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32・ヘタレな勇者は目の敵。

 兵士や騎士のみんながジークに集中的にかかってくるので

かえってアイツの訓練には丁度イイことになっている。

アイツには百回の説明より一回の打撃のほうが身につくって感じだね。


ボコボコにされまくりだけど自分で回復魔法を使えるから

ある意味不死身だと言えないこともない。

オレは相手に回復魔法をかけている。

どうぞ納得するまでイジメてやってください。


・・・イジメ・・か。


イジメる気にもイジる気にもなれないって言われてたよな。

元の世界のアイツは無視されていた。

みんな無視してることさえ意識のそとになっていた。

オレも特に暴力を振るわれてる訳でも無かったから気にも止めてなかった。


波も風も無い・・ただ〔平穏〕なだけの教室。

アイツはただ置物のようにソコに在るだけだった。

在るってだけで誰も見ようともしてなかった。

空気・・とはよく言ったもんだ。


ココでのアイツは無視どころか目の敵にされている。

でも回復魔法のオカゲでいくらやられても復活できるから

以前の様に凹んだままってことも無くなって来た。

勿論やられれば痛いに決まってるけど痛みに怯まなくなった。

ココに来た頃に比べると長足の進歩だと思う。


でも他の騎士たちなんかに比べるとどうしてもアラが目立つ。

アリス様はブキッチョだと言ってたよな。

比べちゃあイケナイ、アイツはアイツで他の騎士でも兵士でもないんだ!

と思うけれどどうしても比べてしまう。


ココは異世界でオレ達はゲームをしてるんじゃあない。

訓練は遊びじゃあなく相手を倒す・・つまり殺すための練習なんだ。

ココの皆はずっとそういう訓練をしてきた連中なんだ。


アイツはレベル1より遥か下からスタートしたようなものだった。

ココに来てまだやっと三ヵ月程度なんだ。

回復魔法とボコボコ訓練が無かったらDクラスの冒険者なんて

上げ底でも無理だったはずだ。


ブキッチョなアイツでも勇者補正は効いてるような気がする。

あんなでもやっぱり〔勇者〕なんだろう。


オレはタダの魔術師だ。

多少魔法が得意なだけの・・。

なんだか気分がちょっぴり落ち込んだ。


そしたら肩を叩かれた。

振り向けば副騎士団長がニコニコと黒い笑顔を見せている。

な・・なんでしょう?


「いやぁ、君には接近戦用の稽古をつけたっけねぇ。

ジーク君の訓練を見てるだけならオサライくらい君もしても

イイんじゃあないかと思ってね。

ちょぉーっとオレと付き合ってくれるかな?」


うん・・ココはやっぱり異世界だ。

のんびり凹んでるなんてしてられる所じゃあないね。

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