3・ヘタレな勇者は走れない。
無いのは腕力だけじゃあなかった。
体力が絶望的に無い。
速足で歩かせるだけですぐに息切れして立ち止まる。
兵士の訓練をしてる指導教官もあきれ果てていた。
ココまでモロイヤツなんて初めてだ!と。
走らせるなんて論外だった。
体育の授業はどーしてたんだ?
あー・・休み・・ね。
ソレでよく通ったなあ・・・
体が悪いことにして免除してもらってたんだそうだ。
ドコも悪くはなかったらしい。アホだね。
なので並足と速足をインターバルで繰り返させた。
オレの回復魔法の練習台にしてやったぜ。
一石二鳥だね。
もっともオレも体力訓練やら魔法の訓練を受けている。
多少使えるとは言っても実戦経験はほとんど無いしな。
友人の勇者達に連中の道場「体育館」に連れてってもらったことはあるから
上級の魔法がどんなものかは分かってる。
オレのレベルだととても連中には及ばないってのもね。
最悪、魔王と闘わないと帰れないかもしれないからな。
なんとか逃げ出すだけの実力は持っておかないとヤバイ。
あのヘタレをほっといて逃げ出すって手もないわけじゃあ
ないんだが一応クラスメイトだしなぁ・・。
放って逃げたらあの世行き一直線だろう。
一人ならともかく二人・・足手まといでしかないアイツを
かばえるくらいの実力となると・・・
あー・・道は遠いなぁ・・・
紙玉打ちと併用で一週間。
なんとか息切れからは抜け出した。
なので全力で走らせたら・・倒れて起き上がらない。
どーも全力は早かったらしい・・・やれやれ。
なのでインターバルを三段階にした。
並足、速足、軽い走り・・・それでも悲鳴を上げる。
「なんでオレがこんなことを・・・。」
オメェがあの王女さまにポーッとして「お任せください!」
なんて言ったからだゾ!。
・・・どーも自分が言ったことを覚えてないらしい。
証人はゾロゾロ居るんだけどね。
まあ、逃げ出すにしても走る事すらマトモにできないんじゃ
とっ捕まるのは確実だ。
捕まえる方もコレじゃあ張り合いがないだろうけどね。