8/25
道をたどり
親子とわかれて、田んぼをすぎ、そこにながれる小川沿いにゆるい坂をのぼってゆく。
集落の家のつくりや、オチョウの母親がきていた着物からゆくと、この集落はなかなかいい暮らしをしているようだ。どれも、それほど古くもなく手入れがされ、田んぼのアゼ道まで無駄な草は生えていない。
こりゃ、寺のほうもいいんじゃねえか
旅をしていると、坊主もいない荒れた寺がよくあり、屋根がのこっていれば勝手にあがって寝ることもあるが、なかには化け物がすみついている噂があったり、賊が住処としているところもあって、まちがってもぐりこんだヒコイチは、なんどか冷や汗をかいて逃げ出したことがある。
だが、この集落の者たちが大事にしている寺ならば、きっときれいでしっかりした寺だろう。
たどっていた道の両側が木々でおおわれだし、急に暗くなる。
みあげた木の枝には、もうあまり葉はついていない。
それなのに、下の道に枯葉が積もっていないことに気づいた。
「旅のお方か」
とつぜん声がして顔をあげると、すぐむこうで竹ぼうきをもった大きな男が、手をとめてヒコイチをみていた。