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 翌日。

 四人は再び炎の砂漠へとやって来ていた。

 昨日話した通り、カレンの個人訓練とパーティでの訓練をするためである。

 しかし、四人の周囲には敵の気配は全くなかった。というより、クロスの探知スキルを使ったとしても周囲百メートルに敵の気配がない。

 その理由はクロスの目の前にいる人物――カレンのせいだった。


「やりすぎじゃね?」


 思わずカレンにそう尋ねてしまうクロス。

 しかし、カレンは全く悪気のない表情で、


「そうかな? 一応、昨日言われたようにクロスくんに言われた通り、周囲の敵を全滅させる気でやったんだけど」


 と、にこやかに答えてみせる。

 その表情が戦闘に対する楽しみを見出してしまったようで、『もっと戦いたいのに……』という不満が言葉に含まれていた。

 が、いくら雑魚モンスターはいくらでも復活すると言っても、もう少し時間がかかるのも事実。

 そのため、カレンにはまだ言ってなかったパーティでの戦闘訓練を伝えるにはちょうどいいタイミングであることは間違いなかった。


「まぁ、個人訓練はここまで。次、雑魚モンスター共が復活したら、オレとのパーティで行う戦闘の訓練をするぞ」

「あ、ようやく私もそのレベルまで到達出来たんだ」

「そういうことにしとこう」

「ムッ、なんか納得のいかない返答」

「個人練習なんていくらしても足りないってことはないんだぞ?」

「そ、それは分かるけどさー。ううん、やっぱりいい。クロスくんには敵わない気がするから。その話を続けていいよ」


 カレンはクロスの今までのことを思い出し、自分が何を言っても勝てないことに気付いたらしく、膨れたような表情を作りつつも話を続けるように促す。

 その様子を見ながら、クロスは空笑いを溢した後、促されるままに話を再開。


「とにかく訓練することは確定ということで。理由としては――」

「それは言わなくても分かるからいいよ」

「そっか。んで、どういう風に戦ってくかって話だ」

「ん? どういうこと?」

「レイの時はどんな風にコンビネーションで戦闘してたんだ?」

「レイくんの時? えーと、レイくんが前衛で私が後衛だよ?」

「あー、そういうことじゃなくて……」


 クロスが言いたいことは伝わっていないらしく、カレンは首を傾げている。

 説明不足。

 そうであることは、クロス自身気付いていたことだった。 

 しかしクロス自身、自分がカレンに伝えたいことがどんな風に伝えればいいのか、分かっていなかった。上手く表現することが難しかったのである。


 ――どんな風に説明したら……。


 クロスがそう悩んでいると、隣で大きくため息を吐く二人の妖精。


「説明下手にも程があるでしょう」

「クロスが言いたいのは、『戦闘中にどんな感じでお互いをカバーしあってたか?』ってことじゃないのか?」


 アミは毒舌、ベルは呆れを通り越したような言い方をしながらもちゃんと説明してくれる。

 ベルの言葉にパチンと指を鳴らして、


「そうそう、それが言いたかった。んで、どんな風にやってたんだ?」


 クロスはもう一度、カレンに尋ねる。

 ベルの説明でカレンもクロスが言いたいことがちゃんと伝わったらしく、「なるほどね」と顎に手を置いて考え込み始めるも、すぐに首を横に振る。


「基本的にはレイくんが突っ込んでたよ。だから、私は邪魔しないように回復に務めてたかな。たまに援護してたりもしたけど、誤射されるのが嫌らしくて、基本的にはしてなかったよ」

「あいつらしいなー。中ボスとかデカい身体を持つモンスターにはちゃんと攻撃してたんだろ?」

「してたのはしてたけど、どっちかっていうと私はやっぱり回復役だったね。なによりも、レイくんが特攻するからそうすることしか出来なかったんだー」

「なるほどなー。分かった、オレとの戦闘時は遠慮なく射撃してきてもいいから」

「え。いいの?」


 カレンはちょっと驚いた表情で驚く。

 レイの時と同じように前衛後衛に分かれて、自分はサポート役に徹すると思っていたらしい。

 そんなカレンを見ながら、クロスは呆れたようにカレンの肩に手を置き、


「当たり前だろ? つか、オレに任せろ。ちゃんと考えてるから」


 そう言った後、クロスはアミとベルを見つめる。

 アミはその意図が分かっていたらしいが、ベルはまだ分からないらしく、首を傾げていた。


「ここからは二人も今まで以上に動いてもらうことになるからな。覚悟しとけよ?」

「了解でーす」


 アミは敬礼のポーズで応対する中、


「何をどうすればいいんだ? ボクには見当がつかないんだが……」


 と、ベルは素直に質問してきた。


「アミとベルはオレとカレンの動きの予測、使った技とかのデータをお互いに送り合って、オレたちに伝えるようにするんだよ。それさえ分かれば、なんとかしようがあるからな」


 その質問に素直に答えるクロス。

 ベルは「あー」と漏らしながら、電子キーボードを出現させる。そして、カタカタと何かを打ち始めた。

 すると、アミの目の前に電子画面が出現。

 アミもまたベルと同じように電子キーボードを操作し、何かをし始める。

 クロスとカレンは二人が何を行っているのか、まったく分からず、お互いが顔を見合わせてしまう。

 その作業が終わったらしく、アミとベルの目の前から電子キーボードと電子画面が消える。

 それを見計らったようにカレンが口を開く。


「ねえ、いったい何をしてたの?」

「データの同期です、カレン様」

「同期?」

「はい、一回一回その場その場で連絡し合うのは面倒なので、今までの戦闘データをお互いに送っておいて、そこから導き出せるパターンを作り出したんです。もし、パターンから外れた行動をされた場合でも、その部分の修正をすればいいだけになりますから」

「へー、そんなことが出来んだ!」


 カレンは驚きを隠せず、パチパチと拍手していた。

 もちろん、クロスもそんなことが出来ると思っていなかったため、「へー」と声を漏らしていた。


 ――ベルのサポートも上手くなったなー。


 カレンと同じようにベルも言われるがままではなく、こうやって自主的に色々と考え始めたことは気付いていた。だけど、こんなことまで自主的にやれると思っていなかったため、ちょっとした感慨深いものを感じてしまうクロス。

 その視線に気付いたベルがキッとクロスを睨み付ける。


「今、失礼なことを考えたろ?」

「別に考えてないけど?」

「本当か?」

「ああ」

「ならいいや。あ、ちなみに先に言っておくけど、武器は好きに変えろ」

「え? あ、ああ……。最終的にはそのつもりだけど……」

「大丈夫だ、最初から全開で。ボクに任せておけ。カレン様にも不自由をかけるつもりはない。戦闘に集中しろ」

「……おう」


 ベルから出てくる意外な言葉にクロスはやっぱり驚きを隠せなかった。

 カレンとアミも同じように驚いていたが、すぐに笑い始めてしまう。

 それは、いつものぶっきらぼうな言い方だったがすぐに背中をクロスへ向けてしまったことで、二人にはベルが照れてしまっていることに気付いたからだった。

 そんな風に話をしていると、ようやく最初に倒したモンスターの復活の時間やってくる。


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