第5話:時間加速の無駄遣い〜神酒ソーマと伝説の酒飲みおっさんの襲来〜
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5話投稿目指して頑張っていこうと思っているので
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セリアが『自動追尾ボウガン(自律広域殲滅兵器)』で、大量の高級肉を嬉々として調達してくれた翌日。
中庭のベンチで、俺はこれからの食生活について大いに悩んでいた。
「うーん……美味しい肉には、美味しい酒が必要不可欠だ」
王宮でのドサクサで飲んだ騎士団支給のワインも悪くなかったが、あれは味が薄かった。
俺だけのスローライフ、せっかくならもっとパンチの効いた酒が飲みたい。
俺のつぶやきを聞いたセリアが、犬の耳をパタパタさせながら首を傾げた。
「お酒ですか? でもデスバレーには葡萄などの果物も、麦もありませんが……」
「いや、大丈夫だ。デスバレー固有の『マナの実』を使えばいい」
「マナの実!? だ、だめです! あれは猛毒が含まれていて、齧っただけで人間サイズの生物なら血を吐いて死にますよ!」
「問題ない。毒素だけ抜いて旨味成分に変換するし、神聖水と混ぜれば即座に熟成した最高のお酒ができるはずだ」
「毒を、旨味に? 即座に……熟成……?」
セリアの頭の上に疑問符がたくさん浮かんだが、俺はさっそくDIYに取り掛かった。
「よっと」
スキル【等価交換(錬金)】を発動させ、庭の端っこに魔石とミスリルを組み合わせた巨大な「魔導発酵タンク」をニョキニョキと地面から出現させる。
そして、セリアが拾ってきてくれた猛毒のマナの実をタンクの口へ放り込んだ。
一般的な国のお抱え錬金術師たちが標榜する術式は、「鉄を硬くする」や「不純物を取り除く」といった、あくまで物質的な変化に留まる。
だが、俺の【錬金術】は少しばかりお節介だ。 大気中のマナを勝手に吸い上げる俺の魔法は、物質の『概念』そのものに干渉し再構築してしまう。
つまり、マナの実から「毒という生命を脅かす概念」を切り離し、フルーツのような強烈な「旨味成分」だけに再定義してしまうのだ。
そこへ地下深くの岩盤を濾過して引き上げた、純度百パーセントの神聖水をドバドバとタンクに混ぜ合わせる。 飲むだけで病が治る水だが、ここではただの水代わりだ。
「よし、あとは熟成だな」
俺は仕上げにタンクの側面に手を触れ、【時間加速】のエンチャントを付与する。
この【時間加速】も厄介な魔法だ。
本来なら、数年〜数十年かかる発酵と熟成のプロセスが、魔法の力でわずか数十秒へと短縮される。
もしこの技術が王国の魔導軍で使われれば、致命傷を負った兵士の細胞治癒を一瞬で進めたり、あるいは新兵の肉体育成をチート化させる等、いくらでも国家を転覆させる使い道があるだろう。
だが、俺の中では「酒造りを待てないから時短する」という、カップ麺の三分を待たない程度の感覚でしかなかった。
「よし、完成だ!」
数メートルのパイプからグラスに注いだのは、琥珀色に輝き、黄金の細かい泡を立てるエール液だった。
早速一口飲んでみる。
「くぅ〜っ! キンキンに冷えてて最高! ガツンと来るアルコール感と、フルーティーな香りが両立してる。まさに悪魔殺しって感じだな!」
俺の横で、かつてない芳醇な香りに釣られてよだれを垂らすセリア。
「ちょっとだけ飲む?」とコップを差し出すと、彼女は恐縮しながらも嬉しそうに一口だけすすった。
その瞬間。
「あ、あふはぁ……」
セリアはあまりの美味しさと、酒に溶け込んだ強烈なマナの奔流に、文字通り背中に光の羽が生えたような幻覚を見たようで。 トロンと軽く白目を剥いてその場に気絶してしまった。
「おっと。少しアルコール強すぎたか」
▽ ▽ ▽
その日の夜。
アルコールでノックアウトされたセリアをベッドに寝かしつけ、俺は一人で庭の露天風呂に入りながら晩酌を楽しんでいた。
本当に最高のスローライフだ。
と、その時。 家の結界の外――デスバレーの荒野から、ドスドスと重い足音が近づいてくるのが聞こえた。
俺はグラスを置いて目を細める。
魔物ではない。
その足音の主は、家を守る光の結界の壁にピタリと張り付き、限界まで鼻水を垂らしながら中を覗き込んでいる、ずんぐりむっくりとした小太りの男だった。
「た、頼む……その神酒の匂いを嗅がせてくれぇぇ……。一目でいい、そいつは神の領域の酒じゃ……」
結界に顔を押し付け、情けない声を上げる老ドワーフ。
しかし、彼を知る者がこの場にいれば腰を抜かしていただろう。
この鼻水まみれの酔っ払いの正体は、かつて人間の国王が直々に頭を下げて国宝の聖剣の作成を依頼したという、ドワーフの王族階級の長。
酒の匂いだけで、Aランク魔物が巣食うデスバレーを強引に横断してきた、伝説の鍛冶師バッカスその人であった。




