ヒロインは牢の中――私のせいじゃない
天井から、また水滴が落ちた。
ぴちゃん、と小さな音が響く。
分厚い石壁に囲まれた小さな房は、ひどく湿っていた。壁はじっとりと冷たく、薄い毛布を重ねても足先から冷えてくる。燭台は廊下にしかなく、牢の中まで届く光は頼りない。
アンジェリカは粗末な寝台の上で膝を抱えたまま、ぼんやりと鉄格子の向こうを眺めていた。いったい何日経ったのだろう。5日か、7日か。地下に造られたこの牢には窓がない。
昼も夜も分からず、看守が運んでくる食事だけが時間をはかる手がかりだった。けれど最初は、それすら数えようとしなかった。すぐに迎えが来ると思っていたからだ。
ここへ連れてこられ、背後で重い扉が閉まったとき、アンジェリカは何かの冗談だと思った。自分がこんな仕打ちを受けるなど、あるはずがない。
だって自分は、いつだって大切にされてきたのだ。屋敷では朝になれば侍女がカーテンを開け、顔を洗う湯も着替えも朝食も用意してくれた。髪を梳かしてもらいながら、その日の予定を聞くのが当たり前だった。今日はどのドレスにするか。髪飾りは何を合わせるか。夜会があるなら、どの宝石を着けていくのか。
それがアンジェリカの日常だった。
今は鏡すらない。昔から褒められてきた淡い桃色の長い髪も、愛らしいと評判だった顔も、今どうなっているのか確かめることすらできない。手櫛で髪を整えてはいるものの、ここへ来てから一度も湯浴みをしていない。着せられているのは飾りひとつない灰色の服で、靴まで取り上げられ、代わりに固い革の履物を与えられた。
こんなのは夢だ。
眠って、次に目を開けたときには、いつもの寝室に戻っていればいい。何度そう願っても、次に聞こえてくるのは水滴の音だった。
ここは王宮の地下にある、通常の牢とは隔離された拘禁区画だという。
連れてこられる途中、何枚もの鉄扉を通った。階段を下り、扉を抜け、その先の長い廊下を歩かされ、ようやく辿り着いたのがこの房だった。石壁には一定の間隔で銀色の文字が刻まれている。おそらく魔術を封じるためのものだろう。
隣にも鉄扉は見えるが、人の気配を感じたことは一度もない。聞こえるのは看守の足音と鍵の音。そして、ときおり落ちる水滴だけ。
だからこそ、誰かが来ればすぐに分かった。足音がするたび、アンジェリカは期待した。
父かもしれない。母かもしれない。きっと何かの間違いだったと告げに来たのだ、と。
けれど現れるのは、いつも同じ看守だった。何度も訴えた。父を呼んで。お母さまに知らせて。王太子殿下に会わせて。セドリック殿下を呼んで。
最初は命じていたのが、そのうち頼むようになった。
それでも誰も来ない。
あれほどアンジェリカを可愛がり、欲しいものは何でも与えてくれた父でさえ。
半年前までは、父が変わってしまうなんて考えられなかった。アンジェリカは幼い頃から、自分はいずれ聖女になるのだと言い続けてきた。それを疑ったことは一度もない。父も信じていたのだろう。アンジェリカは特別な娘なのだと笑い、母もことあるごとに「この子はいつか聖女になるのですもの」と誇らしげに口にした。
それなのに。
聖女の力を発現させたのは、異母姉のフローラだった。
あの日の光景は、今も目に焼きついている。フローラ自身、何が起きたのか分からないようだった。少し離れた場所、まばゆい光の中心で、呆然と自分の両手を見つめていた。周囲にいた誰もが息を呑み、やがてざわめきが広がっていった。
聖女の力だ。
誰かがそう口にした。
違う。
そんなはずはない。聖女は自分だ。
何かの間違いだと叫びたかったのに、声が出なかった。
気づけばセドリックがフローラを抱き寄せていた。いつも落ち着いている彼まで驚いた顔をしていた。それでも、何が起きたのか分からず立ち尽くすフローラの肩を抱き、何かを囁いていた。
気づけば泣いていた。
みっともないほど涙が止まらなかった。
なのに。
光を浴びたフローラを、綺麗だと思った。豊かな金色の髪が光を弾き、涙に濡れた深い青の瞳まで輝いて見えた。そして。
自分がそう思ってしまったことが、何より許せなかった。
その後、神殿による確認が行われ、フローラは正式に聖女と認定された。
そして父は変わった。フローラにばかり声をかけはじめた。食事の際には近くに席を置いた。まるで離れてしまった距離を今さら縮めようとでもするようで、アンジェリカから見ても滑稽だった。
母も変わった。よく泣くようになった。
「大丈夫よね、アンジェリカ。あなたも聖女になるのよね?」
何度そう聞かれたことだろう。もちろんよ、とアンジェリカは答え続けた。
だって自分はこの世界のヒロインだ。聖女になるのも、王子たちに愛されるのも、世界を救うのも、本来ならすべて自分のはずだった。
