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63代目竹取の翁  作者: 相戯陽大
讃岐の造一族の起源
4/10

マッチ売りの少女たち

こちらは森の外にある街のとある家。ここでは母親と娘二人、そして義理の子供が一人の4人で住んでいました。義理の子供のあだ名は灰だらけのエラ。それもいつも家事ばかりさせられているからです。ある日、この家にメイドが来ることになり、エラの家事から解放されることになるはずでした。


「こんにちは、今日からメイドをすることになったメイジーといいます!」


「よく来たわね、メイジーちゃん。でもうちには家事が大好きな子がいるから邪魔しないように仕事してね?」


「私と同じ人が街にもいるんですね!」


このとき、赤ずきんはこの言葉の意味を知りませんでした。そして、悪意もなくエラに声をかけるのです。


「あ、あなたが家事が大好きな子?」


「別に、したくてしてるわけじゃないわ…」


「え、好きじゃないの?」


「いいわよ、あなたはソファーにかけていて…」


「でも、私メイドだから…」


「邪魔しないで!」


エラは自分が家事をしないと継母に怒られると思っているのでしょう。しかし、それでも赤ずきんに辛く当たってしまったことはすぐに後悔しました。


「ごめんなさい…私八つ当たりしちゃって…」


「えと、うん。イライラすることは誰にでもあるよね、私も急に家族がいなくなっちゃってイライラしてたもん!」


「私も…小さい頃お父さんもお母さんも死んじゃって、ここに預けられたの。」


「そうなんだ…お互い頑張ろうね。私はメイジー。いつも赤いずきん被ってるから赤ずきんって呼ばれてるの!」


「私は…私はエラ。いつも灰だらけだから灰だらけのエラ、シンデレラって呼ばれてる。」


「シンデレラ…なんだか嫌な名前の付け方だけど、綺麗な名前だと思うよ?」


「赤ずきんだってかわいい名前…いいと思う。」


お互いの境遇からか、なんとか意気投合した赤ずきんとシンデレラ。その後も掃除をしながらのおしゃべりは2人の毎日の楽しみになっていました。これが気に入らない継母は、2人とも冬の寒い日に街へマッチを売りに行かせ、売り終えるまで帰らせませんでした。もちろん2人は凍えてしまいます。


「赤ずきん…ごめんなさい、寒いでしょ?私と仲良くしたばかりに…」


「違うよ、シンデレラが謝ることない!意地悪なのはシンデレラのお母さんだもん!」


「ありがとう…でも、ちょっとマッチで温まらない?」


「…うん。」


シンデレラがマッチをつけると、赤ずきんは死んだおばあちゃんが見えるような気がしてきました。


「待って、おばあちゃん…」


「…赤ずきん?」


「私も、一緒に行く…」


「しっかりして、赤ずきん!」


赤ずきんは寒くて幻覚を見ているのかもしれません。このままだと本当に赤ずきんが死んでしまうと思ったシンデレラは、すぐに助けを呼びました。


「誰か!この子を…赤ずきんを助けて!」


そうすると、シンデレラの後ろに大きな白い鳥が降りてきたような気がしました。


「あなたが望めば、助けられないこともありませんよ?」


「だ、だれなの…?」


知らない間にシンデレラの後ろに急に黒いマントを羽織った女性が現れました。


「私は…そう、魔法使いです。シンデレラ、あなたはいつも今日の王宮の舞踏会に参加したいと思っていましたね?」


「思ってたわ…思ってたけどそれより今は赤ずきんが…!」


「もしあなたが私の国の王宮で踊ってくれるなら、その子を助けてあげましょう。」


「そんなのいくらでも踊る、だから早く!赤ずきんを助けてよ!」


その瞬間、魔法使いは白い鳥に変身しシンデレラと赤ずきんを無理やり乗せてとある家へ連れて行きました。その家はお菓子で出来ていて、少年と少女が2人で暮らしていました。


「やっと来たね、おばさん。さあ、入って!」


少年が入り口で出迎えて、中では少女が暖炉を焚いていました。


「ここへ来れば凍え死ぬことはないから安心してよ。僕はヘンゼルって言うんだ。この魔法使いの甥っ子だよ。君は?」


「私は…エラ。シンデレラって呼ばれてるの。それで、この子がメイジー、赤ずきんって呼んでる。」


「シンデレラと赤ずきんね。私はグレーテル、ヘンゼルの妹。…おーい、赤ずきんが来たみたいだよー!」


グレーテルが大声で誰かを呼ぶと、家の奥から聞き覚えのある声が聞こえました。


「えっ、なんで赤ずきんさんがここにいるんですか!?」


「その前に、随分前にいなくなった鶴がここにいることの方が驚きなんだ、どういうことなんだ?」


「すみません。ヘンゼルとグレーテルの叔母で月の王の姉、名前はモルガーナ。これが本来の私なんです。」


ここにはシンデレラと赤ずきんが来る前に、偶然近くを通った桃太郎と一寸法師がお菓子の家に住んでいた魔女を倒すために来ていたのです。


「あの…赤ずきんが目を覚まさないんだけど…」


シンデレラはこの家に入ってからずっと暖炉の近くの赤ずきんを見ていましたが、ピクリとも動きませんでした。それどころか、血の気が引いていっています。


「死んでしまったのでしょうか?でも大丈夫です、月に行けばいくらでも生き返らせられますよ。」


「…あまり安心できないんだけど。」


桃太郎、一寸法師、鶴、赤ずきん、シンデレラ、ヘンゼル、グレーテル。7人が揃った家でまた新たな事件が起こるのです。

シンデレラが灰だらけという意味だということは有名ですが、赤ずきんと同じように本名は明らかではありません。エラという名前も後付けの設定のようです。


想像してみてください。王子様との結婚をお祝いしているネズミや小鳥たちが姫に向かって「よかったね、灰だらけ(シンデレラ)!」と言っているところを。

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