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第8話:もはや魔王城?〜伝説の建築士によるスローライフ村の誕生〜

朝食時。 俺は魔虫の骨髄からとった出汁で作った濃厚なスープに、ふかふかのトーストを浸しながらふと思った。


「急に大所帯になったし、一つのリビングでみんな一緒に寝起きするのも手狭だよね。バッカスお爺ちゃんとセリアちゃんの、二人の専用の家(離れ)を作ろうか」


その瞬間。 優雅にスープを飲んでいたセリアと、前日からずっとエールを飲み続けているバッカスが、同時にむせて激しく咳き込んだ。


バッカス「げほっ! め、滅相もない! 我々のような単なる居候の分際で、庭の隅の泥にまみれたテントで十分でございます!」


セリア「そ、そうです! レオン様の同じ屋根の下の、しかもふかふかで極上のシーツが敷かれた客間を使わせていただけるだけでこれ以上ない天国なのに……」


「専用の家だなんて、罰が当たります!」


「いやいや、いくら仲が良くてもプライベート空間は大事だって。息が詰まるでしょう?」


俺は必死に遠慮する二人の懇願を、ただの「控えめな同居人の気遣い」だと受け取り。 久々の大掛かりなDIY魂に火をつけて庭へと飛び出した。


「まずはセリアちゃんは女の子だし、セキュリティと可愛さを一番に重視しよう。防犯は完璧にしなきゃね」


俺は大地の土に両手をつき、スキル【錬金建築】をフル稼働させた。


デスバレーの大地のマナを根こそぎ吸い上げ、さらに俺自身の無限に湧き出る魔力を凄まじい勢いで注ぎ込む。


空間がグニャリと歪み、数十の巨大な魔法陣が幾重にも展開され。 数秒で白亜の洋館がドゴォォン! と巨大な音を立てて地面から生え上がった。


建材のベースは、俺が昨日裏庭の石ころをただの暇つぶしに錬金変換して作った『純ミスリル鋼』だ。


通常、ミスリルといえば、国境で血みどろの戦争が起きるほどの超希少金属である。 国宝級の宝飾品にわずか数グラム混ぜられるためだけに取引されるような代物だ。


もちろん純度100%のミスリルなど歴史上存在すらしない。 それで家を一軒丸ごと建てるなど、狂気の沙汰を通り越して世界経済へのテロ行為だった。


さらに周囲の庭には、強固な結界を二重に敷いた。 【絶対拒絶(指定外の悪意ある生物は、防壁に触れた瞬間に細胞レベルで消し飛ぶ)】という代物だ。


中にはお城の豪華な王室寝室にあるような、最高級シルクの天蓋付きベッドや広々としたクローゼットを設置した。


「ど、どうかな? 結構可愛くできたと思うんだけど」


光り輝く白亜の洋館を見せた瞬間。 セリアは「こ、これは古代の教典に登場する聖女様が住む神殿では……?」とへなへなと崩れ落ち、再び滂沱の涙を流して地面にひれ伏した。


「次はバッカスのお爺ちゃんだ。酒飲みだし、なにより伝説の鍛冶職人だから、火を使っても安全で大きめの工房を作ろう」


俺はサクッと家の裏手の地下百メートルまで、空間魔法で一気に土をくり抜いた。


さらに地殻を貫通させ、地下深くのマグマ溜まりから直接膨大な熱を引いた『無限炉』。 そして、純オリハルコン製の大質量を誇る巨大金床を備えた、核シェルター並みに強固な要塞級の地下工房を作り上げた。


「地下室だからちょっと薄暗いけど……換気は完璧だし、炉の火加減は魔力で自動調節されるから使いやすいはずだよ。好きに叩いてね」


それを見たバッカスは、膝をついて白目を剥いていた。 不精髭がわなわなと震えている。


「マ、マグマ熱を自在に操る無限炉じゃと……!?」


「古代のドワーフ王が国家予算を使い果たし、何千人もの火術士の命を犠牲にして挑み、それでも完成しなかったという神話の炉が、たった数秒で……!」


彼はそのまま口から白い泡を吹き、「我が鍛冶人生に悔いなし」と呟いて倒れ込んだ。


これで三つの巨大建造物が並び立ち、「村」と十分に呼べる壮観な景観ができあがった。


「よし、これで立派な離れも完成。快適な村ができたな」


俺は満足して額の汗を拭った。


セリアとバッカスは、俺が「村」と呼ぶその『魔王城よりも強固な神の要塞市街』を見上げて、完全に魂が抜けたように絶句していた。


一方その頃。


俺がこれらの一連のDIYの過程で無自覚に垂れ流した異常なマナの変化。 そして、連続する神話級建築の凄まじい気配は、ついに神聖ロザリア王国の観測網の限界を完全に突破していた。


王都の星見の塔で、日夜大陸中のマナの流れを観測をしていた最高位の大魔導士たちは。 観測用の巨大な水晶玉が一瞬で粉々に砕け散るのを見て、顔を青ざめさせ床に這いつくばった。


「ば、馬鹿な……辺境のデスバレーに、魔王以上の絶対悪が誕生したとでも言うのか! このマナの奔流はなんだ!」


「急げ! すぐに極秘の調査本部を立ち上げ、精鋭の調査隊を派遣せよ! 世界が終わるぞ!!」


俺がのんびりとスローライフをエンジョイしている間に、不穏な影がこちらに向かって出発したとは知る由もなかった。 王国の極秘調査隊が、決死の覚悟で動き出したのである。

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