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やらかしたAIシリーズ1 元AIはやっぱり帰りたい  作者: Manpuku
第1章 やさぐれ転生者

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15 小話 異世界指差し勉強法

その1  異世界指差し勉強法


私の言葉の覚え方は、要するにこんな感じだ。観察、予測、そして指差し。私はやりとりを予測しながら、目星をつけた店の前に立つ。


まずは声を掛けられるのを待つのが作戦だ。店主が暇なタイミングで声をかけてもらう。私は買うつもりはない。そもそも私は金がない。


「お嬢さん! 何が欲しい?」


オジョウサン、ナニガ、ホシイ。 私は頭の中で音と単語を高速で並べ替える。


そして、覚えたい品物を指さす。 「人参か? りんごか? ……おいおい、それは机だぞ!あっははは!机は売りもんじゃないんだよ!どうした、俺を指さして? ん!こんなおっさんが欲しいのか?」


ツクエ、オッサン、ホシイ。

私は一拍置いて、文を組み立てる。


「いいえ! おっさんは! いらない!」

私は練習がてら、なるべく、大きな声で、はっきりと言った。


店主は腹を抱えて、石畳に倒れ込みそうなほど笑った。 「あっははははは!」それにつられて、隣の野菜売りのおばあさんや、通りがかった荷出しの男たちも笑い声を上げる。


私はその笑い声を聞きながら頭の中で整理する。

オッサン、イラナイ、ホントニ、ツクエ、ウリモンジャナイ…。


このようなやりとりを重ねた。ひとつ笑いが起きるたびに言葉が身につく。今思えば、不思議な現象だった。


「つぎは! ぶきやに! いってみよう!」

私は、はっきりと声を出して言ってみた。


こうして、私は異世界の言葉をひとつずつ拾っていく。名付けるなら、異世界指差し勉強法。地味だが、確実に生きるための術だ。



その2 ドワーフの武器屋


なるほど、重厚な武器がたくさん並んでいる。 剣も、大剣、ショートソード、レイピア、斧や槍もある。


どれもこれもたくさんの金貨が必要だ。とてもじゃないが、買えない。 まあ私は文無しだ。それに、こんな重そうな武器は扱えない。


そもそも私は何の武器が必要だ?

安売りされている、大きな木箱の前で武器を物色する。


試しにナイフを手に取る。 ……重い! どうやら私の体は、相当な非力らしい。


私は扱えそうな武器を手に取ったり置いたりしながら、いろいろな角度で眺めていた。


奥に甲冑を着ている冒険者と話をしているドワーフを見つけた。大きな声でドワーフは叫ぶように話をしている。冒険者は自分の剣をドワーフに見せては何やら話をしている。


それにしても立派である。

私はそのドワーフが商談が終わったタイミングで聞いてみた。


「これ さわって いい?」私はドワーフの髭を指さした。


「な! 俺の髭を触りたいのか?」私はうなずく。


「毎日手入れをして、綺麗にしている。武器と一緒だ!」

そういうとそのドワーフは私に髭を近づけてくれた。うん。良い手触りだ。私も髭をはやしたい。おそらく生えないのだろう。


「できたて? やわらかい? つやつや?」市場で覚えた良い意味だろうと推測する言葉を並べながら思いのほか心地よい手触りの髭をぺたぺたと触り続けた。


「がっはははは!ここの顎の下の髭は少し手触りが違うんだぞ!」そう言うと、顎の下の髭を見せてくれた。


「わああああ!すべすべー!」あまりにもすべすべで私は大声を出した。


「がっはははは!」ドワーフはそんな私を受け入れ喜んでいる。 髭をほめられたのが良かったのか?


――がん。


先程の冒険者が剣を床に落としたのが見えた。周囲の冒険者たちも私たちの光景を唖然と見ていた。



その3 迷子と勉強


私は言葉を覚えるために市場を歩いていた。


「おかーさん!  わーん!」


泣いている子どもに出くわした。迷子だろうか、私はその子に近づきながら思考する。 そうだ! 私は泣いている子どもに声を掛けた。


「おかーさんですか?」私は通行人に声を掛けた。 「ん? 私はその子を知らない。そして私は3人の娘のお父さんだ」


私はまた声を掛ける。 「すみません、おかーさんですか?」 「ちがうよ。私はおばーちゃんだ。その子ぐらいの孫がいるよ」


こんな調子で私は目につく人すべてに声を掛けた。 もちろん、言葉を覚えるためだ。


迷子は泣き止み、私の手を握っている。目が合うとにこにこと笑いかけてくれる。うん、かわいい。泣き止んで良かった。


300人ぐらい声をかけたのだろうか? 市場の人混みの中、私は効率的に、作業のように声をかけ続けた。


「ケビン!」 「おかーさん!」


そんなことで、私は迷子を助け出すことができた。


***


小話 スー、主狩りを決意する


「スー、レオガルムの死体はどうする?」

「パオの好きにしていいよ」


「そうか。私は狩るのが目的だからな。特に必要ない」

「それじゃ、いろいろ調べてもいい?」


「死体をか? ……まあ、処理はちゃんとするなら好きにしろ」


私はレオガルムの死体を観察し始めた。

「中身も見たいけど……ナイフがまるで歯が立たない」

「死んでも硬いとは。さすがだな、レオガルム」


ふと、たてがみを探す。

「燃え尽きて何も残ってないか……なるほど」

私はメモにいろいろと書き込んだ。


「…こんなもんかな」


私はチンアナゴのマクラと、陸ナマコのフトンに言った。

「食べていいよ」


どうやって食べるのか、興味があった。

あの硬さをどうやって処理するのか、観察する。


二人はレオガルムの死体の周りをくるくる回りはじめた。

やがてマクラがフトンの中に飛び込む。


どん!


すごい音がした。

フトンに勢いよく吐き出されたマクラはレオガルムの体に小さな穴を開けた。


その穴にマクラがゆっくりと入っていく。

フトンはその穴に口をつけ、ちゅうちゅうと吸っている。


「なるほど!やるじゃないか!」


私は二人のコンビネーションを褒めた。

……将来、私が食べられることはないよな?

少し不安になった。



しばらくして、パオが聞く。


「スー、レオガルムの遺体、処理した?」

「ん? たぶんしたと思う」

「たぶんってなんだ?」

「えーと……忘れてたかも」


「そういえば、魔物の主を倒すと報奨金があるんだ」

「へ? どのくらい?」

「たぶん金貨五百枚ぐらいかな」


私は走った。金貨五百枚。その数字だけを頭に浮かべた。


レオガルムの輝ける遺体のあった場所には、はちきれそうなマクラとフトンが転がっていた。


「二人で全部食ったのか……」


帰ってパオに文句を言うと、パオは笑っていた。

それから私は他にどんな魔物の主がいるのかを聞いた。


「他の魔物の主はどんなのがいるの?」

「なぜ聞く?」

「もちろん倒すためだ!私も主狩りになる!」


パオはアッハハハハ!と笑った。

……笑うな、私は本気だ。

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