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死神少女の旅日記  作者: 白波
第一章 死神は王都の路地裏にいる
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五話目 本日の獲物は……

 さて、やっとのことでギルドの青年をなんとか巻いた私は、本業の準備に取り掛かっていた。ちなみに麦わら帽子君(勝手に命名)には、今日の売り上げで適当に食材を買ってこいといってある。


 まぁその結果、何もわからずに高級食材を狩ってこようが、ぼったくられて来ようが関係ない。

 私にとってお金というのは、必要最低限あればいいものだからだ。


 そもそも、私がわざわざ副業に旅芸人なんぞを選んだのはただお金がほしいというだけではない。それだけだったら、冒険者をやっていた方が割がいい。


 私が旅芸人……それもたらたらと話すだけなんてことをやっている最大にして最高の理由は本業のほうの獲物を探すためだ。

 たくさん人が集まれば、その中で誰の魂がきれいかなんとなく理解する事ができる。


 皆にはわからないように追尾魔法を獲物にかけてそれをおいながらチャンスをねらう。


 今日の獲物は10代前半ぐらいの町娘といったところだろうか? 見たところ魂は汚れがなくてきれいなのだろうと見受けられた。

 基準はもちろん長年培った勘だ。


「さて、あの子はどこかな」


 私は口笛を吹きながら町を歩く。

 とりあえず、あの子の家を特定して夜になったら、麦わら帽子君を寝かしてお楽しみの時間だ。

 昨日に続いていい獲物の気配に私のテンションはあがりまくっている。


 夕暮れの町は喧噪に包まれ普通にあの子を探すのは難しいだろう。しかし、私のレーダーによれば、どんどんとあの子の下へ近づいているはずだ。

 周りを慎重に見回しながら少女の姿を探す。


 その姿ははたから見れば少々不自然かもしれないが、そんなことをいちいち気に留める人はこの国にはいない。

 他人への無関心。それが、この国の国民性であり、考え方そのものだ。


 それはいかがなものかと思ってしまうが、そうなるまでにはそれなりの歴史があるわけで……と今はこんなことを語っている場合ではない。


 ようやく、(くだん)の少女を発見した。


 彼女はどうやら買い物中のようだ。

 手に持っているカゴからはいくつかの野菜が姿をのぞかせている。


 私は彼女の方へと歩み寄っていき、すぐ横に並ぶ。


「……あなた。夜道には気を付けた方がいいですよ」


 軽くそんなことを(ささや)いた後に転移魔法で私は、その商店の屋根に移動する。


 魔法を使って周りの人に自分の姿が認識できないようにしてから下を覗き込むと、不安そうに周りを見回し始めるのがそこからでも確認できた。


「お客さん? どうしたんだい?」

「いや……なんか今、変な声が聞こえた気がして……」

「変な声? 私は知らないね。それよりもさ、いつも買って行ってくれるからこれも追加しちゃう。持っていきな。まぁ私がここにいるのもあと少しなわけだし」


 少女と女店主の平和な会話をBGMに私は笑顔を隠せないでいた。

 声が出てしまえばせっかくの魔法も台無しなので声が出ないように必死に我慢しながら私はその模様を見守っていた。


「本当にあなたはいい魂を持っているのでしょうね」


 最後にそう言い残すと、私は再び転移魔法を使ってその場から姿を消した。


 その場に残されているのは、不安げな少女と豪快な行商の女性、その他大勢の群衆のみだ。

 私は、満足げに微笑みながら宿へと帰って行った。


「今夜は楽しみね。くっひっひっひっ」


 夜が待ち遠しくてたまらない。

 新しく購入したローブを入れてある袋に一緒に入れてある大鎌に触れながら笑い声をあげた。

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