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(3)

 アミに出してもらった地図を頼りに炎竜がいる遺跡の前までやって来ていた。

 場所は近くにあるオアシスより少しだけ進んだ場所。何もない場所に煉瓦で造られた入口が少し地面に埋まった状態で斜めに口を開けている。しかも近くにはセーブポイントとワープポイントが設置されているため、ボスが待ち構えていることは見た目から分かる仕様となっていた。

 しかし、クロスたちは中には入ろうとはしなかった。いや、正確に言うと『入ることが出来なかった』。

 理由は、普通に入るとクロスたちはレイが戦っている炎竜とは違う炎竜の場所に辿り着くことになってしまうからだ。


「くそっ、どうすればいいんだよ!」


 ここに向かっている最中に、レイを助ける手立てを必死に考えていたクロスだったが、その答えが導き出されることがなかった。それは走りながらもあるが、『死ぬ』という言葉のせいで気持ちが焦ってしまっていたから。

 同じようにカレンも考えているようではあったが、同じように焦っているらしくオロオロしてしまっている。


「ど、どうしよう」

「どうしようって言われても……。アミ、何か介入する手立てないのか?」


 サポート妖精であるアミとベルが今の頼りであることは間違いなかった。

 二人もまた同じように何かシステムの穴がないものか、と必死に電子キーボードで打ち込んでいる。


「す、すみません。もうちょっと時間ください!」

「ッ! 悪い、焦らせて!」

「い、いえ!」


 アミもまた切羽詰っている状態だった。

 それは斜め上にレイのHPゲージが表示されているせいでもある。

 先ほどからそのHPゲージが減っては増えての繰り返し。つまり、一瞬で三分の一ほど減らされる攻撃を受け、それを必死にHP薬を使って何とかしていることを知らせるには十分な物だった。

 が、持ち物の所持数にも限界がある。

 最高は99個持てるようになっているが、パーティー解散後二日でそこまでフルに持っているはずがない。もし課金をして、所持数限界まで持っていたとしてもいつかは尽きる。それが尽きる前になんとかしないといけないのだ。


「こんなことならあの時、パーティーを解散しなければ良かったのに」


 カレンは泣き出しそうな顔で後悔し始めていた。

 しかし、クロスはそれを一喝。


「そんなこと言ってる場合じゃないだろッ!」

「ご、ごめん!」

「それはレイの自業自得でもあるんだから。それよりも二人で中ボスを倒せる腕しかないのに、一人でボス戦に行ったレイが馬鹿なんだよ。もうちょっと考えて行動しろって話だ!」

「う、うん」

「それに……その原因を招いたのはオレのせいでもあるんだから、一人で背負うな。だから、オレもここにいるんだろ」

「……迷惑かけてごめんね」

「気にしなくていいから。それよりも今、助けられる方法を考えるしかない」


 そう言ったその時、カレンの前に電子画面が現れる。

 画面に表示された最上部には『ゲームシステムの説明』と書かれてあり、誰もが知っているような説明が書かれてあった。


「ここの部分だが使えると思うか、クロス」

「ん、待て」


 ベルによって指摘された場所をクロスは読み始める。

 その部分はパーティー結成の説明だった。


「えーと、『バトル中でもパーティー結成可能。バトルに参加出来ます。周りの人と協力して、勝利を掴みましょう』。これ、使えるような気がするけど、問題は――」

「ああ、ボス戦でも有効かどうかが分からないんだ。だから、クロスの判断を仰ぐ」

「……仰ぐも何も考えている暇なんてない。アミ!」


 クロスは考える素振りを見せずにアミの名を呼ぶと、


「はい!」


 と、返事が返ってくるが続けて、


「も、もうちょっとだけ! あたしの方にもうちょっと時間をください!」


 そう予想外の声が返ってくる。

 どうやらレイの助ける方法らしきものが見つかったらしく、クロスの呼び声にも反応する時間が惜しいらしい。

 アミが今までこんな態度をクロスに取ったことはなかったため、ちょっとだけクロスはびっくりしてしまう。


 ――何か分からんが、そっちは頼んだぞ。


 ひとまずアミのことは放っておくことにしたクロスは、アミの変わりが務まるベルを見る。

 ベルもまたクロスの言いたいことが分かっているらしく、コクンと頷き、電子キーボードを打ち始めた。

 何をしているか分からないカレンがクロスとベルを交互に見ながら、


「ねえ、いったい何をしてるの?」


 と、心配そうに尋ねてきた。


「スレイと連絡を取れるようにしてもらってるんだよ」

「え、なんで? すぐに助けに行った方が……」

「レイの奴が素直に申請を受け取るとも思えない。それ以上に戦闘中だからどうにかすることも出来ないだろ。そんなに器用な奴とも思えないし……。だから――」

「おい、もう繋げるぞ」


 ベルはカレンに説明する暇も惜しいように許可を得ることなく、テレビ電話が開かれ、目の前に泣きかけのスレイの表情が現れる。


『い、今どこですかぁ!?』


 カレンの横から割り込むようにして、クロスがスレイに話しかける。


「遺跡の入口にいる。スレイ、レイにバレないように話せ!」

『だ、大丈夫ですよぉ! そのことはちゃんと分かった上でヘルプを頼んでるんですからぁー!』

「よし、これからオレの言う通りにしろ」

『は、はい!』

「オレたちをパーティーに参加させろ。それをレイに気付かれないようにスレイが許可するんだ」

『もちろんですぅ!』

「そこまで分かってるなら話は早い。頼んだ。アミ、パーティーの申請は出せるか?」


 アミは真剣な表情で電子キーボードを打ちこんでいたが、ハッとしたように顔を上げて頷きながらも、


「クロスさんはついでにこっちの説明も読んでおいてください。状況に置いては使えるかもしれません。けど、結構シビアなタイミングが要求されますが……」

「ん、分かった」


 アミは最初にクロスの目の前に電子画面を出現させ、自分が見つけた内容を表示させる。

その後、〈パーティー申請〉を行う。

 クロスはその間に素早く、その内容を読む。

 時間がないことを分かっていたため、アミがすでに重要と思える個所に赤のアンダーバーを引いてくれていたため、簡単に内容を確認することが出来た。


 ――ん、これは使えるな。


 あまり考える時間はなかったものの、レイの状況によってはこのシステムが使えると判断していると、その上に重なるように再び電子画面が現れ、〈パーティー申請が受諾されました〉と表示される。


「クロスくん、行こ!」


 カレンは先だって駆け出す。

 クロスはそれに頷き、持てるスピードの全力を使って駆け出すのだった。


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