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14・ヘタレな勇者は泣き出した。

 護衛とはいえ見習いなんぞをどうして雇うのかと思ったら

ギルドの育成プランなんだそうだ。

ランクアップがちょっと早かったんで受付嬢が推薦して

くれたんだと言う。


見習いだからもちろん報酬は安いけど無事に仕事が終われば

ランクアップへの経験としてちゃんと認めてもらえるらしい。


先輩な護衛さん達は10人ほど。

馬車が5台。前後左右に配置されて周囲を警戒しながら進む。

目的地までは5日ほど。

受付嬢によると「ほんのご近所」だそうだ。


先頭と後尾は護衛も馬に乗るんだけど他は歩きだね。

馬車が遅いので普通に付いていける。

勇者はコノ世界に来た頃に比べたら進歩した。

普通に歩いてるもんな。

でもやっぱり歩くのは好きじゃあないみたいだね。

後尾の馬の護衛さんをチラチラ見てるから。


かといって馬が好きって訳でもなさそうなんだよね。

休憩のときにでも近づこうとはしないから。

多分乗って楽がしたいだけなんだろう。

でも乗馬はスポーツなくらいでそう簡単なもんじゃあない。

相手は生き物だしね。


商人さんに許可してもらって馬車の馬にエサをやってみた。

ニンジンみたいな野菜をね。

オレ達の世界の馬とは違う感じもあるけど人懐っこい。

懐かれちゃったよ。


三日目で賊が出た。

索敵の魔道具が反応したのでベテランさんに知らせた。

このコースは賊は少ないって話だったんだけど・・

流石にベテランさん達の対応は早かった。


オレはウィンドカッターを使いまくった。

でもどうしても致命傷を与えるのをためらってしまう。

他のベテランさん達は容赦なく倒していったけど・・


勇者も同様だった。

オレは傷をつけるくらいはできたけどアイツはまだ人を

攻撃するのにはためらいが出てしまう。

それでも自分が殺されると言う恐怖は大きい。

オレの加勢で少し相手が怯んだところを見逃さなかった。



「オレ・・人殺しになったんだな・・。」

そういって俯いて震えていた。泣いてたんだよ。

何も言えなかった。ただ側に居て背中をなでてやった。


実のところオレも何人か倒している。

でもオレより勇者のアイツのほうが傷ついてる気がした。

相手は賊でオレ達を殺しに来ていた。

正当防衛と言えると思う。

でもそんな理屈は関係なかったんだ。関係なかったんだよ。


魔物と人間は違う。

同じじゃあない。

同じ様に殺せても同じじゃあないんだ。


ベテランさん達はオレ達が人を殺したのが初めてなんだと

分かったようで何も言わずにそっとしておいてくれた。

それがなんだかとっても有り難かった。

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