◆prologue
人生なんてそうそうドラマや小説のように色んな事が次々に訪れたりなんかしない。
今まで二十年生きて来てそう実感していた。
今通っている音大も特待生で入れたのはいいものの、学費の為にバイト漬けでろくに練習もできていなかったせいか特に目立った業績を上げる事なく、普通に就職なんかしちゃって、普通にお嫁に行って、普通に家庭を築いて、ごく自然に人生を終わらせるんだろうな…。
まぁ、幼い頃に両親を亡くして親戚中をたらい回しにされていた私にしては、なかなか悪くないかな。
なんて、彼に出会うまではそんな風に思っていた。
いや、出会った瞬間にはまだ私の考えは変わってはいなかったのだけど。
…とにかく、私は彼に恋をした。
同じ音大で同じクラス、なんの変哲もないようなごく普通の出会いの場。
曲を作る彼に歌う私。
ね?
ちょっと良い出会いでしょう?
まだ想いは伝えられていないけれど、どうにか距離を縮めたい…
少しでも彼の『特別』になりたかった。
ここまでだと音大が舞台の青春ラヴストーリーみたい?
でもね、ちょっと前に書いた文章を読み返してみて。
『彼に出会う前までは日常は平凡だと思っていた』の。
つまりね、『彼と出会って日常が平凡じゃなくなった』って事。
良い意味でも
悪い意味でもね。
だからこそ、声を大にして言おうと思う。
『What time is it?』
今、自分は何してる?
それは本当にやりたい事?
これが私たちのプロローグ。