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(5)

 その時、クロスの目の前に電子画面が現れ、スレイの顔が映し出される。なぜか申し訳なさそうな表情を浮かべながら。


『あ、あの……?』

「どうした?」

『良ければ、二連続の攻撃が来る時は連絡しましょうか? その、余裕があったら……の話になりますけど……』

「え? いや、大丈夫なら頼むけど……。何をそんなオドオドしてるんだ? つか、そろそろレイの順番だぞ?」


 チラッとカレンが腕に軽く攻撃を擦り、HPを少しだけ減らしながらも無事に回避したことを見て、そう注意を促すスレイに注意を促すクロス。


『あ、そうですね! す、すみません。クロスさんのパートナーじゃないスレイが、そんな余計なことをしてもいいのかなって――』

「そういうことか。余計じゃないさ。単発ならなんとかする程度で済ませられるけど、さすがに二連撃は避けることが出来ないからさ。教えてくれるだけでもなんとか出来ると思うから頼む」

『は、はい! す、すみません。レイさんの方に集中させてもらいます!』


 そう言って、スレイが通信を切った直後、


「クロスくん、平気なの!」


 今度は回復を済ませたカレンがゆっくりと近寄りながら、話しかけてきた。

 一応、レイにも気を使っているようで、【ホーミングショット】を打ちながら。

 それに倣い、クロスも銃の引き金を連射させながら、その問いに答える。


「問題ない。それよりもここに来たら危ないぞ? レイの攻撃が終わったら、次はオレが狙われるし」

「分かってるよ。それでも気になったんだからしょうがないじゃん。あんなに吹っ飛んで来たら、さすがに心配になるよ! その前も攻撃食らってたし……」

「悪かったな。ちょっと色々あって、アミのサポートが受けられない状態なんだよ」

「え? なんで?」

「その理由はベルにでも聞いてくれ。オレはとりあえず前に出る。無理して前に出るなよな」


 クロスはなかなか自分の側から離れそうにないカレンのことを気遣い、そう言って前に出る。

 前に出ながら、クロスはレイの様子を見守っていた。

 しかし、今までのようにレイの無事を確認するためではなく、炎竜の様子を確認するためである。

 現在炎竜のHPは四分の一を切り、やっと三分の一近くまで減らすことが出来ていた。そうは言っても、四分の一も三分の一も大して変わらない。これだけ攻撃しているのも関わらず、まだ半分にも到達していない。

 なのに、少しだけ炎竜の様子がおかしいことに気が付いたからである。

 レイへの攻撃は最初に行った尻尾の振り回し攻撃。

 今回レイはMP回復が間に合わなかったらしく、普通にジャンプすることで回避することに決めたらしい。スレイのサポートがあるからこそ、ジャンプするタイミングなどはばっちりでダメージを負うことなく回避することは余裕のはずだった。が、足の先端が少しだけ当たって、ほんの少しだけダメージを食らってしまう。


 ――攻撃スピードが上がってるのか?


 クロスが見た限りでは、間違いなく攻撃を避けられるはずのタイミングだった。かするなんて絶対にあり得ないタイミングでのジャンプ。それでダメージを食らう方がおかしいと思えるほど、絶妙なタイミングだったはずなのに回避が出来ない。

 だからこそ、それ以外の結論がクロスの中で思いつくことが出来なかったのだ。

 そして、次の標的はクロス。

 未だにアミからの通信が入らないということは、炎竜の解析が終わらないということだと分かっているクロスは、


「ベル! スレイ!」


 アミの代わりに二人の名前を呼ぶ。


『なんだよ、急に!』

『はい! なんでしょうか?』


 ベルは相変わらずぶっきらぼうに、スレイは頼られたことが嬉しそうに現れた電子画面の中で答える。


「炎竜の攻撃に対して、何か違和感ないか?」


 クロスの質問に最初に口を開くベル。


『あるに決まってるだろ。少なくとも体力が三分の一切った時点から、攻撃パターンやスピードが速くなってる……気がする』

「気がする?」

『ついさっきのことだから計算出来るわけないだろッ!』

「ああ、そういうことね。じゃあ、これからオレに来る攻撃から計算してみてくれ」

『は、はぁ!? クロスの後はカレン様の番なんだから――』

『じゃあ、スレイがやります! それで構いませんか?』


 ベルの発言に重なるようにスレイが立候補する。 

 断る理由がなかったクロスは、


「じゃあ、頼む。たぶん遠距離攻撃が来ると思うから、ベルからデータを――」

『もうやってるよ。それより攻撃が来るんだから集中しろ!』


 ベルがそう遮り、自らの通信を切った。

 スレイもそれに倣い、通信を切る。


「物分かり良くなりすぎだろ」


 そうぼやきつつ、クロスはレイに言われた通り、自分に向かって攻撃しようとする炎竜に意識を集中させる。

 炎竜が身体ごとクロスに向け、口で思いっきり呼吸を行う。そして、しばらくして鼻から噴き出される空気の塊。

 クロスはそのほぼ見えない攻撃を探知・索敵スキルによって視認出来るように周囲にある空気との区別を行う。しかし、悠長に判断している暇はなく、周囲の空気よりも歪んでいる空気との区別を確認すると、即座に着弾地点を判断。その判断をしつつ、着弾による空気の炸裂も計算に入れて、普段よりも多めにステップを行う。

 カレンとは違い、クロスには初めて行われる攻撃だけあり、なんとかノーダメージで回避することに成功。

 が、それを喜ぶよりもクロスは少しだけ気になったことがあった。

 それについて考えようとした時、


『クロスさん、先ほどの攻撃とカレンさんに行われた時の比較出来ました』


 と、スレイから連絡が入る。

 そのため、クロスはそれを考えることを後回しにすることにした。


「それでどうだった?」

『あ、あれ? なんか変な顔してますけど――』

「そのことは後で良いから! 今はこの情報をみんなで共有することが先決だろ?」

『は、はい! すみません! それで比較してみた結果ですけど、カレンさんの攻撃時より全ての動作が1・4倍速くなってます!』

「やっぱりか! 割合としてほんの少しだけど、体感してみるとやっぱりなんか違うのはそのせいかよ!」

『よく気付きましたね!』

「まー、さっきまで余裕で避けていたカレンがかすってしまうぐらいだからな。気付かない方がおかしいだろ」

『……』

「別にスレイの悪口を言ってるわけじゃないからな? スレイはレイのことを気にしてたんだからしょうがないって」

『……はい』

「って、落ち込む前にまずはベルにそれを伝え――」

『ちょっと待ってください!!』


 そう言ってクロスの言葉に割り込むように新しい通信が開かれる。

 電子画面の中に現れたのは今まで炎竜のデータを解析していたアミの顔だった。


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