83・ヘタレな勇者は詫びを入れる。
弟魔王さまはココの王様に事後処理とユウリちゃんに関する秘密の厳守を
申し入れたようだ。
あの子のオカゲで病気も治ったし飛竜もオレ達が居たせいで撃退できた。
魔王を目の前にして泰然としていられるほどの方でもなかったようで
スムーズに話は進んだらしい。
お別れを言う相手はエルフのエディさんくらいだね。
そう思ってたら船で一緒だった冒険者さん達がお別れを言いに来てくれた。
やっぱりあの草原から戻った人たちだったよ。
「オカゲで生き返ったからな。
それなのにあんなに分け前なんかもらってイイのか?。
お前らが落としてくれたからオレ達でも飛竜を倒せたんだ。
分け前が多過ぎだと思うんだが・・。」
オレ達は故郷に帰れることになりました。
ココでのお金は使えないんです。
神殿にも寄進させてもらいましたがソレもあの子のことをそっとしておいて
下さるようにってお願いするためでもあるんです。
まあ、口止め料と慰謝料だと思って下さい。
「まあ、しゃべっても信じないだろうけどな。
分かった。じゃあ遠慮無く頂いとくぜ。皆もソレでいいよな。
あの子のお守りじゃあお前らも大変だったんだろうな。
無事に帰れるように祈っとくよ。
幸いココは神殿だしな。(笑。)」
みんな気のいい人たちだった。
お別れは寂しいけど笑って別れられるってのはイイね。
戦士のゲンさんは弟さんまでこの世界に来てしまったことに驚いていた。
でも、弟のカンさんは向こうの世界から来たときは一緒だったという。
つまり弟さんだけ一ヶ月到着時点が遅れたんだね。
彼は飛竜の襲撃騒ぎの真っ最中にこの街にきてしまったそうだ。
でも、オレ達を見知ってくれていた冒険者が神殿まで連れてきてくれた。
双子じゃあないそうなんだけどソックリな兄弟だったからね。
言葉も分からなかったのに運のいい限りだね。
最初は戸惑った弟さんも兄のゲンさんに会えたので落ち着いたそうだ。
異世界に突然きてしまうと委員長のように混乱してしまって当然だ。
オレは最初に異世界に召還されたときはクラスの連中と一緒だった。
勇者のマモルとその仲間達が居たから訓練はさせられても戦闘は無しで
元の世界に戻れたんだ。
今度もマモルや弟魔王さまやユウリちゃんのオカゲで帰れることになった。
素直に感謝するしかないね。
ジークはオレに詫びてきた。
「オレ・・お前に頼ってばっかりだった。
なんでこんなに大変な訓練やら修行やらしなきゃイケナイんだ!って
陰で文句ばっかり言ってたんだ。
アレが無かったら今頃あの世行きだっただろうに・・
お前に風魔法で突き飛ばされて切り裂かれるお前を見ても何もできなかった。
あんなに訓練してもらったのにな・・。
すまなかった。」
あー・・陰で・・ね。
文句があったんだな。
まあ、我慢できてたんならソレでいいんだよ。
頼ってたのはお前だけじゃあないしな。
「お前が頼ってたのって・・ユウリちゃん・・なのか?。」
お前だよ、ジーク。
オレはお前をなんとかしないと・・ってことに縋ってたんだ。
お前がいなかったら今頃どこかでのたれ死んでたと思うよ。
弟魔王さまのせいでお前が死にかけたとき自覚したんだ。
あのときは自分が殺されるよりショックだったよ。
「・・・オレ・・ちょっとは役にたってたのかな?。」
お前がいなかったらユウリちゃんはオレ達を助けることは無かったと思う。
ユウリちゃんのことが無くてもお前が居てくれただけでオレは背筋を立てて
自分を保っていられた。
ありがとう、ジーク。
お前は勇者だよ。オレに勇気をくれたからな。
ジークは照れくさそうに笑った。
元の世界じゃあ笑顔なんて見せたこともなかったな。
戻ったら笑顔の多い男になるだろう。きっとね。




