇者は結婚して彼の世界に行くコトになったのよ。
だからお供を願い出たの。
ココに残ってても私には行き場も無いしユウリさまの専属と言うことで女官に
なったんだものね。
ところが前魔王さまはお許し下さらなかったの。
そうしてとんでもないことを仰せになった。
「弟からアナタは連れて行かないようにって申し入れがあったのよ。
アナタに家族になって欲しいそうなの。
あの子はあまりワガママを言わない子なんだけど今回ばかりは是非ともって
言われてねぇ・・。
強制はしないけど弟と話してみてもらえないかしら?。」
家族って・・ソレって・・・(汗。)
「姉もユウリも勇者に連れて行かれてしまうからな。
お前がユウリと一緒に行方不明になって自覚したんだ。
お前まで居なくなったら多分耐えられないと思う。
どうかココに残って私の側に居て欲しい。」
でも、私って一応貴族の子女だけど一番下の男爵家の出身だし・・
「そういうのは気にしなくていい。
いきなり正妃と言うわけにはいかないが子供でもできれば必ず
それなりの地位を保証しよう。
・・・私のことが嫌いか?。」
そんなことは・・・
姉君の前魔王さまによく似ておられるこの方に憧れていない若い女官はいない。
私だって・・・でも・・私なんかが・・・
それに一体私のドコがお気に召したのか・・・
「あー・・ユウリに振り回されてオタオタしてたトコ・・かな?。
お前達を見て癒やされてたんだ。
姉たちが居なくなったら寂しい限りだと思う。
お前が側に居てくれれば紛らわせられると思うんだ。
一緒にいてくれ。私と一緒に。」
もしも私に飽きられる時が来てもそれまではこの方をお慰めできる・・。
お側で・・。
結局、側妃としてお側に侍ることになったの。
他に妃はまだおられないので二人だけの家族だわね。
きっといずれもっと立派なご身分の方が正妃に入られると思うわ。
魔王さまのためにはそうなるのが一番でしょうね。
それまであの方をお慰めできるのが嬉しいわ。
私に関心の無かった父も最近は時々会いに来てくれるのよ。
まあ、いろんな下心が丸見えなのがお笑いなんだけどね。




