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 レイの武器の構えからクロスが思いついたのは二つの技だった。

 正確に言うと、クロスが知っている技で、斬りかかるのではなくカウンター狙いのものは二つしかなかった。

 一つは、相手の攻撃を受けた瞬間、周囲を爆発させてダメージを与える技――【バースト・ウォール】。

 一つは、相手の攻撃を防いだ瞬間、強制的に仰け反らして斬りかかる――【ガード・スラッシュ】。

 どちらにしてもクロスから攻撃しないと発動はしない技ではあるが、このまま膠着状態が続くと精神的に疲労を迎えるのは間違いなくクロスだった。

 そのことを分かっているのか、レイは口端を歪めながら挑発的な目でクロスを見つめていた。


 ――そっちがその気ならこっちだって考えがあるんだけどな。


 その挑発に乗ることはなく、クロスは刃弓の弦に矢を乗せ、思いっきり引っ張り、レイより上の方向――空中に狙いを定める。


「アミ、オレの考え、分かるか?」

「分かりますけど」

「じゃあ、調整頼むぞ」

「分かりました。じゃあ、画面に出しますのでその方向に矢を放ってください」

「おう」


 クロスとアミ以外は何のことを言っているのか分からないらしく、二人の会話を訝しげに聞いていた。が、レイはともかく決闘中のため、何をしようとしているのか聞くわけにはいかない。そのため、二人に誰も尋ねようとはしなかった。

 クロスはその間に目の前に出現した電子画面の指示に従い、MPを消費して、五本の矢を空中に放つ。

 六本目となる矢は今度こそレイに向ける。そして、こちらもまたMPを消費させながら、


「レイ、準備は出来た。覚悟しろ。んで、もってこれは前から試してみたことなんだ。悪いが素直に受け止めろ」

「は?」

「良いから良いから」


 クロスはレイに笑顔を向けたまま、持っていた矢の羽根を離す。

 放たれた矢は狙い通り、レイの元へ向かい飛んでいく。

 そして、レイの構える大剣に接触した瞬間、バチバチと小さく放電し始める。


「な、なにこれ?」


 今までこの現象を見たことのないカレンが、口元に手を押さえながらアミを見つめるも、


「射撃の初期技ですよ、カレン様」


 それを答えたのはアミでなくベル。


「初期技……【ブレイク・ショット】?」

「はい。あのバカはカウンター技にブレイク系の技を使ったらどっちが勝つのか、それを試したんですよ。成功したらカウンターは食らいませんし、失敗したとしてもどっちみちダメージを食らってしまう。モンスター相手ではさすがにそんな命取りみたいな行動は出来ませんから、この決闘を利用したのでしょうね」

「――クロスくんは完全に遊んでることでいいのかな?」

「いいでしょうね」


 呆れるカレンとベルを余所に、カウンター技対ブレイク系技の決着は着く。

 しばらくは張り合っていた矢はバチン! という音ともに弾かれる。そして、大剣から発される衝撃波。

 クロスは為す術もなくその衝撃波を受けて、大きく体を仰け反らす。

 レイは技の流れからクロスに近寄り、真上からクロスに向かって大剣を思いっきり振り下ろす。今までの怨みを込めた一撃を放とうとしてるのか、


「うおおおおお! 死ねえええええ!」


 とレイの咆哮も周囲に響く。


「クロスくん!」


 設定されたダメージ以上は食らわないことはカレンにも分かっていたが、レイの雰囲気に飲まれてしまったのか、クロスの名を呼んでしまう。


「あっ! レイさん! それ、罠です!」


 今頃になって気付いたスレイがレイに向かって叫ぶが、それはすでに遅く、クロスに一撃を放った後だった。

 ギューンと下がり、緑からオレンジに変わるクロスのHP。

 半分以上あったHPが一気に減ってしまったのは、クロスのステータス配分が防御よりも回避力の方に大きくあてがっていたせいだった。

 それとほぼ同じタイミングにレイの背後に襲いかかる五本の矢。

 スレイの言葉から何かを察して回避しようとするレイだったが、クロスの狙った通りの個所――両手足と背中に着弾する。


 ――狙い通り!


 クロスが最初に撃ったのは射撃専用の技【ホーミング・ショット】。本来の使い方は逃げる敵や回避力が高い相手に絶対に直撃させる技であったが、アミに着弾時間を調整してもらうことで反撃に使ったのである。


「あ、あんな使い方あったんだ……」


 同じ刃弓を使うカレンはクロスの使い方に関してしまい、拍手してしまっていた。

 お互いの攻撃を食らって怯んでいるクロスとレイ。

 先に攻撃を食らった分だけ立ち直りの早かったクロスが再びMPを消費して技を発動させる。本来は突進系の技なのだが、レイとの距離が短いせいで体当たりというよりは当て身に近い感じで肩を接触、その流れのまま刃の部分でレイを容赦なく十連続の斬撃を与える。

 【ライト・ブルーム】――本来は片手剣だけ使える技なのだが、派生武器である刃弓は弓と片手剣の両方技が使えるメリットがある。そのメリットが一匹狼であるクロスにはかなり使えるため、わざわざ面倒な武器のレベル上げをしまくっているのだ。

 防御力を高めているレイもさすがにこの連続攻撃に耐えきれなかったのか、HPも緑から赤まで減少していた。

 が、手を緩める様子を一切見せようとしないクロスは、


「アミ、大剣!」


 と、声を張り上げる。

 その要望に応えるようにアミは電子キーボードを操作すると、クロスの持っている刃弓と矢筒が消え去り、ブゥン! という音ともにクロスが持ちやすい位置に大剣が現れる。

 それを掴むと残ったMPを全部消費して、地面に思いっきり突き刺す。

 さっきレイが技を発動した際に予想した攻防一体の技――【バースト・ウォール】。クロスを中心に360度に爆発が発生し、連続斬りの影響で地面に倒れ込もうとしていたレイをそのまま吹き飛ばす。

 まともにくらったレイはそのまま地面に一回バウンドして、そのまま地面に倒れ込むとピクリとも動かなくなる。

 そして、クロスの目の前に決闘の勝敗が着いたことを知らせるように、〈WIN!〉と書かれた電子画面が表示された。


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