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12話 登校



 翌日。

 学校へと登校した俺の元にはクラスメイトたちが集まっていた。



「アルバートの精霊が神級ってほんと?」

「人型の精霊だよな。見てみたい!」

「すっごい美人なんだよな」

「どんな魔法使うの?」

「契約する時どうだった?」

「昨日下層から帰って来たんだよな。それも神級の魔法?」

「サインしてくれ! 神級の魔法使いのサインだって皆に自慢したい!」




 教室に姿を見せるやいなやクラスメイトたちに囲まれて質問攻めにあう。

 まるで昨日の職員室での出来事が再開したようだった。


「ちょっと! アルが困ってるでしょ!」


 クラスメイトに囲まれて動けなくいると、エリザが来て助けてくれた。



「一度に皆で来ない! ほら散った散った!」


「なんだよ。話聞くくらいいいだろー」


「そういうのは一人ずつにしなさい!」


「サインは?」


 まあ、別にサインを書くくらい大したことではないけど。


「でも俺自分のサインなんて持ってないよ」


「色紙に名前書くだけでいいからさ」


「それならいいよ」


 とりあえず渡された色紙に名前を書いて渡した。


「これでいいの?」


「オーケーだ。ありがとう! 大切にするぜ!」


「……さっき自慢するって言ってたような」


「大切に自慢するぜ!」


「そっか。それはなにより……」


 部屋に飾ったままでいるのでも、自慢して見せびらかすのも、書いた側として大して変わらないか。


「ほら、そろそろホームルーム始まるから。さっさと席戻りなさい」


 エリザの言葉に促されてクラスメイトたちは各々の席に戻っていく。


「ふん! なによ。いつもはアルのこと気になんてしないくせに、神級精霊と契約したってわかった瞬間あんなに囲んでさ! 調子いいんだから!」


「百年ぶりに現れた神級精霊と契約した人がクラスメイトに出たんだから、話聞きたがる気持ちはわかるよ」


「アルはいいの? みんな手のひら返してさ。なんかちょっとモヤモヤしないの?」


「俺は別に。なんなら少しうれしいんだ。なんか、クラスの人に認められたって感じがして」


 今まで、クラスメイトに囲まれるなんてことはなかった。

 無視されていたりいじめられていたわけではない。


 話しかければ答えてくれていたし、雑談もする。

 それでもエリザやローランド以外には向こうから積極的に話しかけてくることもなかったと思う。

 どこか壁があることを感じていた。

 

 それに不満がなかったといえば嘘になる。

 だからいま、彼らから話しかけてくれるのは嬉しくもあった。

 

 

「アルがいいなら別にいいけど」


 うーん、とエリザは少しうつむき。


「でもやっぱりなんか悔しい! 納得いかない!」


「何に納得いかないって?」


 二人で会話をしていると、ローランドが登校してきた。


 ホームルーム開始直前。

 遅刻ギリギリの登校である。


「おはよう。ローランド。今日は遅刻しなかったんだね」


「まるで俺がいつも遅刻しているみたいな言い方はやめてもらおうか」


「でも飲みまくった次の日はいつも遅刻してるじゃん」


 昨日はローランド、エリザ、クーデリアの3人と酒を飲んだが、中でもエリザとローランドはかなり飲んでいた。

 はっきり言って泥酔だった。


 クーデリアがエリザを学園の女子寮へと連れ帰り、俺がローランドを男子寮へと連れ帰った。


 エリザは酔いやすい反面酒も抜けやすいため、翌日学校に遅刻するなんてことはこれまでなかったが、ローランドは飲み会の翌日は頻繁に遅刻していた。


「なあに。俺だって成長するんだぜ。いつまでも二日酔いに苦しむ俺だと思わないでほしいな」


「なら歩けなくなるまで飲むことがないように成長してほしかったな」


「ふっ、それは無理だ。俺は飲む時は飲みまくると決めてるんでな」


「もう酔いを醒ます魔法を習得してほしいよ……」


 はあ、とため息が漏れる。


「仮に習得しても当のローランドが真っ先につぶれるから。魔法で酔いを醒ますのは無理ね」


「ままならないなぁ」


「なるほど。酒を飲んだら魔法は使えず、しかし飲まないなら魔法は必要ない。これがパラドックスってやつか。魔法って奥深いな……」


「潰れるまで飲まなきゃいいだけなのに何を語っているのか」


「お、エリザ。偉そうに言ってるけどお前は人のこと言えないぞ。昨日はクーデリア様に担がれて帰ったのは俺知ってるからな」


「そ、それは仕方ないじゃない……。昨日はアルのお祝いだったし。嬉しくてつい」


「あはは。そう言ってくれて嬉しいよ。ありがとう」


「確かに。昨日は俺も嬉しくてつい飲みすぎたところはあるからな」


「あんたはいつもあれくらい飲んでるでしょ!」


「酒を飲んでりゃいつも嬉しいんだよ」




 キーンコーンカーンコーン。


 そこまで話したところで、鐘がなってホームルームが始まった。



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