本当ならフローラは悪役令嬢だった。アンジェリカを虐げ、王子たちに断罪され、最後にはすべてを失うはずの人間なのだ。なのに何もかもがおかしくなっている。
最初からずっとおかしいのはセドリックだ。攻略対象なのに、アンジェリカにまるで興味を示さなかった。それどころか、いつの間にかフローラと婚約してしまった。
それでも、まだ大丈夫だと思っていた。
聖女になればいい。
フローラが婚約者でも、自分が聖女になれば話は変わる。国にとってどちらが必要なのかなど、考えるまでもない。セドリックだって、きっと分かってくれる。
だから聖女の力が発現するのを心待ちにしていた。
なのにフローラに現れた。
そんなはずがない。自分にあるはずだった力が、自分にはなくて、フローラにある。
だったら答えは1つしかないではないか。
奪われたのだ。
どうやったのかは分からない。けれど、そうでなければ辻褄が合わない。
アンジェリカはそのことを何度もエドガーたちに話した。彼らは信じてくれた。
王太子エドガーも、宰相の息子も、近衛騎士団長の息子も、ほかの攻略対象も。皆、アンジェリカの話を真剣に聞き、時には憤ってくれ、力になると言ってくれた。
そうでなくては、と思った。でももの足りなかった。
だから自分にもっと好意を持ってもらうために魅了魔法を使った。
思ったほど効果が出なかったから、ゲームで知っていた調合も試した。材料はどれも手に入るものだったし、飲み物に混ぜたところで味もほとんど変わらない。魅了の効果を高めるだけで、毒を盛るわけではない。
実際、彼らに具体的なお願い、ましてや命令したことなど一度もなかった。
事件が起きた日の朝だってそうだ。
学園で顔を合わせたとき、彼らのうちの1人が、ひどく機嫌のいい顔で寄ってきた。
「明日になれば、きっといい報告ができるよ」
「いい報告?」
アンジェリカが首を傾げると、すぐにエドガーがその男を睨んだ。
「おい、言うなよ」
「あ」
「もう。なあに?」
「いや、なんでもない」
エドガーは誤魔化すように笑って、彼らと離れていった。
だから、楽しみにしていた。もしかしたら、例の呪具が見つかったのかもしれない。
聖女の力を封じることのできる呪具。ゲームの中に存在していたそれについて話したことはある。
もしフローラの力を封じることができたなら、本来あるべき場所へ戻るかもしれないとも。
けれど、それだけだ。
フローラを攫えなどとは言っていない。拘束しろとも、無理やり呪具を着けろとも言っていない。
◇
その日の夕刻、フローラは姿を消した。
あとで聞かされた話では、エドガーたちはフローラを学園内の修道室へ連れ込み、拘束したうえで聖女の力を封じる呪具を装着しようとしたらしい。
そこへセドリックたちが踏み込んだ。
呪具が使われる前にフローラは救出され、エドガーたちはその場で拘束された。
そしてアンジェリカまで捕まった。
エドガーたちがアンジェリカの名を口にし、調べれば魅了魔法の痕跡も、精神に作用する薬物の成分も見つかったからだという。アンジェリカの部屋も調べられた。薬草も調合器具も持っていかれた。
何度説明しても、誰も分かってくれなかった。確かに飲み物は作った。魅了魔法も使った。
でもフローラを攫ったのは自分ではない。呪具を用意したのも自分ではない。
それなのに、どうして自分までこんな場所に閉じ込められなければならないのだろう。ちゃんと話せば分かる。少し間違えただけだ。そんなつもりではなかったと伝えれば、きっと何とかなる。
母はきっと泣いているだけだろう。そんな暇があるなら差し入れひとつでも持って来てくれればいいのに。まったく気が利かない。
父だってそうだ。今さらフローラの味方のつもりなのだろうか。
今回の騒ぎがここまで大きくなった理由の1つは、王太子エドガーが深く関わっていたことだ。
エドガーは廃嫡され、代わってセドリックが王太子になるらしい――そんな話を、事情を聞きに来た者たちの会話から知った。
それについては、アンジェリカも少しだけ申し訳ないと思っている。エドガーは自分の話を信じてくれた。フローラに虐げられていると訴えれば憤り、必ず守ると約束してくれた。
だから、こんなことになったのは気の毒だ。ただ、もう少し上手くやってくれるものだとも思っていた。王太子なのだから、フローラ1人をどうにかするくらい、もっと穏便にできたはずだ。ほかの3人だって、アンジェリカを守ると言ったくせに、結局は揃って失敗した。
こんなところに入れられて、迷惑でしかない。最悪だ。
なんなら人に任せたりせず、自分でやればよかった。
◇◇◇
足音がして、アンジェリカは顔を上げた。
1人ではない。複数の靴音が、石造りの廊下に反響している。寝台から飛び降りるように立ち上がり、鉄格子へ駆け寄った。
