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音楽響く異世界で  作者: 熊田猫助
第一楽章「幼少期」
3/13

2.到着、挨拶、混乱

その日は雨が降っていた。


俺は朝早くから起こされ、リビングのソファで待機している。

今日は数日前に父が言っていた母、マリアの双子の妹とその息子が家に到着するらしい。


俺が暇を持て余してソファの上でプラプラと足を振っていると、母のマリアがミルクを持って傍へとやってきた。

母はソファの前のテーブルにミルクが入ったコップを置き、隣へと腰掛けた。


「はいリーナ、あったかいミルクよ。今日は冷えるから、体が温まるわ」

「あ、ありがとうございます。かあさま」

「ふふ、どういたしまして」


いつもニコニコしている母マリアはキレイな人だと一目見た時に思った。

茶色がかった艶やかな長い髪を後ろに一つに纏めており、物腰はお嬢様然としていて、育ちの良さという物が滲み出ているような感じだ。


俺の髪は父と同じ黒で、顔立ちは母に似ているらしい。


そんなこんなでチビチビと温かいミルクを飲んでいると、ふいに玄関のベルの音が鳴る。


カランカランッという音が響き、母がゆっくりと立ち上がった。


「あらあら、もう到着したのかしら。リーナ、お父さんを呼んできてくれる?書斎にいると思うから。私は先に出迎えに行くわ。」

「はい、わかりました」


そう返事をした後、母は玄関へ、俺は父の書斎へと駆けていく。

書斎のドアを二回ノックすると、部屋の中から足音が近づき、ゆっくりとドアが開く。


「はいはいー。おっ!私の可愛いリーナじゃないか。どうしたんだい?」

「えーっと、かあさまが、とうさまを呼んできてって」

「おぉ、そうかそうか、私を呼びに来てくれたのかぁ、偉いなぁリーナは賢いなぁ。はははっ」


そんな事を言いながら父は俺を抱き上げ、玄関へと向かう。


「はっはっは。息子君と仲良くなれるといいね?」

「あ、はい。そう、ですね」


俺は適当な返事をしながら父に連れられて玄関へ。


到着すると、そこには母と、一人の女性の姿が見えた。

ゆっくりと近づくと、此方に気付いたのか、その女性が俺に向かって手を振ってきた。

俺も小さく手を振ると、彼女はにっこりとした笑顔を向けてくる。

母に良く似た顔立ちの、茶色いショートヘアーの女性だった。


「リーナちゃん!!久しぶりね!!4年ぶりぐらいかしら?あ、ついでにジョンも久しぶりね」

「私はついでかよ……。まぁいい。ほら、リーナ。タリア、おばさん!にご挨拶しておいで」

「おばっ!!ほほほっ。リーナちゃーん、タリア、お姉さんよー」

「リーナ・ベリウスです。ヨロシクおねがいします、えっと、タリア、おねえさん」


近くまで来た所で父に降ろされた俺は、令嬢ヨロシク、教えられた通りの所作で挨拶をする。

何だか一瞬、父と叔母の間に火花が散った気がするが、きっと気のせいだろう、うん。



「あぁぁぁぁ!可愛いわ!リーナちゃん!姉さんの小さい頃にそっくりね!」

「相変わらずねぇ、タリアも……。そうねぇ、似てるかしら?私はジョンに似てると思うのだけれど?」

「いいえ!!ジョンになんて似ても似つかないわ!!」

「……全くもって相変わらずだな。タリア、そんなだからライアンと喧嘩になるんだろう。毎度毎度……」

「うっさいわね!ジョン!今回はあの人が全面的に悪いのよ!!!」


うん、全くもって、賑やかな人たちである。

それにしても、息子君はどこだろう。

そんな事を思い、キョロキョロと見回していると、その視線に気付いた叔母が後ろから件の……。

件の……、え?おとこのこ?


「いけないいけない。この子ちょっと人見知りで……。ほら、挨拶しなさい」

「えーっと、どうも。ルゥーイ・シューゲルトです。よろしくおねがいします」

「こちらこそヨロシクね。えっと……、ん?ちょっとまってタリア」

「へ?どうしたの?姉さん」

「おい、いつの間にお前、娘なんか産んだんだ!!!」

「え?」

「??」

「はい?」


皆の頭に浮かぶのは総じてハテナマークである。

それもそのはず、息子だと聞かされていたのに、今目の前にいるのは、どう見ても女の子なのだから。


俺と同じような子供用のドレスに、茶色がかった長い髪。

そう、俺の母をそのまま小さくしたような……。


「何言ってるのよー!ルゥは男の子よー!可愛いでしょー?」

「え?そうねぇ。可愛いわ」

「でしょ?」

「え?うむ……。そう、だな。リーナによく似て、並ぶと姉妹の様だな……。ん?姉弟?」



うむ。

皆混乱している。

件の男の子?はわれ関せずとキョロキョロと周りを見回した後、俺の視線に気づいたのか、此方をジーッと見つめてきた。

どう見ても女の子にしか見えないが、男の子らしい。

未だ見つめてくる視線に耐え切れず、俺はツイッと目をそらす。

じっと目を見つめられるのは前世から苦手なのだ。


未だ感じる視線に、疑問を感じつつ、事態が落ち着くのを待つ俺であった。




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