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第33話:超特急デスバレー号〜リニア魔法鉄道で大陸は庭先へ〜

魔界の経済改革がひと段落した頃。 デスバレーの検問所は、未曾有の事態に陥っていた。


「レオン様、見てください」


「村の入り口から国境を越えて……」


「隣国の荒野まで、馬車の大渋滞が続いていますわ」


セリアが、村の高台から双眼鏡で果てしない列を見つめ、溜息をついた。


第1部で王国や帝国が統合され、第2部で魔界や天界との交流が始まった結果。 デスバレーは「全次元の交差点」となってしまったのだ。


馬車で一週間かけてやってくる観光客や商人が溢れ返り……。 物流が物理的に限界を迎えていた。


「うーん、これじゃあせっかくの温泉も、着く頃にはみんな疲れ果てちゃうね」


「非効率だよ」


レオンが腕を組み、顎に手を当てる。


「やっぱり、移動時間を『改善』しなきゃ」


「……ちょっとしたトロッコを作って、村と主要都市を繋いじゃおうかな」


「レオン様、『ちょっとした』で解決できる距離ではないのですが……」


セリアの制止も虚しく、レオンは地面に杖を突き立てた。


【空間圧縮式・反重力軌道敷設:ハイパー・レオン・エクスプレス】。


レオンが地面をなぞるように歩くと……。 その足跡から、眩いばかりのミスリル合金のレールが爆速で伸びていった。


それは地形を無視し、海の上を走り、山をトンネルで貫き……。 大陸の主要都市まで、一瞬で到達した。


さらには、ゴーレム技術を応用した「ふかふかの客室付き超巨大トロッコ」が。 レオンの隣にシュンッ!と出現する。


「よし、試運転だ。シルバさん、アレクサンド君、ちょっと乗ってみて」


「は、ははぁ。レオン様が作られた乗り物なら、さぞかし優雅な……」


商人ギルド総帥シルバと、元・勇者アレクサンドが期待に胸を膨らませて乗り込んだ。


「じゃあ、発車するよ。……『急行』モードで」


次の瞬間。


グゥゥゥゥン!!


大気を置き去りにするような重低音と共に、トロッコが発進した。 いや、発進という生易しいものではなかった。


空間そのものを折り畳み、風景が光の線となって消えていく。


……3分後。


「はい、到着。ここが旧・王都の中央広場だよ。早いね」


「…………」 「…………」


扉が開いた時、そこには誇り高き商人と勇者の姿はなかった。


あまりのG(重力)のなさと、逆に風景の非現実的な速さに脳が追いつかず……。 魂が口から半分飛び出した二人が、白目を剥いて震えていた。


「レ、レオン様……。今、私は……」


「一週間かかるはずの距離を、コーヒーを一口すする間に移動したのでしょうか……?」


シルバが、震える手で懐中時計を見つめる。


「え、各駅停車だと10分くらいかかる設定にしちゃったから、不便でごめんね」


「……これ以上の速度は、もはや人類には死に至りますぅぅぅ!!」


シルバの絶叫が、新時代の幕開けを告げる汽笛となった。


こうして、大陸はレオンの「ちょっとしたトロッコ」によって。 一つの巨大な「庭」へと縮小されたのである。

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