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第45話:全世界連結計画〜スローライフ大同盟発足、お祝いは巨大ポップコーンで〜

新大陸最強の覇王ギルガメスが、アカデミーの門を叩いて一週間。 もはや、この世界にレオンに敵対する勢力は、どこを探しても存在しなかった。


鉄道は大陸の隅々まで銀色の脈動を走らせ……。 ユグドラ・ネットは全次元の住人の声をリアルタイムで繋ぎ。 海洋は巨大な抱き枕と温泉で満たされている。


人々はもはや、昨日の空腹や、明日の理不尽な戦争に怯える必要はなかった。 デスバレーから始まった「お改善」の波は。 世界という巨大なシステムそのものを、優しく、そして極めて効率的に書き換えてしまったのだ。


「……さて、レオン様。準備は整いましたわ」


セリアが、完璧に整備されたデスバレーの中央広場を見渡して、深く頷いた。


そこには、かつて世界を震撼させた『魔界の女王』リリス。 『新大陸の覇王』ギルガメス。 『元・伝説の勇者』アレクサンド。


そして『天界の知恵袋』と呼ばれる老賢者ゼノン。


かつては一堂に会するだけで次元が崩壊しかねなかった伝説級の面々が。 今は互いにお勧めのカレーのトッピングについて談笑しながら、レオンの登場を待っている。


「レオン様。我々は本日、貴様を中心に据えた平和維持共同体……」 「『スローライフ大同盟』の発足を、全次元に向けて正式に宣言します!」


リリスが代表して、どこか誇らしげに声を上げた。


「え、大同盟? 難しいことはよく分からないけど……」 「みんなが仲良くカレーを食べて、笑い合えるなら、それが一番だよね」


レオンがいつもの屈託のない笑顔で答えると。 強者たちは顔を見合わせ、晴れやかな笑みを浮かべた。


「よし。じゃあ、同盟のお祝いに、ちょっとした『お菓子』を用意したよ」 「みんな、上を見ていてね!」


レオンは広場の中央に置かれた、巨大な魔石の釜を杖で軽く叩いた。


【祝祭・幸福共有:銀河規模ポップコーン・パーティー】。


次の瞬間――。


パォォォォォォンッ!! ポポンッ! パパパパパパパパッッッ!!!


天地を揺るがすような連続爆音。 一粒の乾燥したトウモロコシが、レオンの魔力によって数万倍に膨れ上がり……。


夏の入道雲のような真っ白なポップコーンの群れが、空高くへと噴き出していった。


それは魔法の風に乗り、デスバレーの空を越え……。 魔界の深淵へ、天界の浮島へ、そして新大陸の港へと。 空を白く染め上げながら、全世界、全次元へと降り注いでいったのである。


「な……なんだこれ! 暖かい……そして、死ぬほど美味い!!」


「空から……最高のお菓子が降ってくるぞ!!」


レオンが付与した『祝福』。 そのポップコーンは、食べた者の古傷を癒やし、溜まっていた精神的疲労を霧散させる。


全人類が、全魔族が、全天使が――。 今日だけは全ての仕事を放り出し、空を仰いで口を開け、白い幸せを頬張っているのだ。


「……あ、ちょっと作りすぎちゃったかな。でもまあ、足りないよりはマシだよね」


何兆個というポップコーンの山に腰掛け、レオンは満足げに一粒を口に運んだ。 塩加減も完璧。バターの香りは宇宙の果てまで届きそうなほど濃厚だ。


世界は一つになった。 レオンという一人の聖職者の、「非効率を改善したい」という極めて個人的で……。


善意に満ちた衝動によって。


「ふぅ……。ひとまず、この星の主要な問題は片付いたかな」


レオンは、ポップコーン越しに輝く太陽を見つめながら。 ふと空の向こう……月を見上げた。


「さて……次は、あの月の上に、美味しい巨大イチゴでも植えてみようかな」


「……レオン様。いい加減になさらないと、今度こそ宇宙がリフォームされてしまいますわよ」


セリアの呆れ顔に送られながら。 レオンの「お改善」の旅は、きっとこれからも続いていく。


世界がもっと便利で、もっと美味しく……。 そして誰もが笑って過ごせる「究極のスローライフ」へと到達する、その日まで。

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