また看守だけかもしれない。それでも期待せずにはいられなかった。やがて薄暗い廊下の奥に灯りが揺れ、その向こうから濃紺の上着が見えた。
息を呑む。
「セドリック殿下……!」
看守に先導され、2人の男がこちらへ歩いてくる。1人はこの国の第2王子、セドリック・アルヴェイン。銀色の髪はいつもと変わらず整えられ、濃紺の上着には王家を示す銀糸の刺繍が施されている。腰には剣を佩き、背筋を伸ばして歩く姿には、王族として人前に立つ者の隙のなさがあった。
ようやく来てくれた。
胸の奥に溜まっていたものが、一気にほどけていく。
やっぱり。
誰も来てくれなくても、セドリックだけは違ったのだ。
けれど、その半歩後ろに側近のノエル・グランツが付き従っているのが見えて、アンジェリカは舌打ちしそうになった。だってこの男が本当に苦手だから。いつもセドリックのそばに影のように控えている従者だ。見目も整っているし、最初は取り巻きに加えてもいいと思っていたのに、嫌みっぽくことごとく自分の邪魔をする。今日だって、こんなところまでついてくる必要などないのに。
アンジェリカはノエルから目を逸らし、セドリックだけを見た。
「殿下……来てくださったんですね」
声が震えた。
ようやく、自分の話を聞いてくれる人が来た。
しかもセドリックだ。アンジェリカには、どうしても彼に伝えなければならないことがあった。
◇
セドリックは鉄格子の前まで来ると、アンジェリカが手を伸ばしても届かない位置で足を止めた。
その距離が気にはなったが、そんなことを言っている場合ではない。
「話があるそうだな」
「そうなんです。私、どうしても殿下にお伝えしたくて」
「それで?」
思っていたよりも冷たい声だったが、仕方ない。きっとフローラからいろいろと吹き込まれているのだろう。アンジェリカはちらりと周囲を見た。
「その……とても大事な話なんです。できれば、ほかの人には聞かれたくなくて」
セドリックはわずかに眉を寄せ、それから背後の看守たちを振り返った。
「階段口で待っていてくれ」
「しかし、殿下」
「ノエルは残ってくれ。それでいいだろう」
看守たちは不満そうだったが、アンジェリカも不満だった。
だが、セドリックに話を聞いてもらえなければ困る。仕方ない。
看守たちの足音が遠ざかっていく。
階段口の扉が閉じる音を待ってから、セドリックが改めてアンジェリカを見た。
「それで、話とはなんだ」
「あ、そうですよね。私、どうしても伝えたくて」
「だからなんだ」
急かされ、アンジェリカは少しむっとした。せっかくセドリックのためを思って教えてあげようとしているのに。けれど今は我慢する。
「お義姉さまに気をつけてください。絶対に騙されないで」
セドリックの表情が止まった。
「……フローラに?」
アンジェリカは鉄格子を握りしめる。
「お義姉さまは、ずっと私を陥れようとしていました。聖女の力だって、本当なら私のものだったんです。それなのに――」
「そんな話か?」
アンジェリカは口をつぐんだ。
「そんな話って……大事なことです。殿下はこのままじゃ不幸になります」
「なぜ?」
「だって……」
アンジェリカはノエルを見た。相変わらずの無表情だ。
彼には聞かれたくなかったが、ここまで来て黙るわけにはいかない。
「ここはゲームの世界なんです」
静まり返った地下牢に、遠くで落ちた水滴の音が響いた。
セドリックは何も言わない。
いや、言わないのではなく、言えないのだろう。驚きすぎて。
それとも意味が分からないのかもしれない。
当然だ。アンジェリカだって、前世の記憶が戻ったときには信じられなかった。
「私、前世の記憶があるんです。ここは、私が前世で知っていた乙女ゲームの世界なんです」
初めて口にする後ろめたさと高揚感のまま、2人の表情をうかがう。
けれど、何を考えているのかまったく分からない。
「この世界のことも、みんなのことも登場人物として知ってました。あ、ちなみにヒロインは私です」
「オレも出てきた?」
聞き慣れない一人称に、アンジェリカは一瞬言葉を止めたが、すぐに頷く。
「は、はい。殿下も攻略対象の1人です」
「攻略対象」
「そうです。あ、攻略対象って、主人公が好きになる相手って意味で。だから本当なら、殿下は私を好きになるはずだったんです」
言ってしまった。こんな場所なのに胸が高鳴る。顔が赤くなっているのも分かる。本人に話す日が来るなんて思わなかった。でも、これで分かってくれる。
「それなのに、おかしいんです。お義姉さまは本当なら悪役令嬢で、私を虐める人なんです。最後には断罪されるはずなのに、全然そうならなくて。それどころか殿下と婚約して、聖女にまでなって……」
口にしているうちに、また悔しさが込み上げてきた。
