第4話:「おばあさんは屋根へお手伝いに」
次の日も、おじいさんは朝から屋根に上り、差し茅をしておりました。
古い茅を手でかき分け、新しい茅を差し込んでいきます。
縄で締めながら、密度を上げていく作業を繰り返しておりました。
作業がすこし進んだころ、足場を上ってくるおばあさんの姿が見えました。
「どうしたんじゃ。足元は気をつけるんじゃぞ。」
「いえいえ、お昼になるので、屋根の上でおにぎりでもと思いまして。」
「この急こう配でおにぎりとは、ちょいとたいへんじゃのう。」
そう言いつつも、おじいさんはおばあさんの持ってきたおにぎりに手を伸ばしました。
「家の中がすごいですよ。茅くずだらけで。でも、ススキの匂いもいいものですね。」
おばあさんは、屋根の上から遠くを見つめながら話しました。
「どうですか、雨漏りは直りますか?」
「もうすぐじゃ。雨が降っても大丈夫になる。」
そう言うと、おじいさんは作業に戻りました。
やがて、おじいさんの影が長く伸びるころ、
「ふぅ~、やっと終わった!おばあさんや、終わったぞ!」
少し急いで屋根から足場へ移ろうとしたそのとき、足を踏み外しました。
“ドスッ”
おじいさんは、足場とともに崩れ落ちてしまいました。
「おじいさん!どうされたんですか?」おばあさんは台所から飛び出てきました。
「ちょっと焦ってしまってのう……痛っ!」
おじいさんの腹には、足場に使っていた杉の木の一部が刺さっておりました。
「おじいさん、少しお待ちください。すぐ準備をしてきます。」
そう言うと、おばあさんは家の中の棚を探し始めました。
――えっ、何の準備?
「見つけた!おじいさん、横になってくださいな。」
おじいさんは言われるまま、仰向けになりました。
「それでは、摘出手術を開始いたします。」
「お酒。」
おばあさんは一言そう言い、傷口に酒をかけ、おじいさんにも酒を飲ませました。
「いきなり、何するんじゃ!」
「麻酔ですよ!早く飲まないと、これから痛くなりますから、早く!」
そのように言われ、おじいさんは必死に酒を飲み干しました。
「和針。絹糸。」
そう言いながら、おばあさんは傷口を寄せ、荒く数針縫い合わせていきます。
――全然痛いんじゃが!
おじいさんは涙を浮かべながら、必死に歯を食いしばりました。
「あとは、薬草を塗り込んだ木綿で覆えば……できましたよ!」
おばあさんはおじいさんに肩を貸し、寝床まで連れていきました。
「すまなかったのう。最後の最後に怪我しちまって……」
「いいんですよ。おかげで屋根が直ったじゃないですか。私が、おじいさんは治しますよ。」と、おばあさんは微笑みかけました。
その傷はやがて塞がりましたが、腹にはうっすらと跡が残りました。
触れると、ほんのりと温かく感じられる傷跡でございました。




