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第44話:新大陸の王〜暴力の覇王、ただのパズルに完敗する〜

海中温泉で日々の疲れを癒やし、白亜の豪華客船に揺られること数日。 『バルバドス』のリゾート船団は、ついに未知なる領域「新大陸」へと接岸した。


だが、そこで待っていたのは、歓迎の花吹雪ではなかった。


「……フン。貴様らが、海を越えてきた不遜な一行か」


港の中央。石造りの闘技場を思わせる広場に、その男はいた。


身の丈は三メートルを優に超え、筋肉の塊のような身体。 新大陸を「絶対的な武力」のみで統治する覇王、ギルガメス。


彼が担いでいる戦斧は、一撃で大陸を切り裂くと言われる伝説の凶器であった。


「我が国に効率などという言葉は不要だ。世界を統べるのは、最強の力を持つこの俺のみ!」


「貴様の改善とやらが俺の斧より強いか、ここで決闘して確かめてくれるわ!!」


覇王が咆哮を上げると、周囲の石畳がクモの巣状に割れ……。 凄まじいプレッシャーが辺りを支配した。


しかし、その殺気の渦中に立つレオンの反応は。 相変わらず、どこかズレていた。


「あ、こんにちは。……うーん、その戦斧、すごく重そうだね」


「薪割りか何かに使う予定なのかな?」


「薪割りだとぉ!? これは聖域を屠る刃だ!!」


「ダメだよ、そんなことに貴重な鉱石と筋力を使うなんて」


「非効率すぎるよ。……ねえ、喧嘩はカロリーの無駄だからやめよう」


「代わりに、どっちがより『正確に物事を組み立てられるか』で勝負しない?」


「組み立てるだと? 面白い。俺の拳が、暇など与えんことを教えてやろう!」


覇王が挑発に乗った。


レオンはポケットから「ただの子供向けの遊び」……のふりをした。 神聖ミスリル製の超精密立体ジグゾーパズルを取り出した。


【闘争本能・知的昇華:アルティメット・インテリジェンス・パズル】。


パーツ数は、一万個。 それは物理的な力では決して結合せず……。 解く者の「論理的思考」に、共鳴してのみ噛み合うように設計された知育玩具だ。


「ぬ、ぬおおおおおおッ!? なんだこのパーツは!」


「俺の握力を持ってしても、一つもはまらんぞ!!」


覇王は必死にパズルにかじりつくが。 暴力と闘争に支配された彼の精神では、パーツ同士が磁石의反発のように逃げていく。


全身から蒸気を上げるほど力む覇王。 挙句の果てに「この……ねじ込んでやるッ!」と戦斧をパズルに叩きつけたが。


逆に戦斧がポッキリと折れ、パズルは無傷のまま地面に転がった。


「はい、できたよ。ちょっと噛み合わせが悪かったから、ついでに『改善』しておいたよ」


レオンが、半分居眠りをしているようなリラックスした状態で。 指先だけでさらさらと一万個のパーツを組み上げた。


完成したパズルは、幾何学的な美しさを放つ多面体となり……。 黄金の光を放って、レオンの周囲を優雅に浮遊し始めた。


「な……な……」


覇王は、折れた戦斧の柄を握りしめたまま、その場に呆然と立ち尽くした。


「暴力は……ただの逃げだった」


「複雑な真実から目を逸らし、力で塗り潰そうとする者の、未熟な甘えだったのか……」


彼は、レオンの放つ圧倒的な知性に触れ。 自分の人生がいかに非効率な積み重ねであったかを、骨の髄まで悟らされたのだ。


「導師よ。頼む、俺に『勉強』を教えてくれ!!」


「拳より重い『鉛筆』の愛し方を、俺は何も知らなかったんだッ!!」


覇王はその場で鎧を脱ぎ捨て。 感極まった表情で、レオンの足元に深く頭を下げた。


「俺も……あの『アカデミー』に、留学させてもらえるだろうか……?」


「いいよ、アレクサンド君も最近、新しい仲間を欲しがってたし」


「まずは一緒に、村の溝掃除から始めようか」


こうして、新大陸最強の暴力の権威は。 レオンの「パズル遊び」によって、一瞬にして向学心の塊へと書き換えられた。


新大陸は、これにてレオンの「文化侵略」の軍門に……。


あっけなく、下ったのであった。

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