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第32話:魔界の経済改革〜暴力の代わりにチョコレートを〜

リリスがデスバレーで「人生最高の二度寝」を終え……。 ヨレヨレのネグリジェ姿のまま、レオンの朝食の席に座っていた。


「……信じられないわ。あんなに深く、濁りのない眠りがこの世にあったなんて」


「魔界の王宮なんて、暗殺の危機と呪いの霧で……」


「枕元に魔剣を置かないと眠れないのよ」


リリスは、レオン特製の「世界樹の蜂蜜トースト」を夢中で頬張りながら……。 不眠症だった頃の恨み節をこぼす。


「そもそも魔界が不眠なのは、環境が悪すぎるからだよ」


レオンは平然と言い放つ。


「地熱は高すぎるし、空気は酸性だし、食べられるものはトゲトゲしていて苦い」


「あれじゃあ、みんなイライラして戦争するしかないよね。非効率すぎるよ」


「……わ、私だって好きでやってるわけじゃないわ! 土地が死んでるのよ!!」


「じゃあ、ちょっとだけ『土壌改善』しに行こうか」


「ついでに、住民のみんなにお土産も持っていきたいし」


レオンはいつもの軽いノリで、リリスを連れて魔界へと転移した。


     ▽ ▽ ▽


魔界。


そこは、煮え返る泥と、漆黒の岩壁……。 そして常に誰かが誰かを刺そうとしている、文字通りの地獄だった。


「野郎ども! 女王が人間を連れて帰ってきたぞ!」


「食い扶持を減らすチャンスだ、殺せ!!」


リリスの部下である魔界の猛将たちが。 巨大な戦斧を振り回して襲いかかってくる。


だが、レオンは動じない。


【広域環境再定義:スイート・ファンタジー・テラフォーミング】。


レオンが地面を杖でコツンと叩いた瞬間。


魔界を覆っていた不吉な瘴気が……。 瞬時に「ストロベリーの香り」へと置換された。


煮え返っていた泥の池は、キンキンに冷えた「炭酸飲料」へと変わり。 不気味なトゲの木々には、色とりどりの「ドーナツ」や「マカロン」が実り始めた。


「……な、なんだこの芳醇な香りは!?」


「ぐ、ぐわぁっ! 口の中に、焼きたてのバタークッキーが、意思を持って飛び込んできたぁぁ!!」


襲いかかってきた猛将たちが……。 空中を舞う「自動給餌クッキー」に顔面を直撃され、その圧倒的な甘さの前に膝を突く。


「……美味い。美味すぎるぞ、これ……」


「略奪してたった一口の腐肉を奪い合う日々に、何の意味があったのだ……?」


魔界中の悪魔たちが。 武器を捨て、地面から生えてきた「ポテトチップスの低木」を囲んで宴会を始めた。


リリスは、お菓子の山に埋もれて……。 幸せそうに白目を剥いて眠りこける部下たちを見て、呆然と呟いた。


「暴力の代わりに、糖分で支配するっていうの……?」


「こんなの……最強にして、最悪の侵略じゃない……」


こうして、魔界は一日にして「世界最大の製菓輸出拠点」へと……。 レオンの手によって、勝手にジョブチェンジさせられたのである。

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