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横取りか
「 それは わしらのものだ 」
こどもの澄んだ声にはいらだちがあり、ここからみても黒ではないその目はヒコイチをとおりぬけ、むこうにいるゲンを見ていた。
「 かえせ 」
こどもがはっきりと命じたのに、ゆっくりとゲンがふりかえり、こまったような笑みをうかべた。
「あのな、ここにあるモンは、おまえたちには渡せぬと知っておろう?」
「 先に『つけた』はこちら 」
「だが、『どけた』だろう」
「 おのれ よこどりするか 」
「とるんじゃねえよ。かえすんだ」
「 坊主は留守にしておろう 」
「だからどうした。そこから先には寄れぬだろう? ―― いなくとも、みておるぞ」
「 くっ 」
こどもとおもえぬような怒りをたたえた顔をゆがませると、からだがいきなり小さくなってゆき、あっというまに見えぬほどになってしまった。
ヒコイチはあわててこどもがいたところまでかけよって、なにか残ってないかと、かがんでみたがなにもない。




