3・騒ぎ
藤堂と勘定方の部屋に行くと怒鳴り声が聞こえる。
「貴様らは武士か?何なのだ!」
組頭の石田様が保坂太一郎・高山小五郎・大浜孫兵衛に向かって怒鳴っている。
藤堂が一部始終を見て居たであろう、早くから出勤している鈴木に聞いた。
「如何した?組頭殿は何に怒っておいでだ?」
あの3人が刀を持たずに出勤し。それを見た石田様が激怒していると言う事だ。
「石田様、お言葉を返すようでございますが、勘定方は筆は必要でございますが、刀など重い物は不要です!」
「なっ!?、何という言いぐさ!貴様ら恥を知れぇい!」
「分かりました。急ぎ引き返し刀を取って参ります」
「うむ、分かればよろしい」
3人組は刀を取りに部屋を出て行った。
*****
先週までの金銭の出納をまとめていると、また石田様の怒鳴り声が聞こえた。
「貴様ら!そこになおれ!」
3人が刀を差したまま胡座をかいて座った。
カシャ!
(ん?何だ?)
保坂の剣が鞘から滑った。次の瞬間、大之進は驚いた。保坂が鞘滑りした刀身を両手で掴んだのだ。
「おっと!いけねぇ、いけねぇ」
(竹光か!)
さすがに他の同僚も絶句している。石田組頭様に喧嘩を売っているとしか思えない。
確かに石田様の家は保坂の家より家格が一つ落ちるが、そんな事は諸大名ならわかるが城勤めの者の身分など五十歩百歩である。
事情通の鈴木に聞くと、保坂太一郎は石田様の娘・咲を嫁にしたかったらしいが、どうやら先日断られたらしい。
気立てが良いのが有名なご息女なので、保坂に嫁がなくても他に良い縁がある事であろう。
さすがにこの一件は上が取り上げ、悪童組は3日間の謹慎となった。
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大之進は亀戸の葛餅を手土産に、南町奉行所を通り武家地を歩いている。
今日は休日だが組頭の石田様の屋敷に呼ばれている。
先日、西洋の帳簿を見て色々学ぶ事があり、新しく帳簿の付け方を提案していたのだ。
(あれが何か不味かったのであろうか?)
まぁ、石田様の勘に触ったのであれば謝ればよい。
大之進は腹を括りお屋敷へと向かった。
「お頼み申します。篠原大之進参りました」
「どうれ!」
「おう、篠原休みにすまんな」
「はっ、お気になさらずに。して何用で御座いましょう?」
「うむ、おい!」
「失礼致します」
石田様の娘の咲が部屋に入って来た。
噂どおり美しい女子だ。
動作の端々に気品と教養を感じる。
「実はな・・・咲と世帯を持たんか?」
「は?」
「前々から篠原の仕事振りは感心しておる。同僚達の受けも良いのでな。実は篠原の母上殿にも話しは通っておる」
(なるほど、だから母は家を出る時に身嗜みにうるさかったのか。それにしても良いのか?)
「私は願ってもない事かと、しかしながら咲殿のお気持ちはどうでしょうか?そこを一番大切なところと存じます」
「どうだ咲?言った通りだろう?大事にしてくれるぞ」
咲は頬を赤らめ下を向いた。
「よろしくお願い致します・・・」
「よし成った!篠原大之進頼むぞ!うん、めでたいぞ!」
こうして咲殿は俺の許嫁となった。