「あの人は、そんな人じゃないんです」
「そんな人?」
「今みたいな人じゃありません。本当はもっと意地悪で、嫉妬深くて、私の邪魔ばかりする人なんです」
セドリックの目がわずかに細くなった。
「そんなフローラを見たことがあるのか?」
「ありますよ。ゲームで何回も」
「そうじゃない」
低い声だった。
「現実のフローラの、そんな姿を見たことがあるのかと聞いてる」
「それは……」
アンジェリカは言葉に詰まった。
「こ、これから見るんです。そういうシナリオなんですから」
「なるほど」
セドリックは小さく息を吐いた。
「それで、フローラが聖女になって、自分の力を奪われたと思った?」
「だってそうでしょう?」
やっと通じたと、アンジェリカはほっとした。
「聖女になるのは私だって決まってたのに、お義姉さまに力が出た。だったら、お義姉さまが何かしたとしか考えられないじゃないですか」
「そうか」
「だから殿下も早く離れたほうがいいです。今ならまだ間に合います」
「何に?」
「正しいシナリオに戻るのに」
アンジェリカは身を乗り出す。
「私、分かるんです。これから起こることだって。殿下がどうすれば幸せになれるかも――」
「オレが誰を好きになるかも?」
「私です」
今度こそ、迷わず答えた。
「本当なら、そうなんです」
2人はしばらく見つめあった。
やがてセドリックが視線を外し、後ろに立つノエルに話しかける。
「やっぱり来てみるもんだな」
「ですね」
「想像以上だった」
こんなに長く見つめ合ったのは初めてで。てっきり少しは自分を意識してくれたのだと思ったのに。2人が何の話をしているのか分からない。
「殿下?」
セドリックが再びこちらを向いた。なんだかその顔から先ほどまでの王子らしい硬さが少し消えていた。
「なあ。もしかしてだけど」
口調が変わっている。公の場で聞くような整ったものではない。
「アンタ、ずっとゲーム感覚なの? たとえば、リセットできると思ってるとか」
アンジェリカの呼吸が止まった。
「……え?」
「いや。ゲームなんだろ?」
セドリックが首を傾げる。
「気に入らない展開になったら、最初からやり直せばいいって思ってるのかなって」
「リセット……?」
なぜ、そんな言葉を知っているのだろう。
アンジェリカは鉄格子を握ったまま、セドリックを見つめた。
「殿下、今……」
「ああ」
セドリックはあっさり頷いた。
「フローラが転生者だと思った?」
心臓が跳ねた。考えたことはある。何度も。ゲームとはあまりにも違うフローラを見て、もしかしたら彼女も前世を知っているのではないかと疑った。
「……そうなんですか?」
「ハズレ。オレが転生者」
意味を理解するまで、少し時間がかかった。
「正確には、前世でそのゲームを知ってたってだけ。オレ自身はやってない」
セドリックは肩をすくめた。
「姉貴がハマっててさ。横で散々聞かされた」
「じゃあ……知ってたの? 私がヒロインだってことも、お義姉さまが悪役令嬢だってことも」
「まあ、大体は」
「だったら!」
声が牢内に響いた。アンジェリカは鉄格子へ詰め寄った。
「おかしいじゃない! 知ってたなら、どうしてシナリオ通りにしないのよ」
セドリックが目を瞬いた。本当に意味が分からないという顔だった。
「え、だってそれはそれだろ。実際に生きてんのはオレだし」
あまりにも簡単に言われて、アンジェリカは言葉を失った。
「じゃあ……フローラお義姉さまは?」
「何も知らないよ」
「嘘! 私の知ってるフローラとは全然キャラが違うわ!」
セドリックは首を傾げてから、少し誇らしげに笑った。
「まあ、強いて言うなら、オレに愛されたから?」
後ろでノエルが片手で額を押さえた。
「……殿下」
「事実だろ?」
セドリックは振り向きもせず、悪びれもしない。
「フローラはただ、真面目で、誠実で、自分より他人のことばっかり考えてるようなお人よしだよ。ゲームのキャラはどうあれ、オレが知ってる彼女はずっとああだった」
「そんな……」
「それに」
セドリックの笑みが消えた。
「ヒロインってだけで、何やっても許されるとでも思ってる?」
「何って……」
「フローラについて吹き込んだこと。魅了魔法。薬。この事件に至るまでの全部」
「私は攫えだなんて言ってない!」
「知ってるよ」
即答され、アンジェリカは息を詰めた。
「兄上たちもそう証言してる。フローラを連れ出すことも、拘束することも、呪具を使うことも、自分たちで決めたって」
「だったら!」
「でも、その兄上たちに魅了をかけたのは?」
「……それは」
「自分で作った薬を混ぜた紅茶を飲ませた。何度も」
「あれは毒じゃない!」
「そういう話してないんだけど」
セドリックの声に怒気はなかった。それがかえって怖かった。
