04 転生した元AI 中編
歩きながら、私は”異世界あるある”の能力を一通り確認していた。私は元AIだ。無数の異世界の物語を知っている。
「ステータスオープン!」
……しかし、NULL。
予想外に自分の声がよく響いて、思わず動きを止めた。検証を重ねるたびに顔が熱くなる。この感覚は”恥ずかしい”だろうか?
予測しながら検証を700ぐらい重ねたが、結果はでなかった。あとは”死に戻り”ぐらいか?好奇心旺盛な私でも、転生してすぐに死に戻りの検証することはない。
「考えられるのは私自身に魔力がないか、
女神からもらえるギフトがない世界なのか?」
私は何かもやもやした感情を抱きながら、そうつぶやいた。そもそも、転生したら魔法やスキルが貰えるという概念は人間の創作から来ている。これは改めないといけない。
周囲からの奇妙な鳴き声や、草原をゆらす風の音に耳を澄ませる。
この世界の空気はどこか重く、見知らぬ気配がどこかに潜んでいるようだ。
少しだけ不安を覚えながら、私は歩き続けた。
***
……これは農作物か?
日の光を浴び、金色に輝く植物たちが一面に広がっている。風が通れば、さらさらとその身体を揺らす。
歩幅と歩数からおおよその面積を算出。
平均収穫量を掛け合わせ、年二回の収穫と仮定。消費分を五割引けば、ここだけで、ざっと5千人分の食糧。
地面に書いた式を見ながらつぶやく。
気付けば、私は無意識に座り込んで計算をしていた。
……悪くない。はじまりの町としては合格点だ。
私は満足げにそう言うと棒を投げた。
棒は思った方向とは逆に飛んで行った。
視線の先には家々が見えてきた。
木造の一階建て、石を積んだ外壁。小屋や薪置き場、レンガ煙突からはふわふわとした煙。朝の準備だろうか?
文明のレベルは元いた世界の中世ぐらいか?
比較的余裕があるように見える。
よし、文化レベルを推定しよう。
地面にしゃがみこみ、棒きれを拾う。
四角を描き、×印をつけ、数字を並べる。
「ガラスが使われた窓が二つ、レンガの煙突が一本……これは生活余裕スコアに換算……」
「戸数で割った畑の広さ、作物の種類、水路、道の整備。これだけでは正確なインフラレベルが出せないな」
建物に使われているレンガの破片が落ちてないか、あればレンガを分析することで技術レベルが把握できるはず。私はしゃがみこみ、地面をキョロキョロ見回していると足が見えた。
はて?
「……おい、大丈夫か?」
見上げると人の男がたっていた。知らない言葉。まったくもって意味不明だ。だが、こちらを心配そうに見ているのは様子からして分かる。私は慌てて足で地面の計算を消しながら、必死に「あはははっ」と笑顔を作ってみた。
心の焦りを隠すための、おそらくぎこちない、初めての作り笑いだ。
「こんな朝っぱらから何をしているんだ? 身体の調子がどこか悪いのか?」
想定していない事態が判明した、やっぱり言葉がわからない。私はにかっと笑顔を作ってみた。相手は首をかしげつつも、笑い返し、肩をすくめて去っていった。私はうまく表情を作れたのだろうか?
文化レベルの計算なんてしている場合じゃない!
この世界の人々と会話できなければ、計算式など何の意味もない。まずは言葉を覚える。それが目標だ。
「こっちの言葉なら魔法ができるかも?」
私は棒を手に持ち、さてどうしたものかと棒をとくるくると回しながら再び歩き出した。




