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26話 服とパンケーキ


 店員に注意された後、フィオーネには霊体化してもらった。

 俺は店で試着をした二人を見ている。


「じゃじゃーん。どう? どう? 可愛い?」


「可愛いよ」


「えへへ。可愛いかー。可愛いかー!」


 エリザは赤い髪に合わせた赤い服、クーデリアは銀色の髪や白い肌と対照的な黒い服を着ている。



「アルバート。私は?」


「クーデリアも可愛い」


「そう……」


 クーデリアは頬を少しだけ赤く染めた後。


「嬉しい」


 と小さくつぶやいた。


 元気なエリザにクールなクーデリア。

 喜び方まで対照的だなと思った。


「ここは俺がもつよ。そのまま着て帰る?」


「もっちろん! 可愛い私をたくさん見てもいいよ!」


「私も着ていく。……今日はずっと可愛いって思われたい」



 可愛いと言われたことが二人ともよほどうれしかったようだ。


 でも、二人ならもっと言われ慣れていると思ったけどな。

 

 エリザもクーデリアもタイプは違うけど美少女だ。

 彼女たちの容姿を褒める男はたくさんいると思うけど。

 特にクーデリアはファンクラブなんてものもあるくらいだし。



「さっきまで着ていた服はどうしようか」


「それが聞いてよアル。魔法学園の女子限定で自分の部屋まで服を送ってくれるんだって。しかも寮生ならタダ!」


「ここは学園の女子がよく来るから、そういうことを始めたみたい。学園の生徒なら住まいは寮で、場所もわかってるから」


 学園生というお得意様へのサービスもあるらしい。 

 基本、そういうのは金がかかる。無料というのは驚きだ。


 俺は店員に二人の服の代金を払い、そして二人は先ほどまで着ていた服を送ってもらい、店を出た。



「次はどうする? ローランドのものを買いに行く?」


「そのまえにご飯食べよう? ここらへんに美味しいパンケーキの店があるの」


「パンケーキか。クーデリアはそれでいいかな?」


「いいよ。パンケーキ……初めて食べる」


「えっ!? クーデリアさん食べたことないの!?」


「うん。そういうのは縁がなかった」


「甘いの嫌い? なら私は別に無理に行かなくてもいいよ」


「嫌いというわけじゃない。ただ食べる機会がなかっただけ」


「ええ? 女子が甘いもの食べる機会ないとかそんなことある? なくても無理矢理に理由付けてケーキやお菓子を食べに行くのが女子じゃん? この世の全ての女の子がやってることじゃん?」


「わ、私は女子じゃないということ?」


「いや女子だろ。エリザが大袈裟なだけで」


 主語をでかくするな。



「これが大袈裟じゃないんだよなー。女の子の甘いものへの欲求を舐めるなよ? なんなら食べに行き過ぎるせいで体重が増えて後悔するのがいつものパターンだからね」


「いつもの、というほど食べないし。私は体重もあまり増えないからわからない」


「た、体重が増えない……? どういう意味だ……? 何かの暗号か……?」


「そのままの意味だけど。私、体重があまり増えないの。食べる量が少ないからかもしれないけど」


「しょ、小食というものなんだね。ふ、ふーん。へー。私もまー、いうて小食だけどね。普段はぜんぜん食べないけどね? 食べるのは甘いものくらいだけどね。あれは別腹なだけで」


「誰に言い訳してるんだ。そしてその言い訳は大した言い訳になってないぞ」


 普段のご飯を食べないで甘いものを多く食べるって絶対健康によくないからな。

 というか甘い物の方がカロリー多いから余計に太ってしまうだけでは?


 と思ったけど、口にはしないでおいた方がいいのはわかってるから言わないでおく。


「ま、でも楽しみにしておいてよ。甘いものを興味ないとか、体重が増えないとか、余裕ぶっていられるのも今日までだから」


「そう。それは楽しみ」


 クーデリアはニコリとほほ笑んだ。

 



 目当ての店に入り、パンケーキとコーヒーを注文。

 クーデリアだけはコーヒーではなく紅茶を頼んでいた。


「確かにこれは美味しいな」


 届けられたパンケーキを食べて、思わずつぶやく。


「でしょー。ふわふわでとっても美味しいー! クーデリアさんはどう?」


 クーデリアの方を見ると、彼女は口を抑えて目を丸くしていた。

 

「こんなに柔らかいものがあるのね。とても美味しいわ」


「そうだよね。そうだよね。美味しいでしょ。甘いもの好きになったでしょ」


「ええ。これなら何度も食べたくなる気持ちもわかるわ」


「だよね。私もね―ここ初めて来た時に同じ感想抱いちゃってね。なんども通ってるんだ。でもね、ここ以外にも美味しい甘い食べ物がこの街にはたくさんあるんだよ」


「ここと同じくらい美味しいの?」


「うん。パンケーキじゃないけど、同じくらい美味しい店が何個もあるよ」


「それは……ぜひ、知りたいわ」


「ふっふっふ。よくぞ言った。ならば私の知る全てを教えてあげる。私がクーデリアさんを一流の女子にしてあげよう」


「一流の女子って甘い食べ物の店を多く知っていることじゃないだろ。そもそも一流の女子ってなんだ」

 

「一流の女子っていうのはね、女子の最先端をいく女子ってことなんだよ」


「最先端ってなんなのだろう。服のセンスがいいとか?」


「ちっちっち。そんな程度じゃないさ。女子が欲しがる三つ、服と甘い物とダイエットの全てに深い造形がある人のことを言うのさ」


「甘い物とダイエットが同時にあるのって矛盾してないか?」


「甘い物たくさん食べて、そしてダイエットするの。なにも矛盾してない」


「でもそれ甘い物食べた分余計に頑張らないといけないと思うけど」


「だから一流になることは難しいの。だから一流は皆に尊敬されるの」


「女子って大変な世界なのね」



 ここまでエリザの言葉を聞いていたクーデリアは、素直にそう感心していた。



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