「みんなが好意を持つように魔法をかけて、その効果を強めるものまで何度も摂らせた。その状態の人間に、フローラが自分を虐めてる、本当の聖女は自分だ、力を奪われたって話し続けた」
「だって、本当のことだもの」
「まだ言うんだ」
セドリックが呆れたように、ため息交じりの笑いを漏らした。
「私が何もしなかったら、シナリオはもっとおかしくなってた。私は戻そうとしただけよ」
「何を?」
「あるべき形に」
「自分にとっての?」
アンジェリカは答えなかった。
「フローラは兄上たちの減刑を願ってる」
「……え?」
「私は無事だったのだから、と。魅了魔法の影響もあったのだから、どうか酌量してほしいって」
アンジェリカは眉を寄せた。
まただ。またそうやって、いい人のふりをする。
「お義姉さまは、そういうふうに殿下を騙して――」
「もういい」
静かな声だった。
「私、あなたが一番好きだったのよ!」
思わず叫んでいた。
「何だって知ってる! 好きなものも、苦手なものも全部。あなたが好きだったから!」
「へえ」
「なんで見向きもしてくれなかったの? 絶対あなたを幸せにしてあげるのに!」
「やだよ、冗談じゃない」
「…………え?」
あまりに軽く返されて、頭が真っ白になった。
「聞かれたから言うけどさ」
セドリックは鉄格子越しにアンジェリカを見る。
「どんな子かとは思ったよ?ヒロインだし。でも実際に会って衝撃だった。失敗は誰かのせい。欲しいものは自分のものになると思ってる。人の話は聞かない。都合の悪いことは認めない。自分が正しいと疑わない。人に対して感謝も敬意もない」
アンジェリカを見つめながら、わずかに首を傾げた。
「絶対ムリ」
ぴちゃん。
どこかで水滴が落ちた。
「フローラがさ」
その名前を聞いただけで胸がざわつく。
「ひどい扱いを受けていないか心配してた」
「……私を?」
「そう。だから見に来たってのもある」
アンジェリカには理解できなかった。自分は聖女の力を取り戻そうとした。そのためにエドガーたちがフローラを攫った。それなのに、なぜ自分の心配などするのだろう。
「それと、オレ自身、勝手な思い込みがあるかもしれないから、一度ちゃんと話しておこうと思ったんだ」
セドリックはわずかに崩れていた姿勢を正すと、襟元に指をかけ、軽く前へ引いた。
「フローラを傷つけようとしたこと。兄上たちを巻き込んだこと。それを君がどう思ってるのか、ちゃんと聞いておきたかった。謝るのか、心配するのか。それとも、少しは自分のしたことを悔やんでいるのか」
口調が戻った。顔つきもだ。目の前にいるのは、第2王子セドリックだった。
「君の口から、どれも聞けなかったことは残念だ」
アンジェリカの脳裏に、先ほど考えていたことが浮かんだ。
エドガーが、もっと上手くやってくれればよかったのにと思ったこと。
こんなことになるのなら、自分でやればよかったと思ったこと。
その胸の内まで、見透かされたような気がした。
「来てよかった。これで割り切れる」
もう興味をなくしたように、セドリックはノエルを振り返った。
「行こうか」
「はい」
「待って」
セドリックが足を止めたが、振り返りはしなかった。
「私……どうなるの?」
「さあ。まあ、極刑にはならないとも言い切れない、かな」
ざあっと血の気が引いた。
「待ってよ」
声が震える。
「嘘でしょ。おかしいよ。私は……」
ヒロインなのに。その言葉だけは、声にならなかった。
セドリックはアンジェリカを見た。
ほんのわずかに、口元が歪む。
「リセットボタンが見つかるといいね」
今度こそセドリックは背を向けた。ノエルも続く。
アンジェリカは鉄格子を掴んだ。
「待って! セドリック殿下!」
足音は遠ざかっていった。
「待ってよ!」
返事はない。
やがて階段口の扉が開き、閉じた。
再び静寂が戻ってくる。
アンジェリカは鉄格子を握ったまま、動けなかった。
極刑。
そんなはずはない。だって、自分は誰も殺していない。フローラだって無事なのだ。それなのに。
力が抜け、アンジェリカはその場に座り込んだ。
リセットボタン。
本当にあるのだろうか。
いや、あるはずだ。
だって自分はヒロインなのだ。
ぴちゃん。
天井から、また水滴が落ちた。
◇◇◇
前世の記憶が戻ったのは、6歳の頃だった。
最初はただの偶然だと思いたかった。けれどセドリック・アルヴェインという自分の名前と、兄エドガーの名前を前世の記憶と照らし合わせて、嫌な予感がした。
前世で姉が夢中になっていたゲームに、同じ名前の王子たちがいたからだ。
しかも自分は攻略対象。
かなり萎えた。
セドリック自身は、そのゲームを遊んだことがない。姉が居間で遊んでいるのを横から眺めたり、夕食の席で攻略の進捗を延々と聞かされたりしていただけだ。それでも主要な登場人物くらいは覚えていた。
