第34話:天界の隠者と釣り対決〜銀河を釣る竿、神の知恵を超える〜
最近、鉄道の開通や魔界の改革で……。 レオンの周りはいつも以上に騒がしくなっていた。
「うーん……便利になるのはいいことだけど」
「たまにはのんびりした時間も必要だよね」
そう言ってレオンが向かったのは……。 世界樹の根元に広がる、透き通った「神聖池」だった。
そこへ、一人の老人が空からゆっくりと舞い降りてきた。
白髪を長く蓄え。 古びた、しかし強烈なマナを纏った杖を携えている。
「……ほう。お主が、地上で因果を歪め続けているという『改善者』か」
彼の名はゼノン。
天界の隠者にして。 神々に知恵を授けるとまで言われた、伝説の賢者である。
「あ、こんにちは。釣りでもしに来たんですか?」
「小僧……真の知恵とは、積み重ねた年月と、研ぎ澄まされた経験によってのみ得られるもの」
「道具や安易な改善に頼る者は、本質を見失う。例えば、この釣りを見よ」
ゼノンは自慢の「天界の宝具・黄金の釣り竿」を取り出した。
彼が糸を垂らすと……。 池の中から黄金に輝く神魚が、一瞬で釣り上げられた。
「これが、経験と知恵による釣法よ。貴様にこれができるか?」
「へぇ……プロですね。僕もそれ、適当に作ってやってみようかな」
レオンは足元に落ちていた「世界樹の小枝」を拾い。 そこにクロ(黒龍)の抜け毛を糸代わりに結びつけた。
「フン……ただの枝で何が……っ!?」
ゼノンの言葉が止まった。
レオンが糸を池に垂らした瞬間。
池の表面ではなく、池の背後にある「多次元空間」そのものが……。 『対象』として定義されたのだ。
レオンが「あ、重いな」と軽く竿を引き上げると……。
ド、ドガァァァァァァァン!!!!!
池の中から飛び出してきたのは、魚ではなかった。
体長数千メートル。 全身が銀河のような星々に覆われた、宇宙の守護獣。
伝説の龍『星喰い龍』が……。 鼻先を枝の先に引っ掛けて、モゾモゾと不気味に震えていた。
「……ギャ、ギャア出アアアアアアアアッ!!」
「な、なんだ、何が起きたのだぁぁ!!」
ゼノンが、その圧倒的な神威の前に尻餅をつく。
「それは神話の創世記に語られ、神々の王ですら手を出すことを禁じられた禁忌の生命体!」
「それを……ただの枝と、トカゲの毛で……!!」
「あ、これゴミ(外道)だった。ごめんね、重いから逃がすよ」
レオンがヒョイと糸を揺らすと。 宇宙の主は「キュ~ン」とマ抜けな声を上げ、次元の彼方へとリリースされていった。
「…………」
ゼノンは、手に持っていた黄金の宝具を池の底に投げ捨て……。 地面に思い切り頭を擦り付けた。
「我が師匠!! どうか、どうかこの老いぼれを一番弟子にしてください!!」
「知恵って何ですか!? 経験って美味しいんですかぁぁ!!」
こうして、天界の最高知性までもが。 レオンの「DIY釣り竿」によって、完膚なきまでに論破(?)されたのである。




