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6話 帰還③



 「せ、精霊だと……! それも人型!?」



 驚きのあまり全員が固まっている。

 最初に回復したのは、メリック教師だった。


「馬鹿な、人型の精霊など聞いたこともない。そ、それに言葉を話している? そんな精霊がいるわけがない!」


「現にいまこうしているじゃないですか」


 どうやらメリックはフィオーネのことを信じられないようだ。


 当のフィオーネはお披露目にもう飽きたのか、俺の後ろに浮いて首回りを抱きしめている。

 どうやらこの体勢がお気に入りのようだ。


『~♪』


 彼女は鼻歌まで歌っている。

 

「そんなものいるはずがない。貴様、どこぞの人間に魔法でもかけてそれを精霊と偽っているのではないか?」


「そんなことできませんよ……」


「そ、そうだ。精霊に見せかけているだけだ。宙に浮かせて、少しばかり光を出せば似たようなことはできる」


「フィオーネ。腕だけ霊体化してみてくれ」


『? うん』


 俺の首を抱きしめていたフィオーネの腕がキラキラと魔力の粒子の光が放たれながら消え去る。


「これも魔法でどうにかなるのですか?」


「ぐ、ぐぬ……」


「というか、仮にフィオーネが魔法で姿を偽っただけの人間だとして、俺が魔法を使えているならそれはそれで問題ないと思うのですが」


「あー、まあそりゃそうだな」


 俺の言葉を受けて、ローランドが肩を持つ。


「魔法を使えるってことは精霊と契約してるってことだから。つまりはどのみちアルは精霊と契約してるってことでいいんじゃないですかね? メリック先生が言った条件は満たしてますよ」


「き、貴様らが魔法を使っている可能性もあるだろうが! そこの落ちこぼれを哀れに思い、ただの人間の女を精霊に見せかけているのだ。そうに違いない!」


「俺にそんな魔法は使えませんよ」

「私も。というか私の魔法は姿を消すとか宙に浮かせるとかできない」


『ねえマスター』


「なに?」


『あの人なんで私を精霊だって信じないの?』


「それはたぶん、君が人の形をしているからかな」


 俺が精霊と契約できない落ちこぼれだという認識を改められないという可能性もある。

 

 それ以外の理由を考えるならやっぱりフィオーネが人型であることが一番の理由だろう。


「精霊っていうのは基本的に、小さい光の粒か、動物の形態をしているんだ」


 下級精霊は霊体でできた光の粒。

 中級精霊は小動物で上級精霊・特級精霊はある程度大きい動物の姿をしている。


 人型の精霊はこれまで確認されていない。

 少なくとも俺の周りには見たことないし、文献をあさってもそのような精霊がいたことなんて今まで記録はなかった。

 もちろん、記録にないだけでそういう精霊がいたことは否定しないが。

 

「それに、だいたいの精霊は人の言葉を話せないんだ」


『どうして話せないの?』


「動物の形をしているから人の発声能力がないとも言われているし、そもそも人の言語を覚えるだけの知能がないとも言われているね」


『ふうん? でも契約はできるのよね? おかしな話』


「それはそうだな……。まあ詳しくはわかってないからなんとも言えないな」


 ここで考えても結論は出ないと思う。


『でもわかったことあるわ。つまり私は特別なのね?』


「そうだよ。なんといっても神級精霊だからな」


『うふふ、そうなの!』


「し、神級?」


 エリザが俺の言葉に反応する。


「神級って、あの、特級より上といわれている?」


「たしか歴史上に3体しか例のない精霊って言われているな」


「は、ありえない! そんなはずがない! こんな落ちこぼれに、神級精霊など! やはりほらに決まっている!」


 メリックは取り乱しながらもそう告げている。


「とは言っても、フィオーネ自身がそう言っているんで」


『うん。私、神級精霊だよ?』


 ほら!

 本人がそう言ってるじゃないか!

 なら間違いない!


 まあさすがにそんな理屈で押し通せるわけないわな。



「フィオーネは自分が神級精霊だってどうやって知ったんだ?」


『わかんない。とりあえずなんか知ってた』


「嘘だろ。情報があやふやすぎる……」


 ほんとに神級精霊なのか?

 俺も疑いもせずに信じていたが、よく考えると彼女が神級精霊なのは彼女の自称にすぎない。


 いや。あの魔法の威力を考えれば確かに神級であることは間違いないか?

 契約する精霊の級が高いほど、使う魔法の威力は大きくなる。

 特級精霊の契約者の魔法を見たことはあるが、あそこまでの破壊力はなかった。

 それを上回るのだから、能力的には神級精霊と言ってもいいはず。


「精霊のランクを測ることってできるのか?」


 俺はローランドにそう尋ねる。


「ん? まあそういう魔法もあるらしいぞ。まあ学園に行けば教師が誰かしら使えるだろ」


「なら彼女が神級精霊であることはそこで確かめればいいな」


 いまここで明らかにする方法もない。

 学園で確かめればいい話だ。


 彼女の正体は、俺もけっこう気になっているし。


「メリック先生。それでいいですか?」


「……ふん。まだそこの自称精霊が本当にそうかは確定したわけではない。だが、そこまで言うならば仕方ない。判断は保留にしてやる」



 神級がどうかは疑いの余地があるとしても、精霊であることはそんなに疑うようなことだろうか?


 これまでの常識から逃れることはできないのだろう。

 


 授業も終わったことだし、俺たちのクラスは学園に戻ることになった。 

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