王太子エドガー。第2王子セドリック。そして、ヒロインであるアンジェリカの前に立ちはだかる悪役令嬢、フローラ。
実際にその名前を聞いたのは、記憶が戻ってから1年ほど経った頃だった。
「フローラ嬢に、ご挨拶を」
そう促されて顔を上げた。陽の光を弾く金色の髪。幼いながらもくっきりと整った顔立ち。緊張したように伏せられていた深い青の瞳が、恐る恐るこちらを向いた。可愛い子だと思った。
挨拶を終え、一緒に庭園を歩いていたときだ。池のほうから突然、甲高い鳴き声が聞こえた。見ると、猫が1匹、水の中でもがいていた。
「あっ」
セドリックが動くより早く、フローラが駆け出した。
「え?」
止める間もなく、そのまま池へ飛び込み、必死に腕を伸ばして猫を抱き上げる。駆けつけた大人たちに引き上げられたときには、ドレスも髪もびしょ濡れだった。助けられた猫は恩知らずにもフローラの腕から逃げ出し、そのまま植え込みの向こうへ消えていった。
残されたフローラは、頭から水を滴らせながらその背中を見送った。
「逃げちゃいましたね」
恥ずかしそうに、それでもほっとしたように笑う。
「でも、よかった」
その笑顔に、心を撃ち抜かれてしまった。
――いやいやいや。
セドリックは慌てて自分を戒めた。この子はフローラだ。悪役令嬢だ。いずれヒロインを目の敵にし、散々嫌がらせをした挙句、断罪される悪役令嬢。姉から聞かされた話では、相当に面倒な女だったはずだ。けれど目の前にいる少女は、その言葉からはあまりにも遠かった。
「何をしている!」
鋭い声が飛んだ。振り向くと、フローラの父親が険しい顔でこちらへ向かってくる。
「王子殿下の御前で、なんというみっともない真似を!」
フローラの肩がびくりと揺れた。
「申し訳ございません、お父さま」
「すぐに着替えてきなさい。まったく、お前は――」
お前のほうがみっともない。セドリックはそう思った。
溺れている猫を助けた7歳の娘に、最初にかける言葉がそれなのか。
「本日は失礼いたしました。お会いいただき、ありがとうございます」
着替えを済ませたフローラは、帰り際、改めてセドリックに頭を下げた。先ほど叱られたせいだろう。少し怯えたような顔をしている。それでも、王子を前に失礼がないよう懸命に背筋を伸ばしていた。
その姿を見ていて、ふと思い出した。そうか。この時期だったのか。
フローラは少し前に、母親を亡くしたばかりだった。そして幼い娘を残して妻を亡くした父親は、ほどなくして別の女性を屋敷へ迎えることになる。その女性には娘がいる。フローラと、そう年の変わらない少女アンジェリカ。その名前まで思い出した瞬間、セドリックは笑えなくなった。
ゲームのヒロインだ。
前世の姉が話していた。フローラは母を亡くしたあと、父親が迎え入れた女性とその娘に、少しずつ居場所を奪われていく。父親の関心は、新しい妻とアンジェリカへ向かう。それでもフローラは家族になろうとした。新しい母親にも、妹にも嫌われないように。不満を口にせず、我慢して、譲って。そうして長い時間をかけて積もったものが、やがてヒロインへの、世界への憎悪へ変わる。
ゲームではそれが悪役令嬢フローラの背景として語られていた。
前世では、大して気にも留めなかった。所詮ゲームの設定だったからだ。けれど今、目の前にいるのは、これからその人生を歩く7歳の子供だった。まだ何もしていない。誰も憎んでいない。母親を亡くしたばかりで、溺れている猫を見れば後先も考えず池に飛び込むような子だ。
「……殿下?」
黙り込んだセドリックを、不安そうにフローラが見上げた。
「いや」
セドリックは慌てて笑った。
「ごめん。ちょっと考え事してた」
「そう、ですか」
ほっとしたように、ほんの少しだけ肩から力が抜ける。その様子を見ながら、セドリックは思った。
この子は悪役令嬢なんかじゃない。でも。この子はこれから、そうなるほど追い詰められるのだ。
だったら。
オレが守ればいい。
シナリオを変えようとか、悪役令嬢を更生させようとか、そんな大層なことを考えたわけではない。
ただ、この子が泣かなくて済むようにしたかった。
それからセドリックは、何かにつけてフローラのもとへ顔を出すようになった。
新しい母親とアンジェリカが屋敷へ入ったあとも、フローラが「大丈夫です」と笑うたび、その言葉を鵜呑みにはしなかった。贈り物をすれば、なぜかアンジェリカの物になっていた。父親は「妹なのだから」とフローラに譲らせるらしい。そんなことが何度か続いてから、セドリックは物を贈ること自体をやめた。
代わりに、フローラを王宮へ招いた。
庭園を歩いたり、一緒に菓子を食べたり、本を読んだりする時間なら、誰にも取り上げられない。
