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慣れ
「へ、へい、あの、むこうの里で、オチョウちゃんっていうこどもさんと」
「ああ、オトイだな。ここにゆけといわれたか?」
「あの、つかっていただけますかい?なんでもやるンで、一晩とめてほしいんですが・・・」
竹ぼうきを持つ男はよくみると目をとじたままヒコイチを『見て』いる。
「ん?ああ、おれの目玉は病気で濁っていてものがみえぬのだ。あけておくと陽がまぶしくてかなわんので、ふだんはつむったままだ」
「ああ・・・。でも、よくそうじができるもんで」
男の足元には枯葉がかきあつめられ、あたりに残された落ち葉はない。
まあ慣れよ、と男はわらった。
口からのぞいた歯が、なんだかとがっている。赤味がかったながい髪を後ろで女のようにまるくゆいあげ、櫛までさしている。だが、からだは大きく筋張り、目鼻立ちのきつい顔のあごには髭もある。