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第39話:迷宮(ダンジョン)の再利用〜全自動アスレチック・スパへ、魔物は接客担当です〜

デスバレー近郊の深い森の奥。 そこには古代の強大な魔力が凝縮された、伝説の呪われた迷宮が存在していた。


「絶叫の深淵ダンジョン」。


一度足を踏み入れれば、二度と生きては戻れない。 そう言われるほどに、その内部は殺人的な罠と、血に飢えた魔物で満たされていた。


「フハハハ! この迷宮の最深部に眠る財宝は、俺たちのものだ!」 「一攫千金だ! 借金をすべて返してやるぜ!」


血気盛んな冒険者たちが、我先にと松明を掲げ、命懸けで暗闇へと突入していく。


だが、その数日後。 デスバレーの村に戻ってきたのは……。 矢毒で顔を真っ青にし、全身を斬り刻まれ。 「もう歩けない……」と震え上がる、冒険者たちの変わり果てた姿だった。


「うーん……せっかくこれだけ広大な地下空間があるのに」 「トゲ付きの落とし穴や毒ガスばかり配置するなんて、非効率の極致だなぁ」


レオンは、泣き叫ぶ大男の足の傷に治癒魔法をかけながら。 ポツリと、いつものように嘆いた。


「これじゃあ、中に入った人も、待ち構えている魔物も、誰も幸せになれないよね」 「完全な空間の無駄遣いだよ」


「……よし、ちょっとだけ『リフォーム』しに行こう」


「レオン様、ダンジョンは自然の驚異です!」 「リフォームするものではありませんわ!!」


セリアの絶刻を背に、レオンはスコップ一本を手に。 迷宮へと平然と足を踏み入れた。


まず、入り口で待ち構えていた、体長五メートルの凶悪なストーンゴーレム。 レオンはそれを破壊するのではなく、瞬時に背後に回り込み……。 強靭な岩の関節を「極上のマッサージ」で揉みほぐした。


「君、その岩の凹凸……ツボ押しに最適だよ」 「ちょっとここ、指の角度をこうして、相手のコリを狙ってみて」


「…………ゴゴッ!?(えっ、ここ、気持ちいい……)」


ゴーレムは一瞬で「破壊の守護者」としてのプライドを捨てた。


次に、死の毒ガスを噴射する壁の隙間。 レオンはそこに魔法のハーブを詰め込み、全自動の「アロマミスト噴出口」へと置換。


底なしの沼地は、保湿成分を一兆倍に濃縮した。 「美肌成分たっぷりの泥パック風呂」へと再定義した。


【負の遺産有効活用:ドリーム・ダンジョン・リノベーション】。


     ▽ ▽ ▽


一時間後。 ダンジョンの入り口には、可愛いピンクのエプロンを着た。 オークの受付嬢(?)が立っていた。


「いらっしゃいませぇ〜。本日はアスレチック・コースをご利用ですかぁ?」 「それとも『心身浄化・溶岩岩盤浴』ですかぁ?」


「……は、はい?」


命懸けで攻略に来たはずのSランク冒険者たちは。 あまりの光景の変わりぶりに、抜いたばかりの剣を地面に落とした。


奥へ進むと、暗闇から飛び出してきた魔物たちが。 牙を剥くのではなく……。 「お客様、お疲れのようですね! こちらのハーブティーをどうぞ、サービスです!」 と、膝をついて、最高級のおもてなしを提供してくるではないか。


さらに最深部、かつての儀式の間では――。 かつて世界を数度滅ぼしかけた大悪魔が。 タオルを頭に巻き、サウナハットを被って冒険者と一緒に「整って」いた。


「……ふぅぅー。暴力なんて、実を言うとずっと虚しいと思っていたんだ」 「あ、ああ……。俺も、まさか悪魔と一緒にサウナに入ることになるとは……」


「やっぱり、サウナ後の十度の水風呂。これこそが、真の覇者の称号だよ」


「まったくだ……」


「うん、みんな健康そうで何よりだね」 「これなら魔物たちも定職に就けるし、冒険者も健康になれる。一石三鳥だね」


レオンは、迷宮の壁にこびりついた煤をピカピカに磨き上げながら。 満足げに頷いた。


こうして、かつて恐れられた「絶叫の深淵」は。 レオンの「ちょっとしたお片付け」によって。 全世界で最も予約が取れない、超人気スパ・リゾートへと、変貌したのである。

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