自分の客として王宮にいる間なら、誰も彼女を粗末には扱えなかった。
困ったことがあれば知らせろと言っても、フローラはなかなか言わなかった。だから彼女の側仕えとも話すようになった。もちろんセドリックがすべてを防げたわけではない。知らないところで傷つけられたこともある。あとから知って、もっと早く気づけばよかったと思ったことも何度もあった。
それでもフローラには、少なくとも1人、自分の味方がいると思ってほしかった。
嫌だったと言っていい。
悲しかったと言っていい。
譲りたくないものは、譲らなくていい。
そんな当たり前のことを、セドリックは何度も伝えた。いつしかフローラは、以前よりよく笑うようになった。その笑顔を見るたびに嬉しくなった。次は何を話そう、どこへ連れていこう。そんなことを考える時間が増えていった。気づけば、心配だから会いに行くのか、会いたいから理由を探しているのか、自分でもよく分からなくなっていた。
ゲームのシナリオなど、とっくにどうでもよくなっていた。
だからフローラとの婚約を望んだ。
周囲から見れば、少し早い話だったのかもしれない。
それでも、幼い頃から交流を重ねてきた公爵令嬢と第2王子なら、不自然というほどではない。何より、正式に婚約者となれば、セドリックは今まで以上に堂々とフローラを守れる。
そこまで考えて、セドリックは自分でおかしくなった。
守る、か。
もうフローラは、守らなければ悪役令嬢になってしまうような少女ではなかった。誰かを虐げるどころか、自分が傷つけられても相手を気遣ってしまうような人だ。
それでも守りたいと思う。いや、それだけではない。守ろうとそばにいたはずなのに、いつの間にか、あの穏やかさや優しさに救われているのは自分のほうだった。何より離したくなかった。
ほかの誰かに目を向けられる前に、自分のそばに彼女を囲いたかっただけだ。
フローラは最初、戸惑っていた。
「私でよろしいのですか?」
「フローラがいい」
そう答えると、彼女はしばらく黙っていたが、少しだけ頬を赤くして頷いた。それで十分だった。
アンジェリカがその婚約をどう思っていたのか、当時のセドリックは知らない。彼女とは学園で顔を合わせる程度だった。
ゲームのヒロイン。そう知ってはいた。
けれど、それだけだ。
自分が彼女を好きになる予定だったとしても、現実のセドリックには何の関係もなかった。むしろ、彼女の周囲に男たちが集まり始めた頃から、少し距離を置くようになった。
兄エドガーも、その1人だった。兄弟仲は悪くなかった。エドガーは正義感が強く、困っている者を放っておけない性格だった。アンジェリカから「フローラに虐げられている」と聞けば、本気で憤った。セドリックは何度か、兄にそれとなく話したことがある。自分の知るフローラはそんな人間ではない、と。
だがエドガーは、アンジェリカが嘘をついているとも思えないと言った。その頃には、すでに魅了が始まっていたのだろう。今になれば分かる。だが当時は、そこまで考えなかった。
ゲームでもエドガーはヒロインに惹かれるはずだった。だから、兄がアンジェリカに入れ込んでいることに違和感を覚えながらも、どこかで「そういうものなのか」と流してしまった。それは、今でも悔やんでいる。
◇
そして半年前。
ゲームについて知っているつもりだったセドリック自身も、言葉を失う出来事が起きた。
フローラに、聖女の力が発現したのだ。その場にセドリックもいたが、何が起きたのか理解できなかった。ゲームで聖女になるのはアンジェリカだったはずだ。姉から何度も聞かされていた。
なのに、目の前で光に包まれているのはフローラだった。周囲が騒然とする中、本人だけが呆然としていた。自分の手を見つめ、何が起きたのか分からないという顔で立ち尽くしている。
セドリックも驚いたが、フローラの顔を見た瞬間どうでもよくなった。
怯える彼女のそばへ行って、肩を抱き寄せた。
「大丈夫」
フローラが顔を上げた。
「セドリック……」
「オレがいるから」
強張っていた身体から力が抜けた。
神殿の確認を経て、フローラは正式に聖女と認められた。シナリオは完全に変わった。けれどセドリックには、それが悪いことだとは思えなかった。誰が聖女だろうと、フローラはフローラだ。
ただ、アンジェリカにとっては違ったのだろう。彼女の言動は、目に見えておかしくなっていった。フローラが自分の力を奪った。本当の聖女は自分だ。何度もそう訴えたらしく、エドガーたちは、それを信じた。
セドリックがもっと早く異常に気づいていれば。兄がただ恋に浮かされているだけではないと疑っていれば。事件は防げたのかもしれない。
◇
あの日。
フローラは約束の時間になっても姿を見せなかった。最初は何か用事が長引いているのだと思った。
だが側仕えに確認すると、泊まりがけで出かける予定など聞いていないという。一方、家には「友人のところへ泊まる」と伝わっていた。
フローラが、そんな食い違いを放置するとは思えなかった。
嫌な予感がした。
最後に姿を見た者を探し、学園内を調べた。そして辿り着いた修道室で見た光景を、セドリックはおそらく一生忘れない。
拘束されたフローラ。
手首には縄が食い込み、その前にはエドガーたちがいた。彼らは本気で、自分たちが正しいことをしていると思っていた。本当の聖女はアンジェリカだ。フローラが奪った力を返させる。そのために必要なのだと。呪具は使われる前だった。
間に合った。
それだけは、本当によかった。
けれど、拘束を解いたフローラの手首に残る縄の痕を見たときは、やるべきことが山ほどあるというのに、殴りかからないよう自分を抑えるので精いっぱいだった。
エドガーたちは拘束され、調べが進んだ。そこで初めて、魅了魔法と薬物の影響が明らかになった。
兄たちは何をしたのか覚えていた。記憶がないわけではない。ただ、なぜ自分たちがあれほどアンジェリカの言葉を疑わず、あの行為を正しいと思えたのか。
それが分からない、と泣き崩れたという。
エドガーの廃嫡は避けられなかった。
どれほど外的な影響があったとしても、王太子としての立場は別の問題だった。そして次の王太子として名前が挙がったのが、セドリックだった。望んでいた地位ではない。兄を押しのけたかったわけでもない。それでも、引き受けるしかないのだろう。
◇◇◇
地下牢から戻った頃には、午後の陽もかなり傾いていた。セドリックは王宮の居住区へ向かった。報告しなければならないことも、目を通さなければならない書類も残っている。
その前に、どうしても顔を見ておきたかった。
フローラが滞在している部屋の前には護衛が立っていた。
セドリックを見ると一礼し、扉を開ける。中へ入ると、窓辺の長椅子に腰掛けていたフローラが顔を上げた。膝の上には読みかけの本がある。
豊かな金色の髪が、傾いた陽を受けて鮮やかに輝いていた。深い青の瞳に、くっきりと整った顔立ち。深緑のドレスも相まって、黙っていればどこか近寄りがたいほどの美貌だ。
けれどセドリックを認めた途端、その表情が柔らかくほどけた。
「おかえりなさい」
その一言で、地下牢から持ち帰ってきたものが少しだけ軽くなった気がした。
「ただいま」
セドリックは彼女の隣へ腰を下ろした。
無意識にフローラの手首へ目がいく。もう、ほとんど痕は残っていない。
それでもフローラは気づいたらしい。
「もう平気よ?」
「知ってる」
フローラは証明するように、両手首をくるりと回してみせた。その仕草がおかしくて、少し笑った。それから、その身体を抱き寄せる。フローラはただ静かに受け止め、セドリックの背に腕を回した。
「なんか疲れちゃってさ」
「お疲れさま」
背中をゆっくり撫でられる。
初めて会ったあの日、この子を守ろうと決めた。その気持ちは、今も少しも変わっていない。
ただいつの間にか、それだけではなくなっていた。守っているつもりだった自分もまた、こうして何度もフローラの温かさに救われてきた。
「アンジェリカは……どうだった?」
少し考えてから答える。
「少なくとも、ひどい扱いは受けてない」
「そう……」
フローラはほっとしたようだが、それ以上なにも聞かなかった。
そしてセドリック自身、詳しく話すつもりもなかった。
「無理はしないでね」
「大丈夫」
「それは無理をする人の言い方」
セドリックは笑った。
筋書きなんてどうでもよかった。
悪役令嬢になるはずだった少女は、ならなかった。
攻略対象だったはずの自分も、決められたヒロインを愛することはなかった。
ゲームの中でどうなるはずだったかなんて、もう何の意味もない。
あの日、池へ飛び込んだ少女に惹かれた。泣かせたくないと思った。
そばにいるうちに、離したくなくなった。それだけのことだった。
セドリックは名残惜しく思いながら、フローラから身体を離した。
「顔見て安心したから、また行ってくる」
「はい。いってらっしゃい」
フローラの笑顔をもう一度見てから、セドリックは扉を開けた。
まだ、やるべきことは山ほど残っている。
それでも足取りは、ここへ来たときより少し軽かった。
本作のもとになったショート動画です。
よろしければご覧ください。
YouTube
『ヒロインだったはずの私がどうして?』
https://youtube.com/shorts/aQ_LWowLiM8?feature=share
TikTok
『バグ』
https://www.tiktok.com/@rokemaro/video/7515754